再軍備とナショナリズム: 保守.リベラル.社会民主主義者の防衛観 (中公新書 884)
- 中央公論新社 (1988年7月1日発売)
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- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121008848
作品紹介・あらすじ
朝鮮戦争勃発によりアメリカの対日政策は大きく変更し、日本は警察予備隊を創設、以後再軍備への道を歩むことになった。しかし、出発点における法的基盤の脆弱さ、国内コンセンサスを無視した既成事実の先行などによって、その後の防衛論議は大きく歪められる。吉田内閣、そして芦田均、鳩山一郎ら自由主義者、西尾末広など社会党右派は防衛問題をどう捉え、いかに対処したのか。戦後政治上最大の論点を、原点に遡って検証する。
感想・レビュー・書評
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3陣営の再軍備に関する思想背景をそれぞれ見る。
「保守」代表の吉田路線は、一般的には現実に適応したバランス感覚を肯定的に捉えられることが多いと思っていたが、本書では、再軍備構想を明確に説明し国民の理解を得ることに失敗した、と批判的に見ている。また、保安・防衛大学校に導入されたリベラリズムも、これまた一般的には戦前の反省の上に立ったと肯定的に捉えられていると思っていたが、本書では、エリート的な戦前型リベラリズムであり、国民に浸透しなかったとやや皮肉に捉えている。
自衛隊の成立過程は同じ中公新書『自衛隊の誕生』とも重複するが、本書では、軍事問題には素人ながら旧軍とは一線を画したい「治安官僚出身の戦後派防衛官僚たるシビリアン」にも注目している。
一方、「自由主義者」(芦田・鳩山・石橋)は、やはり伝統的政治文化から離れられず、それ故に積極的再軍備を唱えたと著者は指摘。
また、「社会民主主義者」のうち、軍事力の意義を評価する者は社会党の中で少数となり、民社党として分離する。それ故に社会党の「転換」は西欧の社会主義政党と比べても遅れたとしている。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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