高等教育の時代 下 - 大衆化大学の原像 (中公叢書)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120044892

作品紹介・あらすじ

入学難と就職難は深刻な課題を提起した。下巻では戦前期の社会・経済構造の変貌と関連づけて、高等教育の生々しい実態を克明に描くとともに、学制改革をめぐる様々な論議を詳細に検討し、今日につながる問題のルーツがこの時期にあることを明らかにする。

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  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB12123428

  • 歴史
    教育

  • 課題となった6章と終章を中心に精読。明治期の専門学校教員の資格は、博士と学士が基本。博士は今の「課程博士」はなく、第2次学位令下では、旧制の大学院卒業、博士会ないし総長による推薦博士と論文博士の4種だった。

    さらに文部省からの「指定」「認可」があれば教員にれる資格があるとの記述があった。他方最高等普通教育の機関である高等学校には、免許状制度がもうけられた。高等教育で括っても3種類で教員の任用資格が異なるのは興味深い。なお、昭和に入る頃になると、高校が増えるとともに、高校教員の需要も増えた。これに対応したのは帝大卒の学士が大多数だったとある。

    文部省の私立大学に対する監督の実状は、現代と比べてかなり厳しいものだという様子がページをめくるごとに伝わってきた。学長就任・教員採用は当時の「認可」事項だと聞いただけでも、事務の困難さが想像できる。

    よく話題になる教授会の自治は、意外にも新制大学施行後に醸成されたものだったという。戦前期は教授会の権限はかなり制約されていた。これは大きな発見だった。

    修論では、新制大学の学芸学部・文理学部等を取り上げる。
    旧制の中等教員養成問題がこれらの学部の源流にあることが学べたのは大きな収穫だった。旧制の文学部と理学部を合わせた文理科の単科大学は、素直に受け入れられず、師範大学の構想に発展した。しかしそれは帝大方面からの「無意味」という主張と、養成課程を持つ高等師範等からの反対にあった。

    また、大正3年の菊池大麓の「学芸大学校」案は改めて新鮮な気持ちで読めた。前作で詳細に説明されているが、今日の教養学部等の概念を、およそ100年前に日本人自身が提案していることに素直に驚いた。菊池の旧制高校と専門学校の一部を学芸大学校に改組するという考えは、今につながる戦後期の改革と重なる部分が大きい。

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著者プロフィール

1936年神奈川県生まれ。一橋大学経済学部・東京大学教育学部卒業。東京大学
大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。名古屋大学教育学部助教授、東京
大学教育学部教授、国立大学財務・経営センター研究部教授などを歴任。
東京大学名誉教授、教育学博士。
著 書 『試験の社会史』(東京大学出版会、1983年、サントリー学芸賞受賞;
     増補版、平凡社ライブラリー、2007年)
    『高等教育の日本的構造』(玉川大学出版部、1986年)
    『学歴の社会史』(新潮選書、1992年、平凡社ライブラリー、2005年)
    『日本の教育システム』(東京大学出版会、1996年)
    『日本の高等教育システム』(東京大学出版会、2003年)
    『教育と選抜の社会史』(ちくま学芸文庫、2006年)
    『大学の誕生』(上下、中公新書、2009年)
    『高等教育の時代』(上下、中公叢書、2013年)
    『新制大学の誕生』(上下、名古屋大学出版会、2016年)
    『帝国大学』(中公新書、2017年)他多数

「2019年 『新制大学の時代 日本的高等教育像の模索』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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