宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか

  • 新潮社
3.36
  • (3)
  • (8)
  • (13)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 241
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105065911

作品紹介・あらすじ

ビッグバンの前には何があったか? 宇宙の果てはどうなっているか? 「われわれは永遠に循環する宇宙に棲んでいる」――そう考えれば、ビッグバンにおけるエントロピーの矛盾は解消される。ケンブリッジで育ち、オックスフォードで磨かれ、あのホーキング博士も一目置くというイギリスの天才物理学者が、自ら「バカらしいほど新しい」と評する「共形サイクリック宇宙論」を懇切丁寧に解説する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著者のPenroseは「ブラックホールの形成が一般相対性理論の強力な裏付けであることの発見」について2020年にNovel物理学賞を受賞したことでもニュースになったが、Hawkingとともにブラックホールの特異点定理も非常に有名。

    本書は彼の宇宙に関する物理的な考え、サイクリック宇宙論の解説がメインのテーマである。
    導入は熱力学の第二法則、いわゆるエントロピー増大の法則から入っている。
    熱力学以外の物理学の基礎方程式(相対論、量子論、電磁気学)は時間の向きについては対象である。つまり、ビデオカメラで撮影した物理現象を観た時に逆に再生しても物理学的には全く正しい運動をする。
    (ビルの屋上から鉄球を落下させた場合と、地上からとある初速でビルの屋上に向かって投げた鉄球とで物理学的な違いはない)

    が、テーブルから落下して割れた卵が、ひとりでに卵に戻ってテーブルの上に戻ったりはしない(みたことはない)。これは熱力学第二法則に矛盾するからである。(矛盾とまではいかないが、ほとんどありえない)

    この宇宙はエントロピーという物理量を増加するという法則があり、時間はそのエントロピーが増大する向きに流れるようだ。
    問題はエントロピーという物理量は計算ができ、さらに最大値もあるということだ。
    エントロピーは乱雑さと言い換えることもできるが、究極に乱雑になった状態から先はない。エントロピーは増大するのであるから、最初はエントロピーが小さい状態、つまり乱雑ではない状態から始まる。
    ということは、この宇宙はかなり乱雑ではない状態からスタートし、現在に至っているわけである。
    宇宙の始まりは約136億年前のビックバンから始まったとされるが、ビックバンは超高圧、超高温状態だったと推察されている。
    沸騰したヤカンを見て分かる通り、ぐつぐつ煮えた湯は静かな水面よりも乱雑に思える。この状態がなぜ「乱雑でない」のか。
    というのが、理論のモチベーションである。

    サイクリック宇宙論とは、宇宙がサイクル、つまり循環しているということを基本としている。
    宇宙のエントロピーが最大となり、もはやこれ以上乱雑になりえない状態から、ビックバンが生じるらしい。これもきちんと理論的に定式化されているようであるが、本書でも解説しているが、かなり専門的である。
    大学の理論物理をやっていないと理解できない。
    が、数学的な理解がなくとも内容は(難しいが)追える。

    最先端の物理学で第一級のNovel物理学賞を受賞した物理学者による解説なので興味深い。

    現在、ひも理論や量子重力理論など最先端の理論があるが、なかなかそれを検証するような現象がないようだ。
    数学的には「ありえる」が、それがこの宇宙を支配する物理学であるかどうかはまさに実験や現象の予測によってなされる。
    ブラックホールやビックバンを記述する数学はなかなか検証できない。
    サイクリック宇宙論は、宇宙マイクロ波背景放射(CBM)をかなり精密に調べると前の宇宙の痕跡がわかるかもしれないとのこと。(が、超高精度な測定が必要であるそうで現在はその精度まで到達していない)

  • 高名な物理学者である著者が提唱する「共形サイクリック宇宙論」について解説する一冊。全宇宙の重量と宇宙定数の値によっては、ビッグバンとビッグクランチを繰り返すサイクリックな宇宙論というのは以前からあったが、常に増大すると考えられるエントロピーの解釈との折り合いがつかなかったが、本論では、ブラックホールの消滅によりその解決を図る。更に宇宙背景輻射のゆらぎは、インフレーションによるものではなく、1サイクル前の宇宙でのブラックホールの衝突の痕跡と見なす。数学的な記述は補遺にまとめているが、一般向けの本文もかなり難解。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00277697

  • あかん。
    難しいわ。
    面白そうやけど、読み進められへん。
    無念ー

  • かなりハイレベル。これを理解するために他に何冊か読まないとダメ。

  • 熱力学と相対論の基本的な理解が必要。難易度が高いため、一般啓蒙書とは言い難いが、述べられていることは他書に比べ、オリジナリティーが高い。

    熱力学の第2法則(エントロピー増大の法則)を全体を貫く駆動力としながら、共形でサイクリックな(循環的な)宇宙論を立論する。最後に述べられている観測事実の示唆があることは興味深い。

  • サイクリック宇宙論に関する自身の論文を一般向けに解説した書であるが、かなり難解。さすが提唱者だけあって、ペンローズダイアグラム(光円錐)は、頻繁に登場するため、光円錐や同宇宙論に関しては、予め難易度の低い入門書を読んでおくことを推奨する。

  • 請求記号・443.9/Pe
    資料ID・100061680

  • 140705 中央図書館
    熱力学第二法則の、丁寧な説明が読みやすい。しかし宇宙論のパートになると、これは普通のヒトには読めないでしょ。どうやって読み込んだらいいか、はた、と当惑。

    備忘として。
    原題は『Cycles of Time』と、シンプルでありながら主題を余すところなく表すとてもいいものなのだが、日本の啓蒙科学書として売るためには、(訳者の竹内薫さんは尊敬するのだが)このようなくだくだしいタイトルにせざるを得ないのだろうか。面白くない。まあシンプルで抽象的なタイトルだと日本人は「自分には縁がない」と感じてしまうのでフックが効かないということもわからなくはない。
    ついでの備忘で、『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか』も最近の評判の本だが、原題は『The Company of Strangers』であって、原題のほうが好みだという人も(特にこういう本を面白いと感じる人の中には)多いと思うのだが。この話は、池田信夫氏が同書の書評にも書いているのを見て、膝を打ったところ。

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1931年、英国サセックス州コルチェスターに、遺伝学者ライオネル・ペンローズの子として生まれる。ロンドン大学、ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジで数学を学ぶ。ロンドン、ケンブリッジ、プリンストン、シラキューズ、テキサス、コーネル、ライスなど英米の諸大学で教鞭を執ったのち、1973年以降、オクスフォード大学ラウズ・ボール記念数学教授職にある。1972年、王立協会会員に選出される。宇宙論におけるペンローズの定理をはじめとして、物理学・数学の多くの業績があり、王立協会メダル、アインシュタイン・メダル、イギリス物理学学会ディラック賞などを受けたほか、スティーヴン・ホーキングと共同でエディントン・メダル、ウルフ物理学賞を受賞している。

「2016年 『心の影 2 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ロジャー・ペンローズの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×