ぼっちな食卓-限界家族と「個」の風景 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120056918

作品紹介・あらすじ

親も子も自分の好きな食べ物だけを用意する。朝昼晩の三食でなく、好きな時間に食べる。食卓に集まらず、好きな場所で食事をとる。「個人の自由」を最も大切な価値として突き詰めたとき、家族はどうなっていくのか――。少子化、児童虐待、ひきこもりなどの問題にも深くかかわる「個」が極大化した社会の現実を、20年に及ぶ綿密な食卓調査が映し出す。【目次より】序文にかえて――同じ家庭の10年後、20年後を追跡してみたら・・・第1部 あの家の子どもたち――かつての姿とその後の姿1 子どもが邪魔2 ベビーチェアの中から始まる「孤食」3 家に帰らない子、子どもを待たない親4 自由とお金と無干渉5 三男は私のペット6 させてあげる「お手伝い」とその結果第2部 やがて「破綻する夫婦」「孤立する祖父母」とその特徴7 10年後、5組に1組の夫婦が破綻8 破綻する夫婦と10年前の共通点9 子ども夫婦の破綻を招く「実家の支援」10 ダイニングテーブルに表れる家族の変化――「独りベッド飯」の夫たち11 同居老人より怖い「同居老人」の孤立と孤独12 祖父母世代は、まるで異星人13 あなたの親は私の他人――夫婦別「実家分担」第3部 「食と健康」をめぐる「通説」とシビアな「現実」14 健康障害は9割が伏せられる?15 健康管理は「自己責任」16 「共食」と「健康障害」の意外な関係第4部 「個」を尊重する家庭食とその影響17 家族共食を蝕むブラック部活とブラック企業18 家庭料理の変化と個化する家族19 同じ釜の飯より「個」の尊重20 食器に表れる家族の変化21 「子どもの意思の尊重」という子ども放置22 「リクエスト食」育ちの子どもたち――その後の姿第5部 誰もが「自分」は譲れない23 人に口出しされたくない24 お教室の変化――みんな「教える人」指向25 「私一人の時間」が欲しい26 「自分時間」を生きる家族たち27 「私」中心の呼称変化第6部 個化する家族――その後の明暗28 家庭の空洞化と「外ごと化」する家庭機能29 正論と現実のはざまに30 崩れなかった円満家庭とは調査概要あとがき

感想・レビュー・書評

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  •  なんとなく、図書館で気になった作品を読んでみました。「ぼっちな食卓」…なんとも、ショッキングなタイトルですよね!!

     この作品は、家族の食事に特化した内容になっています。同じ家族の現在、10年前、20年前の食事について追跡し、その家族がどんな風に変化をしていったかということを調査し分析している内容です。この作品の大部分は、食事に無頓着な家庭について触れられている感じです。母親は家族のために食事を作りたくないし家族のためにというよりは、自分のために自由な時間を確保したい…家族の自主性に任せるという大義名分を掲げ、それぞれが個々に買ってすませるとかです。そんな家族の現在の姿は、バラバラで親は子供に何も言えず、引きこもりになってしまっていたり、家に寄り付かなくなっていたり…そんな怖いものが多かったです。最後の最後で、家庭不和もなく穏やかな関係を築けているという結果になった家庭もあったのが救いでした。

     ウチはどうなんだろう??ウチは毎食、子供は子供で、夫は夫でという食事はしていないけれど…手の込んだ食事は作れていないなぁ…でも、子供たちとは別で生活するようになったら、どうなっちゃうんだろう??いやいや、それでも毎食作らない選択肢はないかなぁ…。この作品で扱った調査は、少し偏りがあるんじゃないかなぁ…とも感じましたが、でも食事は大事だということは実感できました。

  • 「自分時間」を生きる日本人、「食」から見える家族や家庭の変化…「共有」の喜び不変 : 読売新聞(2021/04/04)
    https://www.yomiuri.co.jp/life/20210330-OYT1T50101/

    「独りベッド飯の夫」「ダイニングテーブルのない新婚家庭」の出現は何を物語る? 食卓追跡調査が引き出した、いまどき家族の「本音」 ぼっちな食卓|人間関係|婦人公論.jp(2023年09月07日)
    https://fujinkoron.jp/articles/-/9498

    岩村 暢子 | 大正大学地域構想研究所
    https://chikouken.org/researcher/7478/

    ぼっちな食卓 -岩村暢子 著|単行本|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/tanko/2023/09/005691.html

