将軍の庭: 浜離宮と幕末政治の風景 (中公叢書)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120032752

作品紹介・あらすじ

江戸の春、将軍の庭に遊ぶ人々。将軍とその一門、政府高官や京の公家たち。江戸宮廷の華やかな園遊会。江戸の秋、大坂で客死した将軍の棺が上陸する。庭を沈黙が支配し、待ち受ける政府面々を憂色がつつむ。将軍の庭だった浜離宮庭園-この場所と風景についた歴史の追憶。あるいは浜庭に交錯する政治と儀礼。よくもあしくも私たちの江戸があり、「始まりの終わり」の場所がある。

感想・レビュー・書評

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  • 江戸の春、将軍の庭に遊ぶ人々。将軍とその一門、政府高官や京の公家たち。江戸宮廷の華やかな園遊会。江戸の秋、大坂で客死した将軍の棺が上陸する。庭を沈黙が支配し、待ち受ける政府面々を憂色がつつむ。
    将軍の庭だった浜離宮庭園ーこの場所と風景についた歴史の追憶。あるいわ浜庭に交錯する政治と儀礼。よくもあしくも私たちの江戸があり、「始まりの終わりの場所がある」(2002年刊)
    ・浜庭のころ
    ・第一部 花の庭園
     其之一 最後の桜 浜御殿奉行
     其之二 宮廷の庭 浜御庭拝見
     其之三 奥と御成
    ・第二部 嵐の庭
     其之一 「芸術」の庭 黒船・砲術・電信機
     其之二 改革の庭   将軍家茂上洛始末
     其之三 「瓦解」の庭 内憂外患を過ぎて
    ・終わりの始まり

    時代は、将軍家斉から慶喜まで、浜御殿を舞台に徳川家の盛衰を語った本。徳川幕府の最盛期である家斉の時代から16年余りで黒船が来航、30年余りで幕府の瓦解を迎える。
    浜御殿の前身は、甲府家の屋敷であった浜屋敷であるという。家宣が将軍となったことから、将軍家の御殿となり気晴らしにふさわしい庭が誕生した。特に家斉は248回も御成しているほど浜庭遊興に熱中したという。単に将軍が遊んだだけではない。臣下を招待し恩恵を施すことにより、忠誠心を高める役割を担った。

    時代の変遷とともに、浜御殿も役割を変える。家定の時代には「西洋芸術」上覧の場となる。この場合の芸術とは、武士として嗜むべき武術・武芸の類であり、西洋砲術(江川太郎左衛門)や洋式軍艦(昇平丸)、電信機の作業実験などを上覧したという。
    家茂の時代、政局の舞台は京都となる。本書では、江戸を中心に事象が語られるが、京都の幕府上層部と、江戸の官僚機構という対立構造が面白い。家茂は、3度上洛しているが、幕府財政を圧迫させた事がわかる。
    最後の慶喜の時代、浜御殿は庭としての役割を終え、海軍庁舎建設の場となる。大阪から逃げ帰った慶喜が上陸した場所となったのには歴史の皮肉を感じる。

    参考文献一覧や索引があるのは良い。面白い本ではあるが、著者の主観も強く、エッセイに近い印象である。富士山丸をオランダから輸入したp214とするなど明らかな誤記(正しくは米国)があるのは残念であるが、幕末史を考える上で一読の価値があると思う。

  • ふと思って再度手にしてみたのだが、、、
    浜離宮だけで一冊の本を仕上げるという試み自体が至難の業だったか、こちらの期待とは全然違う内容に終始していた。
    また小説家じゃないから仕方ないだろうが、内容の展開にダイナミズムが感じられない。
    内容をすっかり忘れていたんですが、読んでいる内にそういえば前回も同じような感想をもったことを思い出してきた。
    ということで再読により新たな視野を開かされることは残念ながらありませんでした。

  • 浜離宮庭園の話。歴史的裏話とか、史料を読み解いたもの。買ったの、那覇っていうね。なんてこった(笑)。宮古島でレポートを書いたわけですが、浜離宮@汐留からは伺うことのできない、江戸時代の話が盛りだくさんな一冊。あそこ一帯、昔は将軍の領土だったのやって。皇居とか日本武道館の敷地、あんなところまで!ほか、様々な歴史的文化的背景を知ることができる一冊(111220)。

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著者プロフィール

1944年生まれ。東京大学法学部政治学科卒業。東京都立大学教授を経て、現在、國學院大学教授。専攻は行政学、日英近代政治。著書に『英国貴族と近代』(東京大学出版会)、『貴族の風景』(平凡社)、『王室・貴族・大衆』(中公新書)、『江戸は夢か』(ちくま学芸文庫)、『ラスキとその仲間』(中公叢書)、『日本の近代13 官僚の風貌』(中央公論新社)、『丸山眞男』(ちくま新書)などがある。

「2012年 『読書三酔』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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