きしむ政治と科学 コロナ禍、尾身茂氏との対話 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120056772

作品紹介・あらすじ

福島第一原発事故、さかのぼれば薬害エイズ、水俣病……。専門家による政府への科学的助言はいつも空回りした。このコロナ禍でもまた、政治と科学(専門家)は幾度も衝突した。専門家はその責任感から、自らの役割を越えて「前のめり」に提言したこともあった。

専門家たちは何を考え、新型コロナに向き合ったのか。政治と科学の間には、どのようなせめぎ合いがあったのか。そして、コロナの教訓を新たな感染症の脅威にどう生かすのか……。

尾身茂・新型コロナウイルス感染症対策分科会長への計12回、24時間以上にわたるインタビューを通じ、政治と科学のあるべき関係を模索する。

感想・レビュー・書評

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  • 東2法経図・6F開架:498.6A/Ma34k//K

  •  専門家の位置づけ・責任が曖昧だというが、そもそも政治家の「政治責任」が曖昧なのだから、納得のいくような政治と科学の設計は難しいのではないかと感じた。

  • わずか3年前の話なのに、もうすっかり記憶があいまいになっているが、当時マスコミで報道されていた内容と、尾身氏がここで語っている内容がずいぶん違う気がする。こうして後から振り返ってみれば日本政府も分科会もうまくハンドリングできたように見える。
    ただいくつか重要な点への反省が欠けている。日本は島国なのだから初動で重要なのは入境管理なのだが、目先のインバウンド需要に目がくらんで春節で大量の中国人を受け入れ、あっという間に日本中にウイルスを広めてしまった。4月の入国制限は判断が遅すぎる。また元来日本の防疫は明治期からの結核対策がベースとなっている。結核のように濃厚接触でしか感染が広がらないのならクラスター対策も有効だが、コロナのように空気中で長く感染力を維持するウイルスではリンクを追えずやがて破綻する。いつまでもクラスター対策にしがみつき、限りある保健所のリソースを消耗したのも問題だろう。いずれも尾身氏自身に反省がないように見える。
    とは言っても、これらも後知恵でしかない。全体としては自らの責任権限の限界を正しく理解して当時としてはベストの対応をして下さったと思う。
    問題は政権の方だ。311の時には総理や官房長官の記者会見に原子力の専門家は同席しなかったと記憶しているが、なぜコロナは尾身氏を表舞台に引き出してしまったのだろう。震災当時の菅首相は東工大の応用物理卒業という点を考慮する必要があるものの、もうここからして安倍政権のダメさ加減がわかる。こういうことをするから政治と科学の関係があいまいになるのだ。政治家としての覚悟が最初から感じられない。文系政治家の科学リテラシーが上がらない限りは今後のパンデミックも危うい。

  • 政治学者と医療を専門とする新聞記者による尾身さんへの取材をまとめたもの。
    時系列で記載された部分は淡々と語られているが、その語り口はバランスをとり、特定の誰かを傷つけないように言葉を選んでいることが分かる。首相とともに会見に臨む尾身さんの言葉に自分自身が信頼を置いたのはそのような言葉遣いにもあるのだろう。
    終盤の章では、何度も今回の教訓に学んで欲しい、政治や社会が異なる海外の事例は参考にはならないとある。喉元過ぎれば・・は、お家芸のようにあるあるだ。まだ終わっていないコロナ、必ず来る次の感染症、感染症でなくても大災害などの危機管理。尾身さんのおっしゃるとおりだ。

  • 牧原教授による尾身氏へのインタビューをまとめた本。西浦教授の本もそうだったのだが、コミュニケーションについて予想以上に言及されていた。国によるリスクコミュニケーションの必要性と、日本の対策における情報効果の高さについて。

  • コロナ禍に計12回、24時間以上かけて行われた尾身茂会長のインタビュー記録から、政治と科学双方の課題を浮き彫りにする

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著者プロフィール

東京大学教授

「2021年 『日本政治史講義 通史と対話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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