賢者の愛

著者 :
  • 中央公論新社
3.38
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本棚登録 : 810
感想 : 119
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120046865

作品紹介・あらすじ

初恋の人を奪った親友の息子に、『痴人の愛』から「直巳」と名付けた真由子。22歳年下の直巳を手塩に掛けて"調教"し-。憧れ、嫉妬、そして復讐。谷崎潤一郎賞作家がおくる、絢爛豪華な愛憎劇がここに!

感想・レビュー・書評

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  • 山田詠美はやっぱり山田詠美だ。
    エロが全然出て来ない作品を読んで感激したからといって騙されちゃいけない。
    山田詠美は苦手で(だと思っていて)、多くを語れないけれどこの作品は本領発揮と言ったところか。
    しかも「痴人の愛」のオマージュらしいけれど、本家を読んでいないから益々レビューが難しい。

    年下の男を育て上げる「痴人の愛」の逆バージョンと言うより、むしろ女友達への復讐劇と言った方がしっくりくる。
    この突飛な展開。常識も倫理観も関係ない。
    執念、怨念、そして愚かさ。
    愚かな女たちと愚かな男たちの人間模様。

    繊細な内面を丁寧に描写したちまちました最近の女性作家とは一線を画すこの作品。
    (ちまちました作品、大好きです)
    うん、いいわー。エイミーじゃなきゃ書けないよね。

    でも正直ちょっと苦手・・・。
    主人公の憧れる対象は知的な男性なのに、育てた男はガテン系。パターンだ(笑)
    今時の草食系男子だったりしたら面白いのに。

    山田詠美、懲りずにまた読みます。

    • 夢で逢えたら...さん
      vilureefさん、こんにちは♪
      私も山田詠美はエロのイメージしかなくて、あまり読まなかったのですが、この作品で好きになり、
      新たに2...
      vilureefさん、こんにちは♪
      私も山田詠美はエロのイメージしかなくて、あまり読まなかったのですが、この作品で好きになり、
      新たに2冊購入しました(まだ積読ですが)。
      ところで、少し前からなぜかvilureefさんのレビューがタイムラインに出て来なくなり、
      ホームに訪ねて行って拝見している次第です。
      システムの不具合だと思いますが、
      いつも楽しみにしているレビュアーさんなので不便です。

      2015/03/30
    • 夢で逢えたら...さん
      わざわざコメント書き込みに来て下さり、有難うございますm(_ _)m
      やはり皆さんそうなんですね。本当に本当に面倒になってしまいました。
      ...
      わざわざコメント書き込みに来て下さり、有難うございますm(_ _)m
      やはり皆さんそうなんですね。本当に本当に面倒になってしまいました。
      問合せしても解決できないのなら、諦めるしかなさそうですね。

      当たりかハズレかどちらかで、普通がない作家さんいますよね〜。
      積読本は吉と出るか凶とでるか?楽しみです。
      ともあれ、(おこがましいですが)ノーマークだった作家さんの才能の片鱗を発見できた時は嬉しいですね。
      2015/03/31
  • 谷崎潤一郎の「痴人の恋」の男女逆転版という事で「賢者の愛」なのか。とても目が離せなくて、続きが読みたい!という気持ちが抑えられず、でもじっくりと読みたくて時間をかけて一気に読みました。

    主人公真由子は、幼馴染の百合と初恋の人諒一の間に出来た息子直己を自分好みの男に育て上げる。

    でもあくまでも二人の関係は秘密だし、体を重ねたのも一度しかない。それでも直己は子供が母を慕うように女としての真由子を求める。真由子はそんな直己を見てほくそ笑む。自分の父親と関係を持ち自殺にまで追い込んだ「ちょうだいお化け」の百合への復讐として。

