江戸奉公人の心得帖: 呉服商白木屋の日常 (新潮新書 242)

著者 :
  • 新潮社
3.00
  • (0)
  • (3)
  • (7)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 49
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106102424

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 江戸時代のサラリーマン、呉服商白木屋で働く奉公人の姿。
    その職務内容や日常等を約400点の古文書から、紹介する。
    第1章 奉公人のライフサイクル
    第2章 販売と掛金回収に励む奉公人
    第3章 仕入れや帳付けに気を配る奉公人
    第4章 奉公人の心構え  第5章 奉公人の生活
    参考文献有り。
    白木屋日本橋店に関する「白木屋文書」約400点を基に、
    当時の白木屋で働く奉公人たちの職務や生活、その姿を紹介。
    文書に残るのは、11,2歳で京都の本店で採用され、江戸へ下り、
    こども~若衆~手代となる奉公人たちの職務と生活の姿。
    彼らを纏める店側の、就業規則。それは、なんとも細々と。
    その条項があるのは、その逆の実態があったからの、戒め。
    更に、江戸時代で数百年、店を保ったノウハウでもあること。
    そして、現代の企業や働くサラリーマンにも通じること。
    人との関わりと付き合い、外回りや出張での行動。
    会議での居眠りやサボりは、昔も今も変わらぬ実態。
    また、年功序列と能力主義の併用による昇進、服装の序列等は、
    能力主義ですが現在の大相撲の世界に残っているように思えます。
    『明鑑録』に残る事実は小説よりも奇なり!
    入店2年目の壁、掛金の持ち逃げや女郎部屋通いのための
    使い込みや盗みなど、時代小説のネタになりそうな記録が
    残っています。符牒や隠語の話も興味深いものでした。

  • 愛聴しているPodcast「伊藤洋一のRound Up World Now」の
    中で伊藤氏が取り上げていたので読んでみた一冊。

    江戸の大呉服商・白木屋に勤めていた奉公人たちの姿を
    古文書から描き出すという内容。

    昔も今も勤め人の考えることは同じようなもんだ、ということが
    よく分かる。「接待はほどほどに」とか「会議をさぼるな、居眠り
    するな」とか。
    筆者が繰り返し指摘しているとおり、こういうことをしてしまう
    輩がいるからこそ、こんな禁止事項が出てくるわけで。
    いつの時代も、サラリーマンは辛いのぅ。

    筆者がこの本を通じてもう一つ伝えたかったのは「古文書の
    勧め。」
    例えば、白木屋文書の中の一つに『演舌』という帳面があって、
    この言葉はもちろん『演説』を意味するんだけれど、筆者はこの
    『演舌』と言う言葉が気に入っていると仰る。何かを伝えようと
    『舌』が口の中で一生懸命動いて『演』じているこの表記は
    様子が生き生きと伝わってくる、と。
    同じように、「上の空」を『浮空』とか、「行儀」を『形儀』とか。

    確かにその状態をうまく表していて面白い。
    こういう例を挙げて教えてくれる先生がいれば、あの退屈な
    古文の授業も違ったものになるのに、などと考えてしまった。

  • 江戸の商売は、今よりもきっちり掟が決められていて、しかも理にかなっているように感じた。
    掛の回収の大変さは、現代も同じ、信用関係を築くことの難しさがよく分かった。
     

  • 京都に本店のある呉服商・小間物商白木屋。その支店である江戸日本橋店を中心に、江戸の商家奉公人の実相を、心得帖を読み解くことで解説。テーマはかなり細かいが、江戸時代以降現代まで連綿と続く商売の要諦やその淵源を簡明に知るには悪くない。著者はNHK学園講師。2007年刊行。

  • ちょっと行ったり来たり、くだくだしい。
    拙著、からの引用多く、同じ話の焼き回しかい?
    と邪推

  •  「江戸奉公人社会」についての本書を読むと、現在のサラリーマン社会の原型を見るような思いを持ったが、あまり驚くような指摘はない。
     長い江戸期であるから、当然事業の盛衰もあるだろうし、経済構造の変化も大きいとは思うがそのような考察はあまりない。
     本書は、あくまで「奉公人」に焦点を絞っているのだが、それがよかったのかわるかったのか、ちょっと物足りない思いももった。
     簡単に読めるという利点もあるが、読後感はあまり印象に残らない。本書は残念な本であると思った。

  • 昔も今も組織を運営するには決まりごとが必要。
    決まりごとを明文化するのは決まりごとを守らない人がいるから。

  • 江戸の呉服商白木屋日本橋店の古文書から、奉公人の生活がわかり面白い。特に新入社員の気持ちは昔も今も変わらないのかもしれない。

  • サラリーマンはいつの時代もかわらんなあ。

  •  江戸時代にも会社(白木屋)につとめるサラリーマン(奉公人)はいて、就業規則(『永禄』他)に則って働き、年功序列が基本ではあるものの、能力主義も加味された係長(小頭役)・課長(年寄役)・部長(支配役)にあたる3段階の昇進制度のなかで処遇されていた。注目すべきは就業規則にあたる『永禄』と取調べ記録の『明鑑録』で、『永禄』には段階別の服務規程だけでなく、商売のルールや取引先への配慮、部下の育成方針まで、詳細に規定されており、白木屋が奉公人の生活とふるまいをよく理解して経営していたことがわかる。(1月16日報告)

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1953年、千葉県生まれ。東京女子大学卒業。公立中学校教諭を経て、1989年よりNHK学園古文書講師。著書に『古文書くずし字 見わけかたの極意』『絵で学ぶ古文書講座』『古文書はじめの一歩』『江戸が大好きになる古文書』『古文書はこんなに面白い』(いずれも柏書房)、『江戸奉公人の心得帖』(新潮新書)など多数の著書・監修書がある。

「2019年 『くずし字辞典を引いて古文書を読もう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

油井宏子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×