砂の女

著者 :
  • 新潮社
3.62
  • (10)
  • (20)
  • (29)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 195
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106006036

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 名作と呼ばれる安部公房の代表作。
    私には合わなかった。
    ひと言でいえば、無人島に流された男女が…という王道ストーリー。

    昆虫採集が趣味、夫婦仲が冷え切っている教師が、砂に埋もれる村に監禁される話。砂掻きを強制され、女と同棲を強いられる。脱走を試みるが連れ戻され、次第にその生活になじんでいく。

    この主人公がなんというか、教師の割に倫理観の欠片もなくて、ヒステリックだし、極限状態におかれた主人公心理にあまり乗れなかったのが原因と思われる。

  • どんな人も「国」に帰属している。主人公の仁木は、不意に砂の中の生活に陥れられるが気が付くと村落にちゃんと帰属している。砂の女との生活はむしろ幸せに見える。
    それにしても狭い環境設定でここまで物語を作るってスゴイ。

  • 2014/9/18

  • 男と女の違いが普遍化できるのか個人的にはどうかはわからないが、作者が男でありそこに善意に共感したとして考えてみると男とはそんな動物であり、また女とはそんな動物なのかと思う。男も女もひっくるめて人間とはそんなものという意味で単純な虚構の中で人間の普遍的なものを描いていて秀逸な作品。この他の作品は読んだことがないが小説家として相当の上位にランク付けされるのも納得。

  • 都会で教職につく31歳の妻帯の男が、昆虫採集のために訪れた海辺の集落で、砂の穴の中の家に囚われる。あり得ない状況設定のはずなのに、緻密な描写により、あたかも映画を見ているかのような錯覚に。

    砂の穴の中という限られた場面で、登場人物も主人公と「砂の女」だけだが人間の普遍的な部分を多く描いている。多くの外国語に翻訳されたことも納得。

    文末のドナルドキーンの解説も秀逸。

    同僚Tさんからお借りした。

  • 口の中がじゃりじゃりしてくるよう。

  • 砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに人間の存在の象徴的姿を追求した書下ろし長編。

  • 正直言って、比喩の連続で頭に入ってこない部分が多く、展開を知りたくて読み飛ばした。人が人を利用し閉じ込める、奇妙な原則に何の疑問も抱かない物語の異様さに惹かれた。最後は同じくして聞いていた音楽も聞こえてこないほどのめり込んだ。ときどきある、現代人の私でも秀逸だと感じる比喩が、物語へひっぱりこむぬめった腕の吸盤のように感じられた。
    違う話を読んでみたい。どんな書き方なんだろう。

  • 安部公房は短編をいくつか読んだことがあって、それらに比べると、案外、相当わかりやすい部類だった。
    話のシナリオはサスペンス的なんだけど、いちばん最初に「彼は逃れられなかった」ことが示されていて、破滅的というか、退廃的というか、そんな味わい。
    ぞろぞろと、流れ崩れる砂に腐らせられるような。
    マインドコントロール、というにはあまりに穏やかな。なんて言えばいいんだろう。

    描写の中には、正直さらっと一読しただけでは意味(描写される意義、伝えたいこと)がよく整理・分析しきれないような難解な述懐も確かにあったけど、冗長ではなかったので、読むのがしんどいとかは、古典文学作品の割には無かった。
    少し時間を置いて、忘れかかったくらいでまた読みたい。

  • 読む前の勝手なイメージで女は魔性の女なのかと思っていたけど全然ちがった。
    魔性なのは砂なのか、砂に囲まれたあの空間なのか。
    とにもかくにもタイトルの砂の女というのが秀逸だなあと感じました。

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

安部公房の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×