国民ID制度が日本を救う (新潮新書 440)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104404

作品紹介・あらすじ

国民への番号付与は「世界の常識」である。もし日本でも実現していたら、東日本大震災の被災者支援はもっとスムーズに進み、「消えた年金」問題も生じず、「役所たらい回し」も減っていたかもしれない。経済効果は年間3兆円以上との試算もある。アレルギー反応を示すより、「番号がないことのマイナス」を真剣に問い直すべきだ。導入後の社会のイメージ、情報漏洩の防ぎ方など、制度の根幹を徹底解説。

感想・レビュー・書評

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  • かなり前に頂いた本。

    世界の国民IDに関する情報から残念な結果になった(なってる)住基ネットに関するお話。
    導入後の経済効果はやや懐疑的だけど、今の行政は面倒な事が多すぎなので早く色々な場面で実用化して欲しいですね。

  • 正式にマイナンバー制度にGOがかかる前に国民ID制度の経緯や利点を熱く論じた1冊。
    世間の、背番号に対する拒否感や個人情報への懸念は利便性に比して過剰に過ぎる印象。朝日新聞の某記事のタイトルが「あなたに番号がつく日」(2010/12/18)って、論じる以前に恣意的にすぎないだろうか。住基ネットから10年経って状況もだいぶ変わっていると思うがどうだろう。

  •  近年、何度か紙面でもテーマとなることがある国民ID制度を知るために手に取った本。

     第一章では、2010年7月29日にミイラ化した死体が発見された事例(同年八月に再び同様の例があった)を挙げ、国民の実在を確認するための戸籍制度・住民登録制度・国勢調査が行われているのにも関わらず、世帯単位ではなく個人ごとに情報を把握する仕組みが必要な時勢もあり、正確な情報を把握出来ていないと説明し、身分証明書のIT化が進んでいれば、戸籍・住民票と組み合わせて「国民の実在確認」も容易に行え、個人情報が不正に引き出されること(熊本県人吉市福祉課の例)も防げたであろうし、漢字の異字体・外字による「消えた年金問題」は起こらなかっただろうと論じている。

     第二章では、世界で国民ID制度がどのように使われているかを説明している。
     エストニアでは国民IDを用いてネット投票(世界初。投票率も2007年:5.5%から2011年:24.3%へと上昇。携帯からの投票も可能になった)、入学願書の登録、納税の処理、公共交通機関の利用、医療サービスの改善(これまでの病歴・通院歴の把握、電子保健記録・電子画像・電子予約登録・電子処方箋)、そして利用者の個人情報を「個人識別情報(個人の特定)」「私的個人情報(家庭生活の詳細、社会扶助などの給付申請)」「機密個人情報(政治的意見や人種的起源)」の三つに区別して管理している。
     その他の国ではスウェーデン(自己情報のダウンロード:自分が必要とするデータを得られる)、デンマーク(ネット上で住所変更手続き可)、スロベニア(用途別にIDを分類し、連携)、オーストリア(2007年度電子政府サービスランキング一位)、他アメリカ、カナダなどの人口が多い国でも導入され、その背景には「国民のために」という公僕意識が発現されている、と筆者は推測している。
     
     第三章では、何故日本で国民IDが導入されていないかについて説明している。
     「何のために電子化を行うのか」「行政の効率化をはかる」という目的が明確でなかったために、改革すべき箇所以外でも電子化が行われ、国民の利便性を欠いた(利用率は1%未満。カードリーダーが高額であることや、申請後に添付資料が必要。)形となってしまい、経団連から「時期ICT国家戦略の策定に向けて」という提言がなされるほど利用率が低い(電子化した手続き166の内、60種類は利用率0%。行政手続の内134種類は1%未満)。対策をしてもなお、事態が改善されない。
     住基ネット騒動で導入が困難となったが、この事で喜んでいる人間もいるのではないかと推測している。
     
    第四章では、国民IDが無いが為に起きるであろう問題を挙げている。
     冒頭では大野更紗『困ってる人』の事例から、難病医療費等助成制度を申請するための書類を集める煩雑な作業も電子化で片付く事や、2010年の大阪府高槻市の保険金殺人や、2011年の戸籍制度を悪用した殺人といった、個人情報が管理されていないが為に起きた事件が挙げられている。
     また、震災後には岩手・宮城で住基ネットを利用して本人確認を行った事を支持する一方で、きちんとバックアップが行えていなければ利益は得られないとも指摘している。

