昭和天皇: 「理性の君主」の孤独 (中公新書 2105)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021052

作品紹介・あらすじ

新時代の風を一身に浴び、民主的な立憲君主になろうとした昭和天皇。しかし、時代はそれを許さなかった-。本書は今まであまりふれられることのなかった青年期に至るまでの教育課程に注目し、政治的にどのような思想信念をもっていたかを実証的に探る。そしてそれは実際の天皇としての振る舞いや政治的判断にいかなる影響を与えたか、戦争責任についてどう考えていたか、さらに近代国家の君主のあり方をも考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 古川隆久『昭和天皇』中公新書 読了。立憲主義と国際協調を政治信念に持ちながらも(それゆえに)、太平洋戦争に向かうに連れて思想的に孤立していく昭和天皇。本書では、思想形成の過程に着目し、その人物像を探る。戦争責任は免れないにしろ、優れたリーダーの資質を有していたことは想像に難くない。

  • 陸軍の暴走を苦々しく思いながらも、権限が曖昧のまま進む無理ゲー感をすごく感じました。
    この時この決断をしていたらとか全くできないことが、物凄く切ない。

  • 想像以上にリベラルな、英米協調主義な姿。最初の帝王教育の成果。戦前は、その姿勢故に日本と孤立し、苦しい立場に追い込まれる。
    戦争直前は、厭世的に見え、それが後に戦争責任を問われる原因の一つになってしまったか。

  • 思想形成◆天皇となる◆理想の挫折◆苦悩の「聖断」◆戦後

  • 歴史

  • 戦争でひどい目に遭った人にはまた別な意見があって当然だが、昭和天皇は、人間である以上間違えることがあったにせよ、民主的な立憲君主であり続けようと、また、協調外交によって戦争を回避しようと、最善を尽くしたのだと思う。昭和天皇が目指した協調外交を当時の国民が支持しなかったことは、加藤陽子の『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』にも書いてあったと思う。それにしても、当時の陸軍は、とんでもない組織だ。2011年7月17日付け読売新聞書評欄。
    (2018/12/08追記)
    大日本帝国憲法には統治権を総覧すると規定されていたのだから、もう少し何とかならなかったのかという気はするが、陸海軍は昭和天皇の命令に従うつもりがなかったようだ。統帥権は天皇にあるとされたのは、陸海軍が政治利用されないようにするためだったと聞いたことがあるが、それは陸海軍が政治に関与しないことを前提にしていたはずで、その前提が崩れてはどうしようもない。皇太子時代のヨーロッパ訪問を一番楽しい思い出としていた昭和天皇が崩御した後、侍従が居間の机の引き出しを整理したら、その時に乗ったパリの地下鉄の切符が出てきたとは、なんとも切ない話だ。
    (2018/12/15追記)
    統帥権の独立という考え方は政治から軍隊を隔離する必要があるという発想から出てきたものだという説明は、加藤陽子の『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』で読んだのだった。

  • 讀賣新聞7月17日書評。
    非常に読みづらい学者の文章だが、仔細に資料に当たっていて昭和という激動の時代の天皇の実像に迫ることが出来る。

    <blockquote>昭和天皇は、儒教的な徳治主義と、生物学の進化論や、吉野作造や美濃部達吉らの主張に代表される大正デモクラシーの思潮といった西欧的な普遍主義的傾向の諸思想を基盤として、第一次世界大戦後の西欧の諸国、すなわち、政党政治と協調外交を国是とする民主的な立憲君主国を理想としつつ、崩御