- Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106468025
感想・レビュー・書評
-
ああ、星野さんは、やっぱりアラスカを帰る場所と定めたんだ。
ある夏の夕暮れ、シロトウヒ、アスペン、そしてシラカバの木が混じった、小高い丘の上の森。
ハイブッシュクランベリーの灌木を分け入ると、夏草の匂い。ヤナギランがピンクの花を咲かせ、ゴゼンタチバナが白い花をいっぱいに広げる。
ゆるやかな風が星野さんの頬を撫でている。
いつしか星野さんは、アラスカに存在する生命あるものだけでなく、山や川、風さえも自分と親しいつながりをもちはじめたことに気づく。
それだけにとどまらず、その近さはまた、遠い過去の時間へも延びてゆく。
ゴールドラッシュの夢に憑かれ、この北の果てにやってきたさまざま人々。まだ薄明のアラスカに、北へ北へと船を進めた、北極探検史上の人々……無数の人々がこのアラスカの自然と関わりながら夢破れ、挫折し、また進んできた。
そして、この土地にずっと生きてきたエスキモーやアサバスカンインディアン(彼らさえもはるか昔、最後の氷河期で干上がったベーリング海を渡ってこの土地にやってきた)。
それらの遠い過去の出来事から切れ目のないつながりの果てに、今、自分がアラスカで呼吸しているのだと感じる。
その想いは、化石化した大昔の樹木の幹に手を触れたとき、無機質な地球の営みにまでも延びてゆく。
ずっと続いている時間の流れ。ゆっくりと動き続ける歴史のなかに自分は立っている……と、星野さんは思う。
「遠くへ行きたい」と願った旅人を、惹きつけてやまないアラスカの自然。その自然と向き合いながら生きる人々との出会いと別れ。
この土地で生きていくことを旅人が決心したのは、さだめられた運命だったのかもしれない。
いつの日か、旅人はアラスカへ帰る……こうなることはわかっていたのだから。
収録作品
●イニュニック❲生命❳──アラスカの原野を
旅する
●アラスカ風のような物語
●アラスカ──極北・生命の地図
●アークティック・オデッセイ─遥かなる
極北の記憶
コメントありがとうございます。
わたしが星野さんに興味を持ったのは、梨木香歩さんの「ピスタ...
コメントありがとうございます。
わたしが星野さんに興味を持ったのは、梨木香歩さんの「ピスタチオ」からです。
あの星野さんの表紙の写真がどうしても忘れられなくて……
梨木さんの「ピスタチオ」の世界観と、星野さんの「大きな視点」が、どこかで繋がっている感じがしました。
わたしは今更ながらの出会いになってしまいましたが、星野さんの写真や文章に子どもの頃に出会えるなんて本当に幸せだと思います。
エッセイに何度も出てくる、星野さんが大切にされた古典作品の「極北の動物誌」。
星野さんの著書が、誰かの「極北の動物誌」となるんだろうなと思います。
それは、未来の冒険家や写真家だけでなく、わたしのようなおばちゃんにまで胸が熱くなるものを届けてくれるのですから 笑
長々と失礼しました。
星野さんの表紙の写真は梨木さんの「水辺にて」でした(>_<)
でも「ピ...
星野さんの表紙の写真は梨木さんの「水辺にて」でした(>_<)
でも「ピスタチオ」の世界観は、星野さんの世界に通じるんじゃないかとは、本当にそう思いました。。。
似てるから間違いますよね。
ああ、混同しているなぁと思いながら「そうだよねぇ」と妙に納得する自分がお...
似てるから間違いますよね。
ああ、混同しているなぁと思いながら「そうだよねぇ」と妙に納得する自分がおりました。
ホント、ピスタチオにとても近いものがあります。
しかし星野さんは文章がとても上手いですよね。魅入られるのも分かります。