「作戦」とは何か-戦略・戦術を活かす技術

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120051609

作品紹介・あらすじ

「作戦」とは戦略とも戦術とも異なる、両者をつなぐ概念であり、現在、軍事専門家に最も重視される位置にある。この言葉を最初に現代戦に持ち込んだのはヘルムート・モルトケで、用語として使用されるようになったのは、比較的新しい。「作戦」の起源からその歴史をたどったうえで、現在論議されている主要な「作戦」の三事例を取り上げ、意義と特性を考察する。

序論 ポスト冷戦時代における「作戦」の特色―「軍隊行動の三レベル」  
第一部 「作戦」の起源
第1章 「作戦」のない軍隊運用―絶対君主時代の戦闘回避主義
第2章 「大戦術」の開発とナポレオン戦争
第3章 ジョミニとアメリカ南北戦争
第4章 クラウゼヴィッツの戦略とモルトケの「作戦」

第二部 冷戦期までの「作戦」
第5章 米軍の消耗戦方式―封印された「作戦」の概念
第6章 ソ連軍の縦深「作戦」
第7章 フラーとハートの士気喪失「作戦」

第三部 ポスト冷戦時代の「作戦」
第8章 「緊要で、脆弱な『重心』」の追求 
第9章 「影響」重視の考え方
第10章 複雑な「問題」と「システミック『作戦』デザイン」 

おわりに


用語解説

感想・レビュー・書評

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  • 自身が、軍事に関わる者では無いので、内容そのものへのとっかかりという点で、当然難しいものであり、また、単語も極めて似通ったものを別の意味に定義していたりと、読み進めるのになかなか手強い作品だった。最後まとめ的な第十章は、一般のビジネスなどでも、答えの見出せない課題に直面した時の考え方の一つとして応用できるとも思う。

  • ●作戦、戦略、戦術は何が違うか。

    【感想】
    ●歴史上の戦略家が解釈してきた用語と考え方について、年代毎にまとめられており読みやすくなっている。
    ●本書で述べる作戦はあくまでも軍事用語としての作戦であり、一般的に使える場面は少ないと思うが、自分なりに状況を置き換えて考えればよいかもしれない。

  • 戦略と戦術のレベルの間の作戦という用語が使われるようになったのはここ数十年のことらしい。
    過去の戦争で○○作戦と呼んだ計画は、あくまでも戦術レベルの話だと述べている。
    国家の方針であるような戦略、1回の戦いに向けた戦術、その間には、複数の戦術を束ね、かつては大戦略と呼ばれたような複数の戦闘などの行動がある。それが作戦であると述べている。

  • 軍隊行動における戦略と戦術をつなぐ「中間管理職」的な役割を担う「作戦」という概念レベルについて、その歴史的発展経緯と最新の動向を整理した本。

    作戦という言葉は、個別の戦闘行為におけるオペレーションではなく、複数の戦闘、複数の戦場とその間をつなぐ軍隊機動や兵站も含めた領域を対象とする。

    戦略が国家のレベルで外交、軍事を含む領域を対象とした目標の設定であり、戦術が個々の戦闘にどのように対処するかという問題設定に対する概念であるのと比べ、作戦が対象とする領域は、それらをつなぐ大切な役割である。

    しかし、戦闘の規模が大規模ではなく、各々の戦闘が比較的独立して行われていた時代には、この概念がフォーカスされることはあまりなかった。そのために、作戦という概念は比較的新しい概念である。

    本書では、ナポレオン戦争の分析を基にしたクラウゼヴィッツの作戦論や、その後のプロイセンで活躍したモルトケの作戦論、そして冷戦時代の米ソの作戦概念や戦闘における圧倒よりも最小限の戦闘で目標を達成するということに重点を置いたイギリスのリデル・ハートの士気喪失作戦などを取り上げながら、その展開を開設している。

    さらに興味深かったのは、現代の作戦の概念において「システミック作戦デザイン」という概念が登場しているということである。

    対テロ作戦や内戦といった非対称の敵に対する作戦が求められる現代の軍事オペレーションでは、作戦の目標自体を常に動的に検証・再構成しながら進めていくことが想定されている。

    そのため、作戦環境の認識、「問題」の設定、「問題」解決の態勢が重視される。そして、暫定的な目標を設定し、それに対する作戦のデザインと実施をフィードバックすることで、次の目標の設定に進んでいく。

    このプロセスにおいては、従来の参謀本部による作戦立案ではなく、作戦司令官自身がデザイン・チームとの対話を積み重ねながら作戦の形成を進めていく。また、作戦のデザイン・チームは軍事的な要素だけではなく、作戦領域における文化・経済などの知識も必要とされるため、デザイン・チームには学者、行政官、NPO、現地の住民代表なども含まれてくるという。

    実際にこのような作戦のプロセスが現場でどの程度行われているのかはわからないが、対テロ作戦のような「複雑な」問題に対するアプローチとしては理解できる。

    また、軍事作戦だけでなく経営の面での作戦である「事業計画」においても、同様の環境が出現しているといえ、このシステミック作戦デザインの考え方は、ある程度参考になるのではないかと感じた。

  • 「作戦」とは戦略とも戦術とも異なる、両者をつなぐ概念で、現在軍事専門家に最も重視される。その歴史を辿り、意義と特性を考察する

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著者プロフィール

中村好寿一九四三年(昭和一八年)、広島県三次市に生まれる。防衛大学校卒業。防衛大学校助教授、米国国防大学客員研究員、陸上自衛隊東北方面総監部幕僚、ジョージア工科大学客員教授、防衛研究所主任研究員を経て、退官。現在、軍事アナリスト。著書に『抑止力を越えて―2020年の軍事力』『軍事革命(RMA) : が戦争を変える』『ビジネスに活かす! 最新・米軍式意思決定の技術』『「作戦」とは何か : 戦略・戦術を活かす技術』など多数。共訳にクラウス・クノール著『国際関係におけるパワーと経済』。

「2023年 『制限戦争指導論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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