     第五章では、導入する事で行政システムが大きく変わるであろうと指摘している。
     この章で書かれている事は前の章で語られているものも多く含まれている。それら以外では「給付可能サービスの行政からの通知」「二重に基礎年金番号が付番されることがなくなる」「所得の過小申告の防止(クロヨンの是正)」「金融所得(預金の利子や株式譲渡益)の一体課税」「効率的な補助金給付・税控除」が望めるうえに、一兆円以上の事務費削減が期待できると推測している。

     第六章ではいかにして情報漏洩を防ぐかを綴っている。
     筆者は「完全に防ぐ手立てはない」と断じた上で(私も同意見である)、データベースのアクセスを記録する、ICカードの導入(住所の記載は不要)、法律で手段・運営方式を決めた上で、きちんと運営されているかを第三者組織にチェックさせ、その結果を公開することが必要だと述べている。また、IDを配布するためには、IDを付番する機関、情報連携基盤を管理する機関、情報を保有する機関の独立した機関が必要であるとも提言している。

     分かりやすく書かれたとてもいい本だと思いますが、筆者が国民ID制度推進派であるため、反対の立場から書かれた本も読むと良いと思う(第七章は全体のまとめなので割愛した)。

    自分用キーワード
    櫻井よしこ『「住基ネット」とは何か?』 OECDの8原則 国民ID管理モデル(フラットモデル・セパレートモデル)

  • 国民ID制度は世界の常識、不在が生み出す深刻な問題、漏洩を防ぎ便利で公平で安全な社会をめざそう。

    日本はIT大国のはずなのに、何故こんな基本的なことがまだ出来てないのか、むしろ不思議です。
    無駄を省き効率化することが、悪いことみたいです。

  • いまや国民ID制度は先進国では常識となっているにもかかわらず日本ではその緒にさえついていない。本書ではエストニア、スウェーデン、オーストリア、スロベニアなど先進的にID制度を導入し成功を収めている事例を紹介するとともに、ID制度が行政システムを一気に変革する起爆剤ともなりうることを力説する。情報漏洩の防止についてもその対策を明確に示しており信頼できる。ID制度が導入されておれば未然に解決できた問題は数知れず。一刻も早い導入を願うばかりである。

  • 1968年佐藤内閣の「各省庁統一個人コード」、80年代の「グリーンカード」制度、納税者番号制度など、これまで国民ID制度に関する議論は、国民の利便、行政の効率化、税の公平負担などのメリットがあるにも関わらず、プライバシー問題が過剰に取り上げられた結果、どれも実現まで至らなかった。住基ネットのごたごたもあったが、社会保障・税分野を皮切りに2015年に「マイナンバー」制度の利用開始が閣議決定された。
    国民の利便性の視点に立った行政サービスには、(国民からの)申請主義から(行政からの)通知主義へと変革することが重要。これは米国の電子政府構築に向けた大統領方針(PMA)の三原則の一つにも挙げられている。「紙」ベースのワークフローをそのまま電子化しても意味ないってことだ。「消えた年金」問題や東日本大震災の被災者支援、スパイ天国という、国民ID制度がないことのマイナス面も議論されているところがわかりやすい。
    あと、戸籍って当たり前の概念と思っていたけど、漢文化圏特有の制度なんだね。そして時代にそぐわなくなっているのは確かだと思う。実際、韓国では2008年に戸籍を廃止して、個人ベースの登録に切り替わっている(Wikipediaによると北朝鮮にも戸籍はない)。

  • 行財政改革・税及び社会保障改革・小さな政府
    などなどすべてID、属性、Roleの定義をすれば
    よいだけ。。

    なぜみんな制度論にいくんだ。制度論よりも
    システム論の方がはやい。

  • 国民ID化先進国の例でも、メリットとデメリットを挙げているので、考えさせられる。自分だったら、どれがいいかな。。

  • やっぱりマイナンバーは必要かも。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号:317.6//Ma26

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