- Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120051906
感想・レビュー・書評
-
螺旋プロジェクトの一作。歴史物はあまり読まないけど、知ってる人物が出てくると少しワクワクする。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
螺旋プロジェクトの1冊として読むから読めるし、本自体が読めないほどつまらないわけではないが…。
これだけ出されたら正直微妙かと思う。 -
平将門の乱から西南戦争までの武士の戦いを海族と山族の対立という視点で描く。平氏は海族、源氏は山族である。南北朝時代になると源氏の足利尊氏は山族、楠木正成は海族である。確かに血筋で言えば足利氏は源氏であるが、尊氏の国家構想は海族と親和性がある。
尊氏は一度九州に落ち延びて巻き返している。関東に本拠があった尊氏が京の戦いで敗れて九州に落ち延びることは戦略的でないように感じるが、建武元年(一三三四年)に足利尊氏は九州の軍事指揮権を掌握していた。たとえば日向国と薩摩国についての島津貞久宛の綸旨を尊氏が施行していた。それ以前の六波羅探題を攻撃した時点で尊氏は薩摩国などに自分の名前で幕府討伐の督促状を出していた。倒幕時点で九州を見据えていた。尊氏の九州行きは追い詰められて逃げられるところに逃げたというよりは勝算があった。
尊氏には経済的な視点もあった。「京で大敗を喫した尊氏が九州を目指したのは慧眼だった。博多には、大陸から持ち込まれた莫大な銭がある。それを手中に収めれば、軍資金には事欠かないばかりか、京周辺の物と銭の流れを滞らせることにもなるのだ」(天野純希『もののふの国』中央公論新社、2019年、155頁)
尊氏が播磨国室津から九州に落ち延びることができたのも瀬戸内の制海権を尊氏が握っていたためである。いくら新田義貞や北畠顕家が陸に戦いで勝利しても、海にまで追いかけることはできなかった。
後醍醐天皇の倒幕運動は元々、農本主義的な領地経営に収まらない悪党に支持されたものであった。そこには水運業者や海賊も含まれていた。しかし、彼らも建武の新政に失望し、尊氏に期待するようになった。
建武式目では幕府を京都に置くか鎌倉に置くかが議論された。「居所の興廃は政道の善悪によるべし」と、政治の善し悪しは場所の善し悪しではないと主張する。「どこでもよい」という結論であるが、鎌倉が武家政権の中心地という固定観念がある中で「どこでもよい」は京都への追い風になる。京都で幕府を開いた理由は南朝と戦うために京都を離れられないという消極的理由があった。しかし、西国の中心である京都の経済力を重視したという積極的理由もある。尊氏は九州に落ち延びて勢力を挽回するという離れ業を成し遂げている。そこでは博多から瀬戸内の水運も勢力下に置いている。
尊氏は平清盛の国家構想に近い。尊氏が平氏の子孫である執権北条氏の鎌倉幕府を滅ぼし、室町幕府を開いたことは源平交代説で捉えられる。しかし、農業と商業、陸と海という価値観では平氏政権と室町幕府は親和性があり、鎌倉幕府と対立する。これは血筋では説明できない尊氏の個性である。弟の直義は鎌倉幕府の継承という政治感覚が強く、観応の擾乱は政治路線の対立という面があった。 -
平将門、源頼朝、平教経、足利高氏、楠木正成、足利義満、明智光秀、徳川家康、天海、大塩平八郎、土方歳三、西郷隆盛。
延々と続いてきたもののふ達の魂の叫びを、一風変わった形での連作短編集にて描く。 -
【推薦コメント】
山族と海族の争いを描いたシリーズの中の一作。武士の起こりから、武士の終焉までの流れが分かる上に、なぜ人々から争いがなくならないのか考えさせられる作品。
(生命環境科学研究科 M1)
【所蔵館】
総合図書館中百舌鳥
大阪府立大学図書館OPACへ↓
https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000952182