  • 自分を大切にして、自由で好きな時間を過ごすことは、必要なことだと思う。外に目を向けることも大切だ。が、この本を読んでとても怖くなった。家庭の食事にもこの考え方をもちこみ、食事は時間も内容も個別、自分の子どもの食事に対しても、面倒くさいから自己責任の道筋を作っていく。嫌いなものを与えると機嫌が悪くなるからとか、残されると嫌だからとか。それを言ったらおしまいと思うようなことが、多くの家庭で見られた。1998年から2009年まで、食卓を定点観測の場として、同一家庭の10年後、20年後の変化を追跡調査した結果だ。ちなみに、初回は240家庭、10年後は89家庭、20年後は8家庭の有効サンプルの結果だそうだ。
    個人を尊重することは大切なことだけれど、家族と関わらない食事時間と、帰宅時間を親離れと自立というきれいな言葉で片付けることは、もう仕方がないことなのだろうか。働き方や深夜までの塾や習い事で仕方がないのかもしれない。外に対しては食事や子育てのアドバイザーの立ち位置の人でも家ではきちんとした食生活や子どもへの接し方ができていないというのも、見映えだけを気にしているように思える。でも自分ファーストで子どもを育て、親と接して、自分が老いたときに同じように自己責任として片付けられても納得できる強い人が、そんなに多いのだろうか。
    最後に、10年たっても食事を大切にし、皆が家事に当たり前に参加してお互いを気にかけあい、円満に暮らしている家族があることにほっとした。これが大多数の人にとっては、鬱陶しい関係であることは、もうどうすることもできないのかもしれないが、ひょっとするとコロナ禍でなにかが変わったかもしれないとも思った。

  • 時代とともに社会観念は変化する。年々「個」が極大化してきたのは間違いない。その影響を受けた家族がどんな変化をしたかの調査結果、ぜひとも読みたい

    #ぼっちな食卓
    #限界家族と「個」の風景
    #岩村暢子
    23/9/7出版

    #読書好きな人と繋がりたい
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  • 長い年月をかけて採取した家族のあり方が圧巻でした。
    妻との関係、子との関係を見つめ直すための必読書です。読み進めていくと、ほとんどホラーに近いような恐ろしい状況が展開されていきます。そこに登場する方々に「本当にそれでいいの?」と心の中で問い続ける読書でした。
    家族という関係性を作り上げるのは、日々の瑣末なことの積み重ねであると感じました。良好な関係性が維持できている家族は、当たり前のように互いを気遣い、それを瑣末なこと、当たり前のことと捉えて気遣いを繰り返す。完全に崩壊している家族は、各々が個人を優先ことが何よりも先決で、瑣末なこと大切にすることができずに、目に見えないほどの距離が毎日離れていき、年月を重ね不可逆的なところまで行ってしまう。
    本の題名になっている「食卓」は、家族のあり方の象徴的なものであり、そして、もっとも基本的な土台となるものであると感じました。
    自分の家庭も始まってまだ10年。これから、積み上げねばならないものがたくさんあると気の引き締まる思いを胸に、日々の瑣末な気遣いを重ねていこうと思いました。

  • 食卓を定点観測の場として、1998年〜2009年にかけての第1回、その10年後の2回目、さらにその10年後の3回目と同一対象家庭に、アンケート、写真入りの日記調査、詳細インタビューなどを行った結果の分析、考察をまとめた本。
    この調査結果自体見れたら興味深いだろうなと感じたし、分析、考察をまとめた本書も非常にインパクトが強いものだった。

    家族内であっても、「個人の意思を尊重する(自分のやりたいこと、自由、好みを優先する)」という親の気持ちのもとで、結果それが食卓に反映し、親子関係(対象者の子どもだけでなく、親、義親含め)、夫婦関係などにどう反映していたのか。

    自分自身まさにこの調査対象年代にあたることもあり、え〜!?と思うこと、まあ我が身を考えても思いあたること等様々。
    そして、自分は、果たしてどうしていただろうか?(本文中にもあったが、記憶は自分の都合で塗り替えられる、だから自分の記憶に自信が持てない)、子どもがまあ無事に育ってくれてよかったと思う一方、独立した彼等の今の食生活、考え方はどうなのだろうかと若干の不安も感じる。
    こんな半端ない当事者意識に苦笑。

    しかし、個を大切に自分中心に考える流れは、自分の中にもあるし世の流れとしても止めようが無い。しかし、大人と子どもとでは対応は違って然るべきだし、本来的な意味で自律的な人間を育てるのは、小さい頃から自主性尊重の名の下に放置することとは違う。
    人が生きること、育つこと、育てることはそもそも手間がかかり、手をかけることにより得られる価値が大きいと今なら思えるが、若い時はわからなかったなと反省をこめて思う。

