- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106108068
作品紹介・あらすじ
全てを知る男が語る、官僚、マスコミとの壮絶な暗闘。今日まで我が国を縛ってきた岩盤規制。官僚とマスコミは、それをどう支えたのか? 日本経済の浮沈との関わりは? 霞が関改革を熟知する男が、暗闘の全てを明かす。
感想・レビュー・書評
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●医薬品のネット販売規制。薬剤師が対面で顔色を見て、症状などを確認する必要とは?本人以外が買いに来る事も多々あろうに。
●国家戦略特区WGや規制改革推進会議は、予定調和型の会議とは正反対。毎回がちゃぶ台返しの連続で、よく言えばエキサイティングな真剣勝負だ。
●規制、行政改革は、官僚にとって権力の源泉そのものだし、政治家は業界団体らとのしがらみがある。だから進まない。
●電波オークションは、世界ではだいたい90年代に導入された。日本は20年検討中だ。
●獣医学部新設問題。新規参入一切禁止という極端な規制は珍しい。もう52年も新設されず。
●特区WGとしては、いくらでも新設を認めたかった。そこに「1校限定」でなければ認めないと反対したのは獣医師会。だから加計学園になったわけである。
●日本の一人当たりのGDPが低い理由。日本の労働者が質が低くて怠け者なわけではない。経営者と政府がダメだからだ。政府がわざわざ生産性の低い事業者を守っている。規制や補助金で。
●事前規制型と事後チェック型
●放送法第4条の問題 政治的に公平な報道を。インターネットは4条は適用されない。新聞も適用されないから政治色が強い。
●加計問題の時、各参考人招致の際、報道された時間に偏りが見られた。前川2時間。加戸6分。原2分。ただ、報道機関の最大の役割は政府の監視だから、何らかの疑いを持った時、徹底追求する方向に偏るのは当たり前だと思う。
●電波オークションは日本以外の全OECDで実施。また導入国と比べても日本の料金は安くない。
●学校へのIT導入のハードルが高い。遠隔授業が認められたら、人員削減が進み、文科省の予算が減るのが怖いから。
●美容師は日本の国家資格に通っても、在留資格にはならない。日本で働けない。専門的な仕事ではないらしい。技能ある外国人は排除され、技能の低い労働者ばかり受け入れている。 -
WGに参加している人からの記録の書。報道も公文書も信頼できないなか、この記録が検証の力となりますように。
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新しい動きを認めない我が国の岩盤規制.事前規制型行政と縦割り業法の実態を糾弾する内容だが、著者は行政側の人間だ.従って、新聞論調とはやや異なった行政ベースの意見が多いが、このような考え方も考慮することは必要だと感じた.この状態を何とか改革しようと、第三者機関が作られて活動してきてはいるが、成果が上がっていない.その間に日本以外のOECD諸国などでは、新しいビジネスを立ち上げてきている.勿論、失敗例もあるがとにかく進めてきている.日本ではそれができない.ただ、後追いの利点を活用して、飛躍できることは可能だと筆者は強調している.事前規制型から事後チェック型への転換だ.
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【日本経済を低迷させてきた最大の要因は、政府がビジネスを妨げてきたことだ】(文中より引用)
平成期に改革の必要性が唱えられながらも、その多くは今日に至るまで残り続けているとされる岩盤規制。日本経済の成長を阻害するとも指摘されるそのような規制がなぜ残り続けるのかを分析するとともに、真の改革のために必要な次の一手について考察した作品です。著者は、政府の規制改革推進会議の委員などを歴任する原英史。
電波オークションや獣医学部の新設問題など、昨今のメディアを賑わせた問題の淵源(の一部)が那辺にあるかを考える上で大変参考になる一冊。改革という言葉自体にはずいぶんと垢がついてしまった気もしますが、それでもなお必要とされる改革が数多く残されているのかなと感じました。
自分自身も公務員ですが☆5つ -
第二次安倍一強政権によって、官僚の弱体化が進んできているような印象を持っていたが、著者の見解によるとまだまだ進んでいないとのこと。
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獣医学部問題の真相
2017〜18年にメディアをにぎわせた加計問題。安倍晋三首相の友人が理事長を務める学園が、52年間どこの大学にも認められていなかった獣医学部を新設する国家戦略特区の事業者に選定され、特別の便宜を疑われた。文部科学次官を退任した前川喜平氏が「行政が歪められた」として会見を開き、一気に批判が高まった。
だが国家戦略特区ワーキンググループの委員を務め、獣医学部をめぐるここ数年の政策決定プロセスに直接当事者として関わってきた著者によれば、「真相は全く異なる」。
一般に大学や学部は、文部科学省の認可プロセスを経て、適正な計画ならば認められる。ところが獣医学部の場合、すでに存在する16学部しか認めず、新設は一切門前払いする規制があった。これほど露骨で極端な規制はあまり例がない。しかも国会で議決された法律ではなく、文科省が独自に定めた告示に基づく「異様な規制」である。
獣医学部新設禁止の理由について、文科省は「獣医師の需給調整が必要なため」と説明する。獣医学部の数がこれ以上増えると、将来獣医師が余ってしまうという。けれども10年後、20年後にペットや家畜の数がどうなるかわかるはずもない。現実には獣医師不足が問題となっている。
一方、既存の獣医学部の入試倍率はおおむね10倍以上。獣医師になりたい若者たちの職業選択の自由が合理的な理由もなく妨げられ、「憲法違反といってもよい状態」だと著者は指摘する。
獣医師の需給調整が必要という文科省の説明は、表向きの建前にすぎない。実際には、新規参入を排除したい獣医師会が規制維持を求め、政治力を発揮し、行政もそれに従ってきたというのが真相である。
加計学園に対する獣医学部の新設認可は行政の歪みではない。著者が述べるとおり、むしろ新設を許さなかった行政こそ、利権構造のために歪められていたのである。加計問題に関する洪水のような報道で、その本質を指摘するものはほとんどなかった。政府による規制を当然と考える、自由な社会にそぐわない固定観念がメディアに蔓延しているためだろう。
新規参入に対する規制は、大学学部に限らず、運輸、宿泊、エネルギー、通信、放送、農林漁業、医療、介護などさまざまな分野に残る。これら「岩盤規制」を打破しない限り、世界的に低い日本の労働生産性は上がらず、貧しくなり続けるという著者の警告を重く受け止めなければならない。