    40も過ぎて自分のことを「ユリ」と呼ぶ百合が空恐ろしい。真由子が彼女を「ちょうだいお化け」と呼んだ気持ちがわかる。

    そして、直己と真由子の関係を知った百合は真由子の飛ばす車のハンドルを突然握り事故を起こして逝ってしまう。まるで「マユちゃんにはなにもあげない」というように。

    真由子はその事故が原因で生ける屍となってしまう。
    隣に寄り添う直己がいじらしい。何度失恋すると分かっていても真由子の前で他の女の子と交わう。

    各章の扉絵になっている丸尾末廣さんの絵もいいですね。
    この本を読む時はじっくりと時間をかけて味わい尽くすことをお勧めします。

  • 山田詠美さんの作品の『蝶々の纏足』を思い出しながら読んだ。同じような設定の『蝶々の纏足』ではお互いに意識しないではいられない様子をある種の清涼感を持って読んだ気がする…。

    今回の『賢者の愛』だが、良い意味でも悪い意味でも時間の流れを感じた。山田詠美さんの作品に出てくる、ボロボロのジーンズをかっこよく履く事や、校則を守らないような子が哲学書を読むといった事をかっこいいとした当時の価値観が今やあたり前になってしまった。


    そして知ってしまった。
    単純な真面目さに対して面白みがないとするのは多様性を認めろと言っている側こそが多様性を認めていなかったことに…。

    ひなびた海辺の宿の良さは高級ホテルのそれとは違うベクトルにあって
    そこにいる美意識をわざわざ書く必要はないのです。

    当時の価値観を引きずって、舞台を現代としているところに違和感を感じた。

    とは言っても山田詠美さんはやはり山田詠美さんだなーと思った。
    面白いとかどうとかより上手いとしか言いようがない。

    本作は痴人の愛と対比させているとのことらしい。

    痴人の愛ではナオミに翻弄される主人公が幸せそうで羨ましく思った。
    だが、本書では直巳への行為に対して羨ましく思えるところが全くなかった。

    翻弄されるのが痴人であるなら、服従させるのが賢者なのだろうか…。

    主人公が服従させたかったのは百合子であったとしたのなら羨ましく思えなかった事も腑に落ちる。

  • 自分を愛してくれた父親と、初恋の人を奪われた親友に復讐するお話。
    その復讐の仕方がすごく怖い。
    初恋の人と結婚した親友が生んだ男の子を、オスとして自分好みに調教し、
    心身ともに自分なしでは生きて行けないように育て上げるのです。
    ひゃ〜!こんな恐ろしいことある?母親にとっては地獄の苦しみでしょう。
    まぁ、父と恋人の奪われ方も、女の武器を恥ずかしげもなく使ったひどいやり方だったから、
    目には目をってやつですね。

    "今日、直巳は二十三になりました。そして真由子は、じきに四十五歳の誕生日
    を迎えます。時のたつのは速いものだ、と彼女は深い溜息をついてしまいますが
    まだ少しもこの可愛い年下の男に飽いてはいないのでした"

    冒頭のたった3センテンスで、主人公の女が年下の男を
    玩具のように弄ぶ関係性が明らかに。上手いですねぇ。
    どす黒い沼にずぶずぶ沈んで行く感覚。でもなぜか止められなくていっき読み。
    「籠の鳥」を育てた真由子だったが、皮肉にも自分自身が「籠の鳥」になるという、
    アイロニックなエンディングが最高!
    これ、谷崎潤一郎「痴人の愛」のオマージュらしいです。
    とても気になるので、ぜひ読み比べてみたい。

    • vilureefさん
      こんにちは♪

      私のレビューに花丸&コメントありがとうございました(*^_^*)
      そう!そうなんですよ。
      昨年末位からでしょうか、ブ...
      こんにちは♪

      私のレビューに花丸&コメントありがとうございました(*^_^*)
      そう!そうなんですよ。
      昨年末位からでしょうか、ブクログおかしいんですよ!!
      タイムラインにフォロアーさんのレビューが抜け落ちるようになりましたよね。
      私、数ヶ月も前に運営サイドに問い合わせしたのですが、キャッシュをクリアしてみてくださいなどのお答え・・・。
      他のお仲間さんもやはり同じ現象のようなのでこれはどう考えてもシステムの不具合ですよね(-_-;)
      早く改善してほしい!!
      というわけで、いつもなら私のレビューにお返事を書くところですがこちらにお邪魔しました。