  • いろいろびっくりだった。個を尊重しすぎるあまりに、子育て、親育てを放棄しているに過ぎない状況だった。なので最近は非常識が多いのか…と思ってしまう…

  • 「自主性」を育てるために、好きな食べ物を子供自身に選ばせて出していた家庭は、その後どうなったか。
    調査対象は首都圏在住家庭、240件。家庭の主婦へ、家庭内の食事についてのインタビューをしたものである。家族一緒に食事をするのか、各々がバラバラに食事をするのか。そしてその食事はどのようなものなのか。10年後、20年後と継続して同じ家庭に調査を入れているため、調査のたびに数は減るし、数が少なすぎて統計学的な評価はできないものの、こういった年月をかけての調査という点だけ取っても、稀有で貴重な調査結果である。
    仲がいいとは言えない家族の様子がリアル過ぎて、読み進めていくにつれ気持ちが萎えてくる。子供の自主性を大切にすると言いつつ実態はネグレクト。良くも悪くも干渉しない夫婦、それは家庭内離婚とラベリングされていないだけ。個々の自由を尊重すると言っているのは、自分優先を正当化するための口実。家族が家で食事をしたがらないので外食ばかり、外食が家族のコミュニケーションの場だと。他にも、ブラック企業やブラック部活の問題などもあり、これでもかというほど問題が出てくる。前半は何とか読み、後半はこれ以上読みたくなかったが、何が書いてあるかはわかる程度に目を通した。
    勉強になったのは、資格をとって教える側に回りたがる主婦がいること。指導員・アドバイザー・インストラクターなど。だが、実際に本人はその通りにしているかというとそうでもないそうで。若いお母さんの怠慢に嘆く保育士、家では食事をせず子供や夫は外で買ってくる。薬膳料理教室を開いているが、夕食はレトルト食品とお惣菜ばかり。著者は、こういったことをただ嘘つきと非難するのではなく、専門家や先生こそ、その矛盾に向き合うべきだということと、実践を放棄し言葉や情報だけ語ってしまうほど、情報発信者が強い力を持っているという現代の問題だと指摘している。
    全体に著者の見解や考えはそんなには書かれておらず、調査結果を読んでいるだけのような感じでした。しかし、実例の多さと、これがフィクションではないことが読む側の陰鬱な気分に拍車をかけてしまう。事実は小説より重いです。しかもこの問題、これで終わりではなく、社会が変わるにつれて問題の様相もどんどん変わっていくわけで。個人の尊重(という誤解?短絡的解釈?)が家庭の空洞化につながり、子供が最も近い人間から人間関係を学べなくなってきていて、子供同士のいじめの問題や、長く見れば少子化の原因の一つになっているのではないかと思いました。
    最後に、年月を経て調査をした際も円満だった家庭についても書かれている。あとがきでは、この調査が家族のコミュニケーションのきっかけになったといってお礼の言葉も来たそうである。悪い話ばかりではないのが救いでした。
    これのアップデート版もやって欲しいですね。新たに調査を始め、今後の10年後、20年後はどうなっているのか。

  • 筆者の主観的な部分が多いようにも感じたが、個食の継続が家族のつながりを分断するのは事実なんだろうなと思った。やはり、食は大事だ。

  • とてもこわい本。淡々するすると読める。
    日本の食卓と家族、個人個人の意識の変化(その裏に隠れているのは社会全体の様々な空気感)
    定点観測された地道な食卓調査のアンケート結果や発言がページをめくる度に淡々と綴られていく。対象者の発言と実態が乖離することも多数、驚愕する。
    自分と年代の違う調査対象者の発言を「恐ろしい」と感じつつもその考えを完全に否定できず、自分の中にも潜んでいることを実感しぞっとする。
    ただただこわいが(興味深い面白さと読みやすさはある)、これはたぶん個人個人の意識の変容の中に、世界と日本の社会のムードがどろどろ音も立てず忍び込んでいる、その結果を表した貴重な本だと思う。

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著者プロフィール

1953年北海道生まれ。法政大学卒。大手広告会社勤務等を経て、現在大正大学客員教授、日本能率協会総合研究所客員研究員。1960年以降生まれの人びとを対象とした20年に及ぶ継続的な調査研究に基づき、現代の家庭や社会に起きるさまざまな現象を読み解くことをテーマにしている。著書に『変わる家族 変わる食卓』『「親の顔が見てみたい!」調査』『普通の家族がいちばん怖い』『家族の勝手でしょ!』『日本人には二種類いる』など。第2回辻静雄食文化賞受賞。

「2017年 『残念和食にもワケがある』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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