- Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106036392
作品紹介・あらすじ
ブラックバスは排除し、サケの放流は推奨する。トキの心配はするが、そのエサとなっている稀少なカエルには冷たい。ご都合主義の生態系観には枚挙にいとまがない。人は、かわいい動物、有益な植物はありがたがり、醜い生き物、見えない微生物は冷遇しがちだ。人類が生き延びるには、生物の多様性を心配するより、公平な生態系観を確立することが大切なのだ。
感想・レビュー・書評
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ふむ
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だいたい,タイトルが刺激的。「自然はそんなにヤワじゃない」-ヤワなのは,むしろ私たち人間という種ではないかってんだよ。
著者は,ミジンコくらいの生き物の研究者らしい(とわたしは判断した)。
最近,巷間でよく言われる「生物多様性」という言葉を,上っ面ではなく芯の部分で理解するためには,大変いい本だったと思う。わたしのノーミソにもビシバシ刺さってきて,ほとんど1日で読んでしまった。こりゃ珍しい。
また,食物連鎖を見る視点として「r-戦略者」と「K-戦略者」という概念(これらの概念は相対的である)を導入して説明してくれているのも大変分かりやすい。
自分の庭の芝生と雑草の話から解き始める本書は,著者の思い出話や映画の話などをからめながら,主張へと迫っていく。
水田や里山で守るべきものは,昔ながらの景観,昔からよく見た動植物,そして昔ながらの人々の営みと文化ということになる。そうであるならば,くり返しになるが,それは「生物多様性を保全すること」とは違う話だろう。(p.156)
なんでも,生物多様性と結びつけようとすることが科学的な態度とは言えないことがよく理解出来た。
世界農業遺産(GIAS)は,まさに,この自然と文化(人々の営みそのもの)の調和を世界遺産として指定したのであって,生物多様性を求めているわけではないのだと思う。
久しぶりに赤線引きまくりの読書だった。 -
これはみなさんにもっと広く読んでほしい一冊。努力するなとは言いませんが、何か今の二酸化炭素削減、多様性保護などなど、、胡散臭いものも知るほどに、見えてきたりする。
自然は長いスパンを考えると人間が思うよりもっと、もっと力強く強靭なパワーを持っている。世界の政治の世界の力関係に振り回されることなく、真実を知ろうとする心や、考え方を知ることが、大きいもの長いものに巻かれない振り回されない生き方ができそうだ。。。 -
生態系は微妙なバランスと絶妙な仕組で成り立っているということが大変わかりやすく説明されている。仮説も様々書かれていて大変面白い。絶滅危惧種を守ることが他の生物種へ大きな影響を与えていることなど,考えもしなかった。
■生物間相互作用
■競争に強いものはストレス耐性が低い
■r-戦略者,k-戦略者
■シアノバクテリア→藻類=「神様」 -
自然保護の中に「都合のいい自然」の保護が多くあるって言う事をきちんと教えてくれる本。そして「あるべき自然」は人によって感覚が違うし、理想的な自然は生物が減ることもあるし、人間の「自然破壊」によってそこにいる生物種が増えることもある、という事を実験結果をもとに書いてある。気になってのは「生物多様性」の使い方で、攪乱によって生物多様性が上がるというような表現。必要なのは絶滅させない事であって、例えばほとんど観察されないくらい生物数が減っても、環境の変化で復帰できる程度が生き残っていれば、それは保護すべき多様性の減少じゃないんじゃないかと思う。
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図書館で借りた。日経アソシエに紹介されてました。
環境学習に取り組んでいると、、ホタルを守ろう!という活動によく出会う。ホタルはシンボリックだし、再生すればみんな喜ぶし、
人を巻き込みやすい、環境活動のネタ。
他にも、トキを守ろう、クジラは捕っちゃダメ・・・とかってのは、人間の主観。情緒に訴えて、保全が展開される。
一年間で、ものすごい種類の生き物、人間に見えるものから、見えないものまでが、絶滅をしている。どれくらいだったっけな、すごい数。
保全される生き物があれば、同時にその環境で淘汰される生き物がある。生き物がいなくなれば、別の生き物には住みよい環境になる。
結局は人間の都合なんだよなー。
例えば、ゴキブリが絶滅しそうだったら、トキのようにみんな守ろうとする?
