たそがれてゆく子さん (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.76
  • (9)
  • (24)
  • (20)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 189
感想 : 24
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120051111

作品紹介・あらすじ

夫のER入院、新しい犬、原始人ダイエット、夢にみた専業詩人の生活……『閉経記』から五年、老いゆくあたしの「今」をつづる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 伊藤比呂美のエッセイ「春憂ひならばどしどし詩を書きな。」【ショローの女】|人間関係|婦人公論.jp
    https://fujinkoron.jp/articles/-/3591

    『たそがれてゆく子さん』新人の老人の心得を学ぶ - HONZ
    https://honz.jp/articles/-/44993

    たそがれてゆく子さん|単行本|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/tanko/2018/08/005111.html

  • 自分はそうなれないものだから、キッパリ潔い生き方をする人に憧れる。その代表が伊藤比呂美さんだ。少しだけ年上である伊藤さんの書くものからは、子どもを育てていた頃も、中年を迎えた頃も、ずっと自分の芯となるようなものをくみ取ってきたように思う。著作の一つに「女の一生」というのがあるが、まさにその通り、「女」の一生の問題である恋愛やら子どもやら親との関係やらについて、いつもラディカル(根源的)に、かつ実感をもって語る姿勢を信頼してきた。

    そして今回は「自分の老い」である。うーん、来ましたね。自分もそろそろそのとば口にさしかかってきたなあと思う今日この頃。どう老いに向かっていくか、切実な問題になってきた。巷にあふれる「いつまでも若々しく」「美しく老いる」なんて掛け声にはケッと思うが、じゃあどう身を処していくか、なかなか難しい。

    伊藤さんも「思いも寄らないことが起こる」と嘆いている。これまでだって思いも寄らないことはたくさんあり、「おたおたしながらもそれを切り抜けてきたわけだ。今回もなんとか切り抜けてはいく、でも切り抜けたら、そこは死だ。そこが、ちょっと今までと違う」とあって、ほんとにねえと思う。その違いは大きいなあ。

    それでも、「あたしのことだから、もう数年くらいしたら、これも自分なりの生き方を見つけて楽しむと思うのだ」ともあって、ああ、やっぱり先輩は頼もしい。

  • 夫が亡くなった後の自由と寂しさ。
    トメちゃんが結婚する年になったのか....。

  • 私よりも18歳年上の伊藤さん。彼女の本を読むたびに、私の人生がこれからどうなるかをリアルに想像する。そして、どう生きるべきなのか、重要な指針を得る。

    今度は、親やパートナーの介護、看取り、そして、子どもが独立した後の一人暮らし。

    子どもを産んだあたりから看取りまで、大忙しな女の人生。生きてるって何だろうなと思うけれど、彼女の悟りは

    「あたしはあたし(あなたはあなた)」

    だそう。

    私も大忙しの中で、色々な物事に振り回されつつ、自分がやりたいことを追求してよいのかな、って思った。

    精一杯、体当たりな彼女が、こうやって自分の思うところを惜しみなく晒してくれることに感謝。これがなければ、私はもっと迷いながら生きていくことになっただろう。

  • 私はまだ親も看取らず、犬も看取らず、もちろん夫も看取れず、まだ更年期にあえいでいる。

    比呂美さん、先を歩いてくれて、ありがとう!
    私もしっかりと、たそがれてゆく子さんになります。

    作中で漢たちよ!と呼びかけられたら、
    ハイそうです!と答えてた。
    そうですそうですその通りなのです。

  • "夫のことは、死んじまえと何回何十回思ったかわからない。でもほんとに死んじゃったら、これがぽっかりと空虚なんだ。"
    "生きているうちに大切にしとけということではない。まったくそういうことではない。
    自分が生き延びるほうが優先事項だ。相手の言うままずるずると生きていったら、自分の人生なんかゴウもなくなる。相手のことなんか足蹴にして生きていいのだ。
    それでも、死なれると、ただ、寂しい。"(p.59)


    "ああ、食べるって、ただおなかを満たすだけじゃない。人との関わりだ。つながりだ。仏教でいったら縁起なのだ。"(p.63)


    "父が死に、夫が死んで、もうだれもあたしを怒鳴らない。
    平穏である。
    もう二度といやだ。怒鳴られるのは。"(p.89)


    "でも今は、捨てたい捨てたい捨てたい。捨て身で捨てたい。捨てきりたい。こう思うのは、もう捨てて困るものが何もないからかも。"(p.113)

  • ”道行きや”を先に読んだけど、順番からいったらこっちが先だった。
    夫はがこのエッセイの途中で亡くなる。
    アメリカ人の画家で籍は入れてなかったんだね。
    カノコとサラは前夫との子で、トメは今の夫との子なのね。
    全員が結婚し、同郷の朋友、石牟礼道子さんも亡くなり、
    両親亡き、故郷の熊本にクレイマーと帰って週イチで早稲田大学の講師を(その時は親友の枝元なほみ氏のとこに泊まるらしい。)勤めることになったとこで終わる。
    年齢的に私の約10こ上で、体のこととか周りの環境の変化とかすごく参考になる。
    50代は楽しかったとある。コロナ禍であまり自由にとはいかないけど、いろいろ楽しもうっと。

  • 2019/03/13

  • 60歳を超え生活意識や世界観も変わってくる。若かった頃を懐かしむことはあっても、今を楽しみながらの振り返りであることに勇気をもらえる。

  • 育児エッセイ「良いおっぱい悪いおっぱい」で有名な伊藤 比呂美さんも63歳。
    時の流れの速さにただただ驚かされます。

    本作には55のエッセイが収録されています。
    両親と夫を見送り、娘さん達はそれぞれ独立し一人になった伊藤さん
    文中からは優しさ、温かさ、切なさ、寂しさ、空しさ、等
    様々な感情が伝わって来ます。

    老いへのカウントダウンさえありのまま自然体で語る様子には潔さの様な物まで感じます。
    末っ子であるトメちゃんのお話し「トメの結婚」はお人柄が良く出ていてうるうるさせられました。

    たそがれながらも前向きな伊藤さんに少しの元気と勇気を貰える1冊。

全24件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

伊藤比呂美
1955年、東京都生まれ。詩人。78年に現代詩手帖賞を受賞してデビュー。80年代の女性詩人ブームをリードし、『良いおっぱい 悪いおっぱい』にはじまる一連のシリーズで「育児エッセイ」という分野を開拓。「女の生」に寄り添い、独自の文学に昇華する創作姿勢が共感を呼び、人生相談の回答者としても長年の支持を得る。米国・カリフォルニアと熊本を往復しながら活動を続け、介護や老い、死を見つめた『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』(萩原朔太郎賞、紫式部文学賞受賞)『犬心』『閉経記』『父の生きる』、お経の現代語訳に取り組んだ『読み解き「般若心経」』『たどたどしく声に出して読む歎異抄』を刊行。2018年より熊本に拠点を移す。その他の著書に『切腹考』『たそがれてゆく子さん』『道行きや』などがある。

「2022年 『伊藤ふきげん製作所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

伊藤比呂美の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×