中国、一九〇〇年: 義和団運動の光芒 (中公新書 1299)

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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121012999

作品紹介・あらすじ

一九世紀末、山東省に起きた義和拳・大刀会など小林拳の修得者による反教会闘争は、列強の侵略に喘ぐ清朝の「下から」の抵抗運動として急速に華北平原を席巻し、「文明」に対する「野蛮」の挑戦として、世界を震撼させた。この「義和団運動」を狂熱的排外運動あるいは反帝国主義運動と解して事足りるのか。本書は、通説に反してこれを、本来は相容れない儒教・仏教・道教の三教が混成した、文化帝国中国の挙国的千年王国運動と解する。

感想・レビュー・書評

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  • 1996年刊行。著者は筑波大学社会科学系教授。◆宗教(中国古来、西洋由来のキリスト教)、反帝国主義闘争、文化闘争等多面に切り取れる義和団事件。そして、後の辛亥革命との繋がりも想起できるばかりか、広義の中国人の心性とも関わる。こういう問題意識から著者は、ある意味狂信的な民衆信仰に由来するものとして義和団事件を捉え、中国民衆の古来からの信仰・習俗を踏まえて解説していく。

  •  義和団運動とはたまには耳にするものの、どんなことなのかほとんど知らずにいたので、手に取った一冊である。歴史の教科書にはきっと記述はあるのだろうが、自分としてはあまり知識がない。そこで義和団運動を知るべく選んだ本書であるが、なかなか難しかった。
     さて一連の義和団運動を単純化して整理すれば
    「列強の中国侵略」
       ↓
    「河北農村におけるキリスト教会の専横」
       ↓
    「列強の侵略による中国亡国の危機」
    があり、これを中国人は
    「儒教・仏教・道教三教混成の千年王国」
    で跳ね返そうとしたということだそうだ。西欧はキリスト教の布教を媒介にして中国侵略を進めようとした。これは西欧の常套手段である。
     「我々を抑圧する敵を滅ぼせ。」これは古代・中世・近代・現代の「宗教的原理主義者」たちあるいはナチス・ドイツの反ユダヤ主義あるいは第二次世界大戦中の日本軍の大陸その他での行動といった「千年王国」的側面をもった運動には随所に随時に出現するパターンなのだそうだ。千年王国運動は圧迫する敵を「悪魔」と規定し、悪魔の皆殺しの果てに悪魔なき理想郷を想定するからだという。
     ところで義和団とはどういう組織だったのか。もともと義和拳とか梅花拳、神拳、紅拳などが出てくるが、義和拳は少林拳の中の梅花拳という拳法の名を変えたものであり、この拳法を習う者が集団化し義和団と称したようだ。始めのうち極端に保護された西洋人の布教活動はエスカレートし各地で非教民を苦しめた。これに業を煮やした村民たちは、これに対抗するため拳法を習い始める。これが最終的には義和拳と呼ばれるに至る。
     そしてついに一部の義和拳の集団が教会を襲撃し始める。そして教民に対して大弾圧を加える。清朝朝廷ではこれの取り扱いを協議するが、「扶清滅洋」を掲げる義和拳集団を「以民制夷」として列強に対抗する手先として利用する。
     しかし列強側が連合軍を組織し上陸するとたちまち形成は逆転、清朝は列強に屈することになってしまう。これによって逆に義和団はさっきまで友軍であった清朝の官軍に大弾圧を加えられるのである。(連合軍には日本も含まれる)
     それにしても列強の恐ろしいほどの内政干渉と賠償請求であった。1901年11カ国との間で条約が結ばれ、賠償金4億5千万両、39年払いだという。元金だけでも当時の清朝の国庫収入の5カ年分に相当した。中国政府は1940年までこの賠償金を払い続けることになった。

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著者プロフィール

1937年6月長野県生(飯田高校卒)。筑波大学名誉教授、筑波学院大学名誉教授。中国・ドイツの政治思想史研究者。G. シャープに導かれて非暴力国家防衛研究に従事。
略歴・主要業績
最終学歴:1971年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。
主要職歴:1972年東京大学助手(文学部)、76年筑波大学社会科学系(政治学専攻)助教授、85年教授。98年東京家政学院筑波女子大学(現筑波学院大学)国際学部教授。2008年筑波学院大学学長、2012年同大学学長任期満了退職。
主要著書:『中国の千年王国』(東大出版会1991。韓国語訳、高麗大学1993。中国語訳、上海三聯書店1997)。『伝統中国の内発的発展』(研文出版1994。中国語訳、北京中央編訳出版社1994)。『中国、一九〇〇年――義和団運動の光芒』(中公新書1996)。『ポルシェの生涯――その時代とクルマ』(グランプリ出版2007、再版2023)。『ナチス時代の国内亡命者とアルカディアー――抵抗者たちの桃源郷』(明石書店2013)。『武器なき闘い「アラブの春」非暴力のクラウゼヴィッツ、ジーン・シャープの政治思想』(阿吽社2014)。『フィンランド 武器なき国家防衛の歴史 なぜソ連の〈衛星国家〉とならなかったのか』(明石書店2022)。
主要訳書:レイモンド・ドーソン『ヨーロッパの中国文明観』(共訳、大修館書店1971)。ジョナサン・スペンス『中国を変えた西洋人顧問』(講談社1975)。厳家其『首脳論』(共訳、学生社1992)。ジーン・シャープ『市民力による防衛――軍事力に頼らない社会へ』(法政大学出版局2016。再版2023)。

「2023年 『非暴力による防衛戦略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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