地球のために、生き物のためにと人間は言うけど、自然はそんなに簡単にわかりやすいものではないし、人間が守ってやろうというスタンスが地球に対して上から目線。
突き詰めると、生き物のためじゃなく、人間のためなのです。
多様な生態から人間が恩恵を受けるもの、それは、海洋資源だったり、新薬の開発につながる酵素だったり。
何が正しいというのは、わからなくて、ホントに難しい。
どちらかの視点から見たら、正しいことでも、ここから見たら、正しくないことがある。
生き物にとって、人間のやること全ては正しくもあり、間違ってもいる。
コーディネーターはフラットな立場だから、ムツカシイなぁ・・と思う。これは正しい、これは間違っているという立場でいる、ただ言っているだけのほうが楽なのではないかと思う。
環境保全活動にある矛盾を突いた本。
知識のある人には、当たり前な内容かもしれないけど、文系人間にはわかりやすい。
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結局環境保全活動は何のためにしているんだろう?と、
考えていくと、「センス・オブ・ワンダー」(レイチェルカーソンの言葉)なのかなぁと思う。
生き物、自然の不思議に驚き、共感する感性。
この前、この前、潮の引いた浜で、岩をひっくりかえしては、カニを探した。海に張り付いている貝や、アメフラシの形、色はほんとに面白く、美しい。同一のものがなく、規則的でなく。
それらに出会って、オモシロイ、なんだろう、美しいと思うこと。
それらをいつくしんで、愛着を持つこと。
結果、それが、その生き物がいる環境に目を向けていくこと。
何が正しくかわからなくても、探求する心なのかなと思う。
自然の周りには、豊かな文化が生まれてきた。
自然のためではなく、自然と一緒に文化をずっとつくりつづける。
この微妙なところを子どもに伝えるの難しいと思うけど、要は川や海や山や林で遊んだ体験なのかなと思う。
ある一つの方向性に基づき動くことはとても楽である。
例えば、CO2を削減するのだーとか。
それだけが正しいとした方が、取り組む人は戸惑わない。
コーディネーターって難しい立場だなと、やればやるほどに思う。 -
生態系やら生物多様性やらについて、「最近の議論は根本のところで違うのではないか?」という内容。
確かに、今さらトキを自然に放てば、影響を受けて減る(絶滅する?)別の生物もいるのでしょうね。
一般的な視点で見逃されている、ミジンコなどのよりミクロの視点から論じているところが面白いし、説得力があります。
個人的な話になるんですけど、ウチにはメダカ池と金魚池とザリガニ池がありまして(露地ではなくプラスチック箱)、隣り合っているのですがそのそれぞれで、ミジンコ等の繁殖の仕方が違っていて、しかもその時々の水の状態で変化していたりして面白いのですが、そういうことの理由がすこし理解できました。
[2010.8.19] -
「地球温暖化なんて嘘だっ!」ってな反エコ本ではなく、生態系
から自然環境を考えることを提案している。
昨今話題の調査捕鯨にも触れている。例えば、全ての調査捕鯨を
中止した場合、大型のクジラの個体数は増えるのは確かだ。しかし、
大量のオキアミを餌とする大型のクジラの個体数が増えれば、同じ
オキアミを餌とするイワシなどの魚の個体数が減少することを指摘
している。
理屈を捏ねているといえばそれまでなのだが、最近のヒステリックな
までの環境保護・動物保護に一石を投じるのではないだろうか。
アフリカの自然保護区でライオンの個体数が減少しているという。
ライオンの餌となる動物が減少しているからだそうだ。打開策として
他の地区からシマウマやヌーなどの動物を、ライオンの餌にする為に
運んで来るというニュースがあった。
このニュースに違和感を覚えた。シマウマやヌーも、自然淘汰の
なかで生き残って来たのではないのか。それをライオンに与える
為に他へ移す?人間が、そこまで手を加えてもいいものなのだろ
うか。
地球上に人間がいなくなったら…なんてシュミレーションがあったと
思うが、人間も地球上の生態系のひとつと捉えたら、環境への取り
組みも少し変わったものになるのではないだろうか。
本書は視点を違えた環境論として一読の価値はある。 -
タイトルの通りの内容。入門的。