- Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105056087
作品紹介・あらすじ
至高のチェス小説、究極の視点人物。精緻で奇想的なナボコフ世界へ。自ら愛好するチェスへの情熱と構成美を詰め込み、不死鳥のように甦った偉大なロシア文学と賞賛された傑作長篇「ルージン・ディフェンス」。謎に満ちた視点の語りが驚きをもたらす、ハードボイルドな味わいの中篇「密偵」。1930年代、ナボコフ30代はじめに発表された革新的な傑作2篇を、初のロシア語原典訳で収録。
感想・レビュー・書評
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内気な少年ルージンがチェスを覚えて登り詰めていく前半がそりゃ面白く、特に叔母さんにチェスを教えてもらうシーンが素晴らしい。ナボコフのフェティシズムさえ感じ取れるようだ。それだけに後半がヒシヒシと迫ってくる。チェスの様式に則っているのだろう詰め方が、情け容赦なくも見事。
装幀ステキ。詳細をみるコメント1件をすべて表示-
workmaさんアヴォガドさんの感想を読んで、チェスに詳しくないのですがおもしろそうなので読んでみたくなりましたアヴォガドさんの感想を読んで、チェスに詳しくないのですがおもしろそうなので読んでみたくなりました2022/03/12
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ナボコフ・コレクションの1冊。
チェスというゲームのことは正直、よく解らないのだが、主人公の少年がチェスに出会い、のめり込んで行く様子がスリリングで面白い。
暫く積んでいるうちに続刊も出てしまったので、早めに読まねば……。 -
ナボコフコレクションの第二巻となる本書はチェスの名人の話と、
死んでる男が視点人物となる不思議な話の二篇が載っている。
二つはどちらも特別な企みを持って作られており
才気走るナボコフの筆力の高さに唸らされてしまう。
正直、僕には後半の密偵はキツネにつままれたようになって
よくわからなかったけれど(ロシア事情に通じると見えるものがあるだろう)
ルージーン・ディフェンスには驚かされた。
憂鬱なトーンで幼少期から一生を追っていくお話かと思っていたら
作品の構成そのものがチェスの展開をなぞることになっており
チェスの名人の人生がチェスの中に埋め込まれていることが暗示されている。
クライマックスのあり得ないようで、
かつフォトジェニックな終局図には溜息が出ました。
もちろんその点で犠牲にされたものも、ままあるもののの
書き切った時のナボコフのドヤ顔は想像に難くなく、
密偵についても、また別の試みに果敢に飛びかかっていく姿勢が感じられます。
(そして、同じことはあまりやりたくない、という感じを受ける。)
だから途中で生物学の研究とかするんだね。年表見て初めて知ったけど。
好奇心に従って突き進む才能のほとばしりです。ぜひ。
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ルージーンの話し方はぎこちなく、粗雑で的を得ない言葉ばかりだったーーだが、ときおりそのなかに、不思議なイントネーションが身を震わせることがあり、そのイントネーションは、彼が口に出すことのできないでいる、繊細な意味の詰まった生き生きとした言葉をほのめかすのだった。無知であるにもかかわらず、語彙が貧しいにもかかわらず、いつか耳にしたことのあるさまざまな音の影を、かすかに聞こえる音の振動を、ルージーンは自らのうちに隠し持っていた。(p.169)
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ナボコフは天才肌でほとんど狂人に近い位置にあるような人間の言葉を、
純粋なものを取り出そうとしてフォーカスしていたに違いない。
もしかすると、自分自身の世界との断絶についてであったかもしれないが。