- Amazon.co.jp ・本 (574ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105900038
作品紹介・あらすじ
飲んだくれで、愛国主義者で、生活能力のない父。涙にくれる母アンジェラ。空腹と戦い、たくましく生きる子どもたち-1930年代のアイルランド南西部の町リムリックを舞台に、極貧のマコート一家の日々と少年の心の奥を、ユーモアとペーソス溢れる美しい文章で描き上げた珠玉の回想録。
感想・レビュー・書評
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けっこう貧乏だったから、けっこうあくどいこともやってたんだぜ、的な武勇伝として読めなくもない。貧乏で苦しい、学校では先生が厳しい、暴力もある、でも驚くほどに親は暴力をふるわないようである。これが不思議というか、昔はそうだったのか、アイルランドだからか、たまたまなのか。結果論なのか、親に暴力をふるわれなければ、子はそれなりに真面目に育つというのが、今回の調査結果ということになる。
そんな真面目くんがときに悪に手を染めつつも育っていく姿が、しかしアホらしくて楽しい。貧乏なら何を言っても何をやってもギャグに昇華できる。
そして父親は完全に忘れられた。ヒドイ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どんな境遇であっても心が豊かで誇り高い精神を捨てずに生きてきた著者のユーモアセンスに溢れる物語はとても感動的でした。
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アイルランド出身の著者の自伝的小説.もうこれ以上なく貧しく悲惨な少年フランシスのアイルランド,リムリックでの生活がユーモラスな筆致でつづられていく.映画にもなっている.
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飲んだくれで、愛国主義者で、生活能力のない父。涙にくれる母アンジェラ。空腹と戦い、たくましく生きる子どもたちーー1930年代のアイルランド南西部の町リムリックを舞台に、極貧のマコート一家の日々と少年の心の奥を、ユーモアとペーソス溢れる美しい文章で描き上げた珠玉の回想録。
原題:Angela's ashes
(1996年) -
3.76/174 シリーズ三部作(「アンジェラの灰」→「アンジェラの祈り」→「教師人生」)
内容(「BOOK」データベースより)
『飲んだくれで、愛国主義者で、生活能力のない父。涙にくれる母アンジェラ。空腹と戦い、たくましく生きる子どもたち―1930年代のアイルランド南西部の町リムリックを舞台に、極貧のマコート一家の日々と少年の心の奥を、ユーモアとペーソス溢れる美しい文章で描き上げた珠玉の回想録。』
原書名:『Angela's Ashes』 (Frank McCourt #1)
著者:フランク・マコート (Frank McCourt)
訳者:土屋 政雄
出版社 : 新潮社
単行本 : 574ページ
受賞:ピュリッツァー賞
メモ:
一生のうちに読むべき100冊(Amazon.com)「100 Books to Read in a Lifetime」 -
時間かかってしまったけどとても面白かった。
読んで良かった。
20年くらい前かな。映画を見ました。
湿っててというか濡れてて、ぼろぼろな家族の悲惨な物語だった印象です。
本を見かけ、読んで見たら、映画のような暗いばかりの話ではなかった。
悲惨は悲惨だけど、少年はどこまでも屈託無く、世界は滑稽で、希望すら感じさせるのでした。
短い文が読みやすく、湿度を低くさせているのかな。 -
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主人公の父は北アイルランド出身のプロテスタントながら、IRAに加わっていた経歴を持つ。一家は大恐慌に見舞われている移住地アメリカを棄てアイルランドに戻るが、その経歴故に北アイルランドには帰れずに母の田舎へ身を寄せる。呑んだくれな父と、一家の生活のために奮闘する母。頑張りも虚しく主人公の兄弟達は次々と貧困と餓えの為に死んで逝く。主人公は長じてアメリカで成功し、母と残った弟を呼び寄せる。母が亡くなるとその遺灰を持ってアイルランドを訪れる。母の名前はアンジェラで、題名の由来。何度でも読みたい物語。
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1997年度ピュリッツァー賞受賞作のほぼ全訳書。この作品は1996年の夏に出版されたあと、年末までに「ニューヨークタイムズ」ノンフィクションベストセラーリストのトップに昇り、その後も長期にわたってリストに上っていたという。日本では、1998年に発行されている。
さて前置きはこれぐらいにして、上下巻の本もあるが、私が図書館で手に取ったのは367ページある1冊だった。かなり分厚い!そして、黄ばんでいる。しかも苦手の外国文学だ。ちょっと心配だったが、図書館員の「これおもしろかったですよ」の一言で、張り切って読みだした。(なんと単純!)
ひとことでいうならば、「アイルランド系アメリカ人」の作者が、アイルランドで過ごしたみじめで貧困を極めた少年時代の回想録だ。
作者の父と母がアメリカで知り合って結婚した。作者が生まれ次々と弟が生まれて、作者が4歳の時、父の故郷アイルランドへ帰るところから、物語は始まっていた。居住地のリムリック市は雨の多い、町だという。生活環境もあまりよくない。
そんなところへ父と母、作者・3人の弟、一人の妹で、移り住むが、父には仕事がない。失業手当をもらうが、もらった分をそっくり、飲んでしまう。ボロの貸家にはお腹をすかした小さな子どもたちとお腹に赤ちゃんができた母・アンジェラがいるというのに・・・。
劣悪な生活環境のなかで、二人の弟と妹は病死し、生まれた赤ちゃんも死んでしまう。作者もチフスにかかり、目を患う。そんな中でも、何回怒ってもいさめても、父の飲んだくれは治らない。
雨が続いて寒くても、火をおこす石炭も薪も買えない生活。明日のパンはどうするの?毎日、暖炉のそばで泣いているアンジェラの後ろ姿を見ながら、作者は育っていった。
イギリスへ出稼ぎに行ったまま帰らない父の代わりに、15歳でアルバイトをはじめ、19歳でアメリカへ単身わたったという。
子供の頃の作者の日常、なんと悲惨なことだろう。フィクションでもない、まぎれもない回想録なので、本当によく生き延びたものだ。父が帰ってこず、母も病気でたおれ、おさない弟たちの面倒をみている10歳の作者は本当にけなげである。そんな状況になったときになんとか手を差し伸べてくれる(たとえいやいやでも)ご近所さんの存在も、作者の運の強さを思わせる。
全体的に暗い話なのに、テンポのよいユーモラスな文章とたくましい子供たちの言動で、切なくも面白く読めた。
それにしてもひどいのは、のんだくれのこの父親!働いて好きなお酒を飲みたいのなら、給料をもらったら一度家に帰り、ほんの一部の金額を持って飲みに行けばいいものを、それができないのだ。
お金をもったら即酒場へいき、全財産を使いきってしまう。
ああ・・・なさけない。それにひきかえ、母アンジェラはやはり母親だった
泣くことと子供を育てることしかできないが、それでも至上の愛で何人もの子供を育て上げた。偉大だなと思う。
この本だけで、全アイルランド人がこうだとは思わないが、どうしても今の日本と比較してしまう。
そういえば、日本もかつては国民の生活が貧困な時期があった。幸せ・・・今、物があふれかえっている日本に生まれ育ったのは、幸運だと思う。