- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106037757
作品紹介・あらすじ
ピカソも脱帽! 古くて新しいロマネスクの美を知っていますか? 11~12世紀のロマネスクこそは、ヨーロッパ美術を大きく変える「革命」だった。宮廷文化から民衆文化への流れのなかで、知識より感情を、写実より形の自由を優先する新たな表現が、各地でいっせいに花ひらく。古代ギリシア・ローマやルネサンスだけがスタンダードではない。モダンアートにも通じる美の多様性を再発見する。
感想・レビュー・書評
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芸術新潮で著者のファンになってから17年、この本を購入してから5年、やっと読み終えることができてホッとしている。
2006年ごろの芸術新潮で、二度にわたるロマネスク教会の美術特集。
そこで金沢百枝さんの切口やご本人の文やお姿をみて、とてもチャーミングなこの方が大好きになった。
以降、Twitterも見て、金沢さんの生活や世界へのアンテナ、感覚に刺激をもらっている。
2年ほど前にテレビにも出演されて、もちろんそれもチェックしていた。
お洋服が素敵だったなあ。あやしいファンですみません。
正直に言えば、ロマネスクは、芸術新潮で出会うまで全く知らない世界だったし、この方の切り口でなければピンと来ないままだったと思う。
有名なゴシック建築の前の、ロマネスク建築。
ゆるく、直接的に、教会全体を大きく一続きの空間としてデザインし、個人の祈りの延長にある、手仕事の素直な喜びと、のびやかな面白さ。
全体の歴史も紐解き、細かな説明も読んだ上で、そういう美術なんだと感覚でも知識でも理解できてよかった。
小難しいことは抜きにして、感覚で美術を見る。
そのあとに知識で補完し、納得。こういう流れが私には合っていたようだ。
この本は、図版も可能な限り収録して、わかりやすく説明してくれている。
私のような門外漢は必死でついていく状態だったけど、入門書としては十分な一冊だと思う。
芸術新潮で見た話をもっと詳しく知ることができたし、刺繍やモザイクなど、建築以外の要素も絡めて、包括的に学ぶことができた。
いずれ、とんぼの本で、この方の古寺巡礼シリーズを全部揃えたいと思っている。
著者の飾らない喋り方(体言止め、〇〇ではないかしら、の口調)が素敵だなあと、またファン・バイアスで楽しく読んでいた。
メモ①桎梏 しっこく という言葉がわからなくて調べた。手枷足枷のこと、自由を妨げるもの、らしい。覚えよう。
メモ②突然のアーサーネタに驚いたが、クレチアンは一人称で書いているらしい。へー。(第7章ラスト)
メモ③アヴァロンが聖ラザロの物語に登場するが、え、アヴァロンって実在すんの、と思ったら、フランスにある街Avallonだそうで。知らなかった。
私の知る、りんごの島のアヴァロンAvalonとはスペルも違うんですね。へーー。 -
ロマネスク美術の魅力についてのエッセイ。
ロマネスクに関心を抱いて、行きやすい町の教会とか見始めた初心者にとって、イギリスやノルウェーにロマネスク協会がそんなにあるんだということや(専門家である著者も、自身がイギリスのロマネスクに気づいた2002年当時は、一般にロマネスクといえば仏伊西が本場だったと書いているが)、ロマネスク研究の趨勢、日本のロマネスク研究がフランス(特にアンリ・フォシヨン系統)に偏っていることなど、みな新鮮だった。ロマネスクの教会がなぜ交通の不便な村や山上などに多く残っているかもよくわかった。
記述には雑なところも見られ、例えば、ロマネスクの開始時期(定説はない)を10世紀末~11世紀初頭が妥当としている記載の中で、843年のフランク王国解体による王権弱体化を機に、広範囲な地方で建築ブームの到来に触れている。この間の1世紀半の隔たりは小さいものではないと思うのだが? -
ルネッサンス以降の美術の常識では解釈できない不思議な造形に満ちたロマネスク美術。ヨーロッパ各地に残されたロマネスク教会から謎を探し出し、それをミステリーの謎解きのように解き明かしていく手際に感心した。それにしてもルネッサンス以降のヨーロッパ近代の前の時代に対する忘れっぷりは凄い。
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ロマネスクというまだ、研究が進んでいない時代の美術様式についての論考。
12世紀頃の話ですが、中世の春、という言葉が印象的。 -
後半息切れしたものの、写真の豊富な中盤までは、とても楽しく読むことができた。できれば、紹介された教会などが、地図にプロットされてると嬉しかったりして。
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美の多様性に開眼。ギリシア・ローマとゴシック・ルネサンスの狭間、11-12世紀。何となく、技術的に稚拙で不気味な印象のあるロマネスク美術。しかしそれは、モダンアート、ピカソに通じる自由奔放な力の解放であった。
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この本を持って、作品をひとつひとつ廻りたい。