      山田詠美、ハマる時と全然ダメな時の落差が激しく評価が難しい・・・。
      今回は微妙だったかなぁ。
      夢で逢えたら...さんは違う評価だったんですね。ふふふ、面白いな~。
      人によって作品の評価って全然違ってきますよね(*^_^*)
      積読の作品のレビューも楽しみにしていますね。

      私最近ちょっとスランプ気味でなかなか読書に身が入りません。
      レビューのアップのんびりやっていきますので、また覗きに来てくださいね(^_-)-☆
      2015/03/31
  • 「痴人の愛」はナオミという美しい養女を自分好みの女に調教していく中年男の話でしたが、 「賢者の愛」は愛した男性を奪った親友への復讐に生きる女性・真由子の物語です。 親友の息子に「痴人の愛」の主人公と同じ直巳(ナオミ)という名前を付け、 女としての魅力をふり撒いて幼いころから直巳の心を手玉に取り、 調教することによってじわじわと親友への復讐を果たしていく20数年を描きます。


  • 真由ちゃんが知的で妖美で本当に好き。綺麗。
    綺麗なのに、汚れていく姿が見てられなかった。
    直巳お前は、いい男になれよ…。お願いだから…。
    真由ちゃんに一生寄り添ってあげておくれ〜。 

    涼兄さまは、ほんまにぶん殴りたいぐらい…!
    女のゴミ箱みたいな男笑笑
    百合は永遠に嫌い。自分の友達にこんな頂戴おばけおったら苦しすぎる。
    真由ちゃんよく頑張ったよね( ᵕ_ᵕ̩̩ )

    言葉遣いも綺麗で、美しかった…。
    下品なところもあったけど、上品さと混じっていい具合になってたし、色気を知れた。

    頸は心と心が通う場所やねんて。覚えとこうな。

  • 婦人公論連載時に読みました。
    多分自分は、連載だから読み続けられたのであってこれが一冊になってからだと手に取らなかっただろう小説。

    グロテスクな話です。けれどこういう話を書いたら本当に詠美さんは上手だなぁ、とつくづく感じ入ります。

    嫌な話だよと思いながらもぐいぐい読まされてしまうこの文体は、話し言葉調で優しいタッチに釣られているうちに思いもよらない細かい心理の襞に入り込まされてしまいます。いやぁ、怖いわ詠美さんの文章。
    こういう文体でこういう話を綴るというのはかなりの力量が必要と思います。物書きの人なら誰でもができるというワザではないでしょう。

    詠美さんの書く話、好きではないものが多いと思うのに読まされてしまうことが結構あります。
    話そのものを味わうと言うより、文体や構成を味わう、というつもりで読んだならハイレベルの一冊だと思います。

  • ユリにちょっと図々しいと思いつつも、隣にいて、いつの間にか大切な人を奪われていってしまう。自分が真由子の立場だったらと読み進めていくとぞっとします。
    真由子がユリと大して確執がなければ直巳ともどうともならなかったのかな(;^_^
    個人的には秀美君が出てきたのが嬉しかったなぁ(^o^)
    あと、リョウ兄さまにはがっかり~_~;ユリに同情はできないけど、再婚しちゃったか…。

  • 往年?の著者の作風と、何だか違う気がする。ちょっと、読み物臭が強いけど、滑らかな筆致でグイグイ引っ張られて読了。途中いくつも仕掛けがあり、驚かされる。読後、特に心に何かは残らない。上質なエンターテイメント、2時間もののサスペンステレビドラマになりそう。

  • 歪んだ愛。その一言で片付けられそうな関係がある。でも歪んでいない愛なんてあるのだろうか?人が誰かを自分のものにしたいと思う時、その理由がただ純粋な愛情だとは限らない。寂しさを紛らわすためであったり、優越感を持つためであったり、復讐であったりする場合もあるだろう。

    谷崎潤一郎の「痴人の愛」を下敷きに書かれたというこの小説。愛によって築きあげられ、そして壊されていく運命が描かれています。それを幸せと思うか不幸と思うかは読む人によると思う。私は主人公のマユは最後は幸せだったと思う。

    マユが「親友」ユリの息子、直巳を自分好みの良い男に育てていく過程は興味深かった。世の中のいわゆるイイ男の中には直巳のように年上の女性に手ほどきを受けた人が少なくないんじゃないかしら。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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