- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121012999
作品紹介・あらすじ
一九世紀末、山東省に起きた義和拳・大刀会など小林拳の修得者による反教会闘争は、列強の侵略に喘ぐ清朝の「下から」の抵抗運動として急速に華北平原を席巻し、「文明」に対する「野蛮」の挑戦として、世界を震撼させた。この「義和団運動」を狂熱的排外運動あるいは反帝国主義運動と解して事足りるのか。本書は、通説に反してこれを、本来は相容れない儒教・仏教・道教の三教が混成した、文化帝国中国の挙国的千年王国運動と解する。
感想・レビュー・書評
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義和団運動とはたまには耳にするものの、どんなことなのかほとんど知らずにいたので、手に取った一冊である。歴史の教科書にはきっと記述はあるのだろうが、自分としてはあまり知識がない。そこで義和団運動を知るべく選んだ本書であるが、なかなか難しかった。
さて一連の義和団運動を単純化して整理すれば
「列強の中国侵略」
↓
「河北農村におけるキリスト教会の専横」
↓
「列強の侵略による中国亡国の危機」
があり、これを中国人は
「儒教・仏教・道教三教混成の千年王国」
で跳ね返そうとしたということだそうだ。西欧はキリスト教の布教を媒介にして中国侵略を進めようとした。これは西欧の常套手段である。
「我々を抑圧する敵を滅ぼせ。」これは古代・中世・近代・現代の「宗教的原理主義者」たちあるいはナチス・ドイツの反ユダヤ主義あるいは第二次世界大戦中の日本軍の大陸その他での行動といった「千年王国」的側面をもった運動には随所に随時に出現するパターンなのだそうだ。千年王国運動は圧迫する敵を「悪魔」と規定し、悪魔の皆殺しの果てに悪魔なき理想郷を想定するからだという。
ところで義和団とはどういう組織だったのか。もともと義和拳とか梅花拳、神拳、紅拳などが出てくるが、義和拳は少林拳の中の梅花拳という拳法の名を変えたものであり、この拳法を習う者が集団化し義和団と称したようだ。始めのうち極端に保護された西洋人の布教活動はエスカレートし各地で非教民を苦しめた。これに業を煮やした村民たちは、これに対抗するため拳法を習い始める。これが最終的には義和拳と呼ばれるに至る。
そしてついに一部の義和拳の集団が教会を襲撃し始める。そして教民に対して大弾圧を加える。清朝朝廷ではこれの取り扱いを協議するが、「扶清滅洋」を掲げる義和拳集団を「以民制夷」として列強に対抗する手先として利用する。
しかし列強側が連合軍を組織し上陸するとたちまち形成は逆転、清朝は列強に屈することになってしまう。これによって逆に義和団はさっきまで友軍であった清朝の官軍に大弾圧を加えられるのである。(連合軍には日本も含まれる)
それにしても列強の恐ろしいほどの内政干渉と賠償請求であった。1901年11カ国との間で条約が結ばれ、賠償金4億5千万両、39年払いだという。元金だけでも当時の清朝の国庫収入の5カ年分に相当した。中国政府は1940年までこの賠償金を払い続けることになった。