マトリ 厚労省麻薬取締官 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108471

作品紹介・あらすじ

「俺たちは、猟犬だ!」精鋭三百名の専門捜査機関が大追跡。違法薬物の摘発、密輸組織との攻防、「運び屋」にされた女性の裏事情、薬物依存の家族の救済、ネット密売人の猛追……元麻薬取締部部長が明かす日本の薬物犯罪と捜査の実態。本邦初の記録。

感想・レビュー・書評

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  • ◯漢らしい文章、熱い、マトリ24時。話を戻そう。
    ◯著者は人事院総裁賞を何度も受賞している。こんな賞、誰がどうしたら受賞できるんだ?と思ったことがあるが、なるほど、こういう組織、人たちが受賞するのだと思えば納得である。
    ◯厚生労働省といえば、今で言えば感染症対策、少子化対策して、介護政策、年金政策などなど、我々の生活に密着した政策が多い中、麻薬取締もやっている。幅広過ぎる。しかも麻薬取締官は拳銃所持しているという。よほど行政に詳しくないと、これは知らないのではないか。
    ◯働いている人は主に薬剤師さん。病院、薬局、ドラッグストアに勤めているイメージしかない。資格取る人でこの仕事選ぼうという人はどんな人なんだろう。
    ◯仕事内容は。拳銃持って、刑事よろしく犯人を追い詰めていく。クスリで不安定な精神の人であれば、危険も多いことだろう。
    ◯この本の良い点は、謎に包まれている麻薬取締官の仕事を広く知らしめるところにあると思う。冒頭にも書いたが、とにかく素直な文章に、著者の実直とともに、やりがいを伝えてくれる。もしも若い頃にこの本を読んでいたら、この道を選ぶこともあったかもしれないと思える一冊。

  • 厚労省管轄下の薬物犯罪と捜査を担う、麻薬取締官、通称「マトリ」の実態に迫る一冊。
    そもそも一般人にとって麻薬に関わる犯罪は警察の範疇なのでは?と思っていたが、日本では、警察、マトリの他に税関、海保の4つの機関が関わっていて互いに連携しながら活動しているという。
    マトリの特徴としては、捜査官、行政官、薬剤師の顔を併せ持ち、300名程度の少数精鋭組織。それで全国をカバーしてるのは驚き。
    戦後ヒロポンの乱用に対応すべく組織が発足し、取り締まる薬物も大麻、ヘロイン、向精神薬、脱法ドラッグ、流通経路も時代によって変遷し、逸れに毅然と立ち向かってきた「マトリ」による激動の軌跡。
    淡々とした文面の本書の裏には、語りたくとも書けず、語り尽くせない深い闇があるのだろう。
    そんな中、日本国民の安全と平和の維持に尽力している組織があることを知る機会を与えてくれた一冊だ。

  • マトリ――厚生省麻薬取締官の仕事の内幕を、40年近くにわたってマトリ一筋でやってきた元麻薬取締部長の著者(2018年に定年退官)が綴るノンフィクション。

    瀬戸内晴美(寂聴の旧名)のような名前だ。
    この著者は数年前の現役時代、そのダンディぶりが「まるで俳優のようで、渋すぎ」と話題になった人である。

    著者の現役時代の麻薬捜査の思い出が中心だが、終戦直後のヒロポン蔓延などにも言及している。日本における薬物禍の歴史が概観できる本である。

    データを駆使した資料としての価値も高いが、何より、著者が実体験した捜査の舞台裏が描かれる部分がバツグンの面白さ。

    マトリの活躍をフィクションとして描いた『マトリズム』という劇画があるが、本書に出てくるエピソードの数々もそのまま映画やドラマになりそう。

    覚醒剤中毒の男の家に踏み込んだら、ふすま三面にわたって(男の暴力から避難した)妻への呪詛の言葉が乱暴に大書されていた……などという話が生々しい。

    目からウロコが落ちる話もいっぱいだ。たとえば――。

    大麻というと、麻の葉をタバコ状にして吸うマイルド・ドラッグというイメージがある(私はやったことがないので知らんけど)。
    だが、近年は大麻の有効成分のみを抽出・濃縮した「大麻ワックス」「大麻リキッド」が主流となっており、その効果は激烈で危険なのだという。

