- Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120004759
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Historicism(理論歴史学、とでも言うのが一番ちょうどいいのだろうか)を
論理的に打ち崩していくポパーの傑作。
正直、僕もポパーをちゃんと読むのが初めてというのもあるし
1回だけではどこまで理解できているかというと全然であるが
しかしそれでもなお本書の面白さはよくわかった。
Historicismの反自然主義的主張、および自然主義的主張の立場を
わざわざ一度整理してから、
それぞれに対しての批判を展開する。
このスキのなさが、ポパーの「批判思考の鋭さ」に繋がっている
気がする。
自然科学的な立ち位置を放棄したような「人文的」とでも言うべき
歴史思想をポパーは厳しく批判するとあわせて、
科学を「好き勝手に利用して説明をつける」いわばマルクスに代表される
社会主義的な歴史学にもまったく容赦はない。
じゃあ、ポパーは何ならいいんだ、と思っているのかというと、
別に何ならいいか、ということはほとんど書いていない(笑)。
要するに、筋道の立った批判(何ではないか)が大事だと
たぶんポパーは考えていたのではないかと思う。
未来を「確実性をもって予測できる」という妄想を、少なくとも
科学の名をもって扱おうとすることは、
ポパーは断じて許さない。
それは、まさにそれが社会主義の温床ともいうべき、そして数多くの
人々の不幸や死をもたらした原動因だと思っているからだろう。
しかしポパー自身がよくわかっているように、
人間は生物としての仕組みなのかと思うが、
そういうものを好む(人がけっこういいる)。
そういう連中に対しての批判のための武器を提供する。
多様性ある社会、未来なんて予測できないけれど、
自由かつ多様であることこそがそんな社会における重要な風土であると
考えるポパーにとっては、それがとても大事なのだろう。
哲学というと、基本的に何を言っているのかよくわからない
(難しい言葉を、勝手な解釈でいじくりまわして、
誰も入ってこれない世界を作り上げてインテリぶっている連中の遊び)
という印象が、正直僕にもけっこうあるのだが(笑)、
ポパーの思想、表現は、そんなことはなくて、
ちゃんと読めばそれなりに理解できるような明快さがある、と思う。
もっとポパーの著書を読まねばならないと思った。 -
歴史主義(=歴史には宿命があって、それを知ることで未来を予測することができる)という考え方は大きな誤りである、と論じた本。
論の要約はこうだ。
(1) 人間の歴史経過は、人間の知識の成長に大きく影響を受ける。
(2) 合理的(or科学的)に科学知識の成長を予測することは不可能だ。
(3) したがって、歴史の未来経過を予測不可能である。
(4) これは、理論歴史学の可能性がないことを示す。
(5) 歴史主義的な方法は無効であり、これにより歴史主義は消滅する。
なお、彼は長期的予測が不可能だと述べているのであって(本人がそう断っている)、短時間については言及していない。ただ、現在のITの普及、Googleの勃興などを考察するとその長期と言う言葉のスパンは短くなっているのかもしれない。それらはまさに科学的知識に依っているものである。
ミルやハイエク、その他にも多くの著作を通しての論考であること、また、"The Open Society and Its Enemies"を受けて書かれているので、知識が足りず大半の考察が理解できなかった。。今後読みなおそう。 -
読み応えあり。