イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか (新潮新書 536)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105364

作品紹介・あらすじ

世界で16億の人口を誇るムスリムにとって、日本は憧れの国! イスラムを過剰に怖れる必要はない。日本は理想的社会とされ、アニメやマンガも引っ張りだこ。その親日感情を「国益」にどう結びつけるかを論じる、最強のイスラム入門。

感想・レビュー・書評

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  • イスラム圏の人と友人になったので、興味を持って読んでみた本。
    尊敬されているかはわかりませんが、親日家が多いとは聞いています。
    反面、日本から見るアラビアは情報も少なく、遠い土地というイメージ。
    双方の違いが気になります。

    日本は、イスラム諸国に対し軍事介入をしない平和国家と好意的に見なされているそう。
    加えて、日本の伝統を紹介したサウジアラビアの番組「カイゼン」が人気だと聞きます。

    英仏が行った植民地主義支配とは無縁の国であり、アメリカの隊イラン封じ込めに必ずしも同調しないことで評価されているとのことです。
    1971年にパキスタンから独立したバングラデシュを、先進国で最初に国家として承認したのは日本だとのこと。
    そういう国際的な意志表明の反応が遅い国だと思っていたので、意外でした。

    また、イギリスが操業していた石油施設の国有化で、国際市場から排除されたイランに、日本の出光がタンカーを送り込んだことは大きな快挙として感謝されているとのこと。
    当時孤立したイランと取引をしたのは、出光とイタリアの石油会社の二社のみだったそうです。
    この話が描かれた小説『海賊とよばれた男』を、そのうちに読みたいものです。

    日本文化は思ったよりも現地に紹介されているのだそう。
    ドバイにはマンガ寿司屋があり、オタク寿司、ヤクザ寿司といったメニューがあるそうです。
    なんと、メイド喫茶も誕生したのだとか。
    女性の娯楽が少ないイメージの強いイスラム諸国にも「カワイイ」文化が進出し、キティグッズなどが人気だそうです。

    『アンパンマン』もよく知られているそうですが、中東にアンパンがないため、「ピタパンマン」と名前を変えているとのこと。
    なんだかイメージが違いますが、そのほうが向こうではわかりやすいのでしょう。
    ちなみにドラえもんはアブクール、のび太はアーミルというアラビア風の名前になっているそうです。

    また『男はつらいよ』も人気だとか。
    意外に思えますが、あのシリーズは日本中でロケが行われたため、イスラムの人びとが日本の風土や習慣を知る良い教材になったのだとのこと。
    そんな海外向けの効果がある映画になるとは、監督も想像しなかったことでしょう。

    どうも日本人からすると、アラブ人はテロと結びついて怖いイメージがありますが、それはほんの一握りのイスラム過激派で、普通のイスラム人は平和な民族だと説明されています。
    もともと暑い過酷な砂漠気候の中で暮らしている人々は、助け合い精神に満ち、遊牧社会は外からやってきた人間との接触が多いため、異文化に寛容なんだとか。
    アラビア語の「イスラム」は「平和」を意味する「サラーム」という言葉から派生しており、イスラムは平和を求める宗教だとムスリムは語るそうです。

    日本人の抱くイメージとは真逆。
    まだ理解不足のようです。

    欧米で見られる、肌の色などからの人種的偏見や差別はイスラム社会では微塵も感じられないのだそうです。
    確かに、実際に話してみると、イスラム圏の人々は穏やかな人が多く、喧嘩腰の人に会ったことがありません。
    もっと知っていかなければいけないと思います。

    東京ジャーミィなど、ムスリムの礼拝モスクができたものの、まだまだ国内ではイスラム文化への対応が遅れているのが現状。
    大企業でもムスリムの礼拝用スペースがあるというところはなかなか聞きません。
    また、ムスリムを埋葬する墓地は、山梨県の塩山にわずかにあるのみで、足りていないのだとか。
    日本は火葬しますが、ムスリムは土葬なので、墓地形態が違うのです。
    理解不足が大きな誤解を招くことは避けたいものです。

    石油の輸入を中東に依存し、切っても切れない関係にあるアラビアと日本ですが、その割に日本人にとって、アラビアはまだ未知の地域。
    宗教などが複雑に絡み、分かり合うのは難しかったり物騒な印象を持っていましたが、この情報社会において、アラビア人たちが日本へ向ける興味と好意にそろそろ応えていく時なのではないかと思いました。

