利他学 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036804

作品紹介・あらすじ

自分の遺伝子を後世に残すことが生物の最大の目的ならば、なぜ人は見ず知らずの他人のために命を落とすことがあるのか?自分の損失になるのに、なぜ震災の被災者に物質や義援金を送るのか?生物学、心理学、経済学、哲学などの知見を総合して、こうした不可思議なヒトの特性を解明する。

感想・レビュー・書評

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  • 情けは人の為ならずともする話。
    人間の利他性について科学的に解説。

    進化は変化。
    仕組みはなんらかの機能のためというリバースエンジニアリングの考え。
    人はおせっかい。
    微妙な裏切りの判断は顔に言葉に。
    一貫した利他性は非合理的でこそいきる。
    DNAにプログラミングできない複雑な言語と道徳。

    おもしろい。

  • なぜこの本を選んだのか

    違う読書した本に紹介してやったから

    この本を読んで学んだこと感想

    人間に限らず動物一般の行動を考える時四つのなぜ

    1 その行動が起こる仕組みは何なのだろうか

    2 その行動にはどんな機能があるのだろうか

    3 その行動は個体の一生のうちにどのように発達してくるのだろうか

    4 その行動は進化の歴史においてどのような過程を経て今に至っているのだろうか

    ―仕組みと機能の関係
    仕組み ある行動があった時にそれを真理や神経系の働きなどによって説明しようとすること仕組みの説明

    機能 その行動がどのようにその答えに利益をもたらしてきたのかということを考えるのが機能の説明

    人工物の場合、仕組みは機能のためにある。ゆえに機能が何であるかを考えるとその仕組みについて理解が進む

    リバースエンジニアリング(逆行設計)

    同じことが生物についてもいえる。なぜその種がそんな仕組みを持っているのか。
     機能を考えることが大きなヒントに。人間は人工物ではないが、あるメカニズムが働けば誰かが設計したかのように、非常に機能的なものでありそれが自然淘汰。
     自然淘汰とは自然界で生態的条件や環境条件によりより、よく適合するものは生存を続け、そうでない劣勢のものは自然に滅びていくこと。

    ―なぜ目があると利他的になるのか

    人間には自分の方を向いている目を見ると利他性が高まる。という仕組みがあるということ。
     目があると他者への分配が増えたり、公共心が高まったりするもし、評判を気にするということがその基盤としてあるなら、そこには見られているという感覚があるはず。
     つまり、他者から見られている自分というものが意識されていなければならない。

    ―なぜアメよりムチなのか

    罰を与えることで、集団から裏切り者を減らしていくというのは負のフィードバックになるから。
     フィードバックとは入出力を持つのにおいて出力が入力や操作に影響を与えること。

     例 エアコンの自動調整

     裏切り者に罰を与えるのはタダではない。何らかのコストがかかる。司法制度や警察制度は、多額の税金によって維持されている。その結果として、裏切り者の数はどんどん減り、罰を与えることは少なくて済む。最終的に、罰を与えなくても罰があるという可能性だけで、裏切り者の発生を抑えられる。

  • 自然淘汰という観点で、人の利他性を分析した本。こういう形で、心理学的な行動を捉えることが出来るとは目からウロコだった。

    [private]以下注目点
    ・自然淘汰理論の反証は、自分の適応度を下げてしまうような行動。たとえば、自分の子供を食べてしまう行動。病的な場合をのぞく。
    ・心も進化の産物と考えられる。
    ・進化と進歩は違う。
    ・進化心理学 心の仕組みについて一貫した説明を与えてくれる。
    ・利他主義に報酬を与えるとコストがかかり過ぎるので、適応度が上がらない。
    ・直接互恵性が進化し、その後、親切の連鎖が進化した。
    ・作り笑いは、左側の口角が上がらない。意識的な笑いは、左半球で作りだされる。
    ・日本人は、目。アメリカ人は、口に注目。
    ・生物学的には、老人介護は、まったく無意味。
    ・150人が、限界。
    ・教員は、目標と仕事の内容は自分自身で決める。何をやるべきか、そしてそれにどの程度の時間を割けばいいのかということを自分で判断する必要がある。それができない人には勤まらない職種なのである。
    ・罰金を導入する前よりも努力水準が下がってしまった。
    ・災害時のユートピア。公権力はそういう時には、事態を悪化させるだけ。カトリーナの際は、ありもしない略奪、暴力が報道される一方で、公権力がユートピアを破壊していた。日本人だから整然としていたわけではない。[/private]

  • 行動経済学の近年の研究成果の紹介と、筆者が語る理論になっていない語り、思いのたけのつながりが良く見えず、結果的にエッセイのようなものに感じる。

  •  人はなぜ赤の他人を助けるのか、ということについて、心理実験の結果や、猿等の動物との比較から、利他行為の仕組みなどについて、進化との関係も含めて一つの考えを示している。
     読む人によっては、当たり前のことが書かれていると思うかもしれないが、本書の232頁から233頁に紹介されている、フェアらによる雇用に関する実験などは、制度設計をする人や経営者には、ぜひチェックしてほしいと思う。
     

  • 人間は利他的にふるまうように進化してきた。しかし、利他的な個体が多ければ、突然変異の利己的な個体が得をするので、利他的な個体は種を増やすことは出来ない。そこで脳は裏切り者を検知、裏切りを予防する能力も進化させた。利他的な行動後に報酬系がはたらく仕組みもあるのだとか。
    道徳とか倫理とかは適応進化とともに発達してきた。宇宙普遍の真理があるなんて思ってる人は読むとよい本。
    一ヶ所、姨捨山の説明は違うような。殿様の命令で捨てに行くというより、口減らしで捨てる話の方がポピュラーだと思う。

  • メモ:
    「第六章 利他性はどこへ行くのか」より
    p.216
    実は私たちには、他者に対して親切にふるまうという、そのこと自体を報酬と感じるしくみがあることが、脳研究から明らかになっている。

    p.233
    制度をうまく機能させたければ、単純に合理的なものにするのではなく、互恵性のような、私たちが進化によって身につけた性質をうまく引き出すようなかたちの設計にするということが考えられる。

    参考文献の一つ、『災害ユートピア』との併読がオススメ。

  • 行動学かと思ったら学術論文でした。
    文体も非常に理系的論文調で、論文を読み慣れていなければ非常に読みづらいものかと思われます。
    隙を埋めるためになんども同じ内容を「つまり」や「言い換えると」や「簡単に言うと」で書き直しているので、読書をしたい私としては、1/3ぐらいのスケールに削ったほうが読み手に伝わりやすい文章が出来上がるのでは?とも感じます。


    肝心の中身の方ですが、まだまだ分からないことは多いんだな、と感じる一方で、人間の利他的行動が非常に特殊性持っていることが分かり、興味をそそるものでした。
    この類の本を読んで特に面白いと私が感じるのは、様々な研究者を引用する著者の検索能力で、世の中にこんなユニークな人達がいるのか!と知る一方で、著者の引用から滲み出る尊敬の念のようなものを共感できることが最上です。

  • 4枚カードや独裁者ゲームなんかの実験のバリエーションもけっこう進んでるのね。

  • 人間の利他的行動の性質、またそれが備わっている背景を進化心理学を切り口に説明する。
    進化心理学はやはり面白い。
    目があるだけで人はより利他的になること、作り笑いの特徴、介護を人間がするようになった理由、人間にとっての群れの適正な規模、災害ユートピアなど、興味深い話が多い。
    なお、コミュニケーションの具体的ノウハウ、利他の戦術などを学ぶことを目的とする本ではなかったです。

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著者プロフィール

1954年、新潟県生まれ。成城大学文芸学部教授。専攻は文化人類学。著書に『レヴィ=ストロース入門』(筑摩書房)、『構造人類学のフィールド』(世界思想社)など。

「2005年 『プロレスファンという装置』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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