山本周五郎長篇小説全集 7 赤ひげ診療譚・おたふく物語

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (482ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106440472

作品紹介・あらすじ

たとえ、それが徒労だとしても――。「脚注」で、さらに深まる物語の味わい。心ならずも養生所の見習医となった保本登は、“赤髯”と呼ばれる医長の強引さに反発し療養施設での医療に戸惑う。しかし、一見乱暴な言動の裏に秘められた赤髯の信念を知りしだいに真実を見る眼を開かれていく……。黒澤明監督による映画化でも知られる医療小説の最高峰! 下町人情が胸に沁みる『おたふく物語』を併録。

感想・レビュー・書評

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  • 2006年に読んだ本を再読。
    今年の9月に、朝日新聞の「悩みのるつぼ」で、非行少年の社会復帰の仕事をしている24歳の男性が、「やりなおしがきく社会を作りたい、ハンディキャップを背負った人たちの支えになりたいと思っていた入社当時の自分と現在の自分がかけはなれてしまった」という悩みを相談されていた。
    回答者である経済学者の金子勝さんが、山本周五郎の「赤ひげ診療譚」をあげておられ、もう一度読み直したくなった。

    前回の自分の書評も「すばらしい本だった。読めてよかった」であったが、当時はこの物語を保本の視点で読んでおり、保本の成長していく姿に感動していたと思う。
    この9年間に自分もいろいろ経験し。世の中のことも当時よりは広く知ることができたからか、前回より深く味わうことができた。
    貧困、無知、貧困の世代連鎖、虐待・・江戸時代の特別なことではなく、現代の社会も変わっていない。赤ひげの姿勢は現代の社会福祉にも通じると思った。

    〝人間のすることはいろいろな面がある。暇に見えて効果のある仕事もあり、徒労のように見えながら、それを持続し積み重ねることによって効果があらわれる仕事もある。おれの考えること、して来たことは徒労かもしれないが、おれは自分の一生を徒労にうちこんでもいいと信じている。” 

  • ふと図書館で、「山本周五郎賞の山本周五郎ってどんな小説を書いているんだろう?」と疑問に思い、借りた一冊。『赤ひげ診療譚』が黒澤監督の『赤ひげ』の原作だとも知らず…。

    連作短編。解説にもあるように、小さい謎解きと大きな謎解きがとても上手で次々読みたくなる。言葉の古さもさほど気にならない。

    主人公の若い男性が、赤ひげ(診療所の医長)や患者とふれあううちに、成長していく。特にラストの八章で苦難の道を選ぶ主人公に感動した。

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著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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