  • 「イスラム」というと、どうしても極端なテロリストのイメージばかりが先行するが、決してそうではないだろう。「モロッコで断食」で読んだムスリムの様子も、穏やかで、まじめ。

    ムスリムたちの目指す心意気、感情は、日本人のメンタリティに近いものがあるのだという。
    日本で普通の生活をしていると、イスラム教徒やイスラム文化に触れる機会はなかなかない。本当はどんな人々なのか、実際に知り合ってみたいと思った。

  • 2016.6.8ブックオフ富士見

  • イスラムの人がそこまで日本を慕ってくれているとは思わなかった。中東に行ってみたいな。

  • 根拠があやふやな、著者の都合のいい体験談だけ並べたようであてにならない。

  •  現代イスラム研究センター理事長、イスラム政治研究やイラン政治史をバックグラウンドとしている宮田律著のイスラム論。基本概念は、日本人、日本という国はムスリムから尊敬を受けているということで、決して悲嘆するなという内容。
    著者は日本人がイスラム文化に馴染みがないのは、歴史的な接触や交流の機会が少なかったことを挙げている。江戸幕府が鎖国をしていたために、イスラム商人もやってこなかった。その後、脱亜入欧政策によって、欧をみて発展を遂げていくことになる日本は、ムスリム文化を欧州の視点で横目に見つつも、直接的には欧を目指して突き進んでいった。
     中央アジアではウズベキスタンやアフガンは親日、ウズベキスタンは拘留されていた日本人達が立てた建設物の評価がとても高かったことから、トルコはエルトゥールル号への支援で一気に親日に。イラクは自衛隊の一生懸命な支援、オペレーションによって親日の感情が強い。
     後半は、イスラムが暴力的であるという問いに対して、アメリカが平和をもたらしているのか?という疑問で返している。
     ウンマというイスラム共同体の概念が、行動全ての規範であり、規律をもたらしめるものとして存在している。16世紀に一気に成長したのはオスマントルコである。その凋落とともに、原理主義が台頭してくる。
     最後はイスラムの人が、先進国と比べておもてなしの心がないという麻生太郎氏のコメントを引用した上で、対抗している。が、個人的な体験(イスラム圏で助けられた経験)からくるロジックで少々うんざりする部分も。生活が砂漠だから、仲間意識や外から来た人を助けるという概念があるということも加えているが、イスラムを砂漠の文化と間違って解釈してしまうこともあるかもしれない。
     何れにせよ、イスラムということ自体を1つの概念的な要素で構成しようとすると難しいというのが現時点の拙く勉強不足な自身の結論ではある。各国が、どのようなレベルでイスラム教を認識し、動いているのか、ビジネスとしてどのようなパイが存在しているのか、しっかり時間をかけて見なければ、形を変えてしまい、見失う。そんな世界が目の前まで来ていると思う。
     

  • 2015/11/22【古】258円

    今、旬なので。復習。

    2015/11/26 読了
    前半は日本がイスラムにどう思われてるか
    中盤はイスラムとは
    後半日本とイスラムの今後

    尊敬されてます。
    好かれてすので仲良くしたいです。
    多神教の日本と、一神教のイスラムは考え方が違うけど、お互いを思いやる心はよく似てます

    ユダヤ、イスラム、キリストとあるけど、イスラム教に関しては勉強不足だったので、今後勉強したいと思った。


    レポ無し。

  • やはりイスラムの親日の人達を大事にしたい。アメリカの尻馬に乗ってアメリカのような世界の嫌われ者になってはいけないでしょう。そのためには真の独立しかない。

  • なぜここまでイスラムの人に日本人は信用されているのか?とても不思議なことだけど、この有利さは使わない手はないはず。

  • イスラム世界での日本の評判紹介。概ね好評らしい。これからもそうありたいな。

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著者プロフィール

現代イスラム研究センター理事長。1955年生まれ。慶応義塾大学大学院文学研究科史学専攻修了。UCLA大学院(歴史学)修了。専門は現代イスラム政治、イラン政治史。著書『現代イスラムの潮流』(集英社新書)『中東イスラーム民族史』(中公新書)『アメリカはイスラム国に勝てない』(PHP新書)ほか

「年 『集団的自衛権とイスラム・テロの報復』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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