    また、ネット時代になってから、違法薬物はヤクザが扱うのみならず、一般人が売って一般人が買う時代になっているといい、裾野の広がりこそが脅威なのだとか。
    フツーの大学生がネット通販の薬物にハマっていくエピソードは、読んでいてゾッとする。

    一つ難を言えば、最後の第8章「『マトリ』の栄誉」は興醒めだった。
    この章は、マトリが危険ドラッグ販売店を撲滅した功績で「人事院総裁賞」を授与され、著者が代表して天皇から労いと祝いの言葉をかけられた顛末を描いている。

    栄誉には違いあるまいが、一章を割いて詳述するようなことだろうか。
    《(天皇から直接)そのお言葉を頂いたときに、感激が頂点に達し、その場に崩れ落ちそうになった》(255ページ)とか、大げさに喜んでいるあたり、読んでいてドン引き。

    私が編集者なら、この話は「あとがき」で2、3行触れるだけにしてもらうだろう。ほかの章と比べて浮きまくってるし。

    ……と、ケチをつけてしまったが、全体としては面白い本である。

  • 「マトリ」とは厚生労働省麻薬取締部および取締官を指す略称。
    本書はそのマトリに38年間従事した著者の経験と、違法薬物の日本における歴史と現状を記した一冊。

    実際の捜査に携わってきた人ならではの、事件描写のリアリティ、違法薬物の使用の悲惨さや、違法薬物に対する強い憤りが本書からひしひしと伝わってきた。

    本書によれば、違法薬物はインターネットや携帯電話の普及により、以前より入手しやすくなったことから、使用する人は若年層を中心に年々増える一方とのことだが、ぜひ本書が広く読まれるようになり、違法薬物へ気軽な気持ちで手を出さないよう、歯止めとなる事を強く期待する。

  • 麻薬取締官は全国でたった300人で、その65%が薬剤師とは知りませんでした。少なすぎ⁉

  • 自分の身近な場所でブツのやり取りが行われていたことに驚きとともに恐怖を感じた。

    大麻合法化が喧伝されている今、果たして合法化することによってどこが「得」してどこが「損」するのか、そこを整理しながら社会的に最善(妥協かもしれないが...)の落とし所を見つけなければならないと思わせる本だった。
    難しい...

  • 薬物についての過去から現在について勉強になった。
    昨年、オランダに行き大麻を吸ってから合成カンナビノイドについて調べることがあった。
    幸い、日本で大麻や合成カンナビノイドを使用するほど中毒に陥らなかった。個人的には大麻の依存性はあまり高くないんじゃないか?と思い、海外の文献を調べた結果やはりそうだった。依存という観点では、アルコールやタバコ、カフェインよりも低いことが科学的に証明されていた。だからと言って推奨するものではないが、日本において大麻の医療研究はすべきだなとは思う。
    まとまりのない文章になってしまいましたが、危険ドラッグの全滅。素晴らしいと思います。
    また時がきたら読みたい。

  • 20221031

  • 普段はまったく知らない世界のプロの仕事を垣間見ることのできる本。
    巧妙な犯罪組織のやり口と、それを追うマトリの悩みがリアル。

  • つい最近、地元の大学生が数人で大麻パーティーを開催し、見事に捕まりました。
    大麻の栽培と聞いてちょっと検索してみましたが、親切丁寧に教えてもらえました。しばらく犯罪の片棒を担いだようで、落ち着きませんでした。

    私はクスリはやっていませんが、私の隣にいる人に確認をしたことはありません。ネットの普及とともに、そういう世界も広がったのだと実感しました。

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著者プロフィール

1956年、福岡県生まれ。明治薬科大学薬学部卒業後、80年に厚生省麻薬取締官事務所(通称:マトリ)に入所。薬物犯罪捜査の第一線で活躍し、九州部長などを歴任。2014年に関東信越厚生局麻薬取締部部長に就任し、18年3月に退官する。13年、15年に人事院総裁賞受賞。著書に『マトリ 厚労省麻薬取締官』『スマホで薬物を買う子どもたち』(ともに新潮新書)がある。

「2023年 『ナルコスの戦後史 ドラッグが繋ぐ金と暴力の世界地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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