蕩尽する中世 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036965

作品紹介・あらすじ

わが国の中世は、地方から吸いあげた富を蕩尽することから始まった。過剰なまでの消費を支えた政治・経済システムとは一体どんなものだったのか。平氏の物流戦略、知識人の清貧礼讃、鎌倉御家人の複雑極まる金融操作、そして悪党の経済力の本質とは?「蕩尽」という一見非合理な消費性向に着目し、院政期から応仁の乱に至る400年の流れを見つめ直す。

感想・レビュー・書評

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  • 本郷和人の奥さんも歴史家で同じ中世が専門(笑)
    消費の世界から中世を見る
    貨幣経済に目を奪われていたが、新しい行政組織の地方から富を吸い上げる力は治よかったのかあ
    確かに、技術革新もあり生産性も増えているし、軍事力をもたない平安時代の地方無政府化から一転、「納めなかったら襲うぞ」という実力保持政府だと無条件で従うよね
    この前提があっての貨幣の流通だと理解しておこう!

  • 中世の生産と富について…ということで、
    章ごとに時代をくぎって書かれていました。
    いわゆる「歴史」の本とは違い、
    訴訟文書や説話集、さまざまな史料(現代語訳されているので読み易い)から中世人の生活を読み解こうという感じ。

    文章が読み易く、さくさく読めました。

  • 蕩尽が、モノの経済圏を発達させ、やがてそれを追い越すようにして、カネの経済圏を沸き上がらせる。モノを伴わないカネの経済は、モノの経済と表裏をなして、より大きな蕩尽を可能にする。ヒト、モノ、カネが、大いに躍動し、そして食い荒らされた日本中世の動態を見る。

  • バタイユの著作を読みエロティシズム、蕩尽といった概念を学んだわけだが、バタイユはフランス人であるがゆえに、バタイユの考察、あるいはエロティシズム、蕩尽といった概念が日本においてどれほど有効であるのか、かなり疑問であった。そのためこの本を読むことで、日本において富がいかにして蕩尽されていたのかについて考えようと思い手にとった。
    平安時代後期には全国の荘園から集められた富が藤原氏、院によって蕩尽される仕組みができあがっていた。そして平氏が実権を握った時代は、海運が整備され、中国から輸入された富をも中央に集められ蕩尽された。だが武士政権が成立すると、貴族は徐々に衰退し、例えば鴨長明の「方丈記」や吉田兼好の「徒然草」などのような質素な蕩尽(それはもはや蕩尽とは呼べないであろう。)の仕方へと変化を遂げる。室町時代の幕府においては、貰ったものを別の人に贈与するという習慣が一般化し、貰いものの有効活用という発想はあっても無益な蕩尽という性格はほとんどなくなってしまっている。西洋同様、時代を経るに従い、一人が全てを蕩尽する仕組みは、徐々に解体していったことが分かる。
    蕩尽する中世というタイトルであったが、蕩尽にあまり焦点があてられず、蕩尽を可能にした仕組みに焦点があてられていたのは残念であった。

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著者プロフィール

東京大学史料編纂所教授。
一九六〇年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。
著書『買い物の日本史』 (角川ソフィア文庫、二〇一三)、『怪しいものたちの中世』(角川選書、二〇一五)ほか。

「2016年 『近衞家名宝からたどる宮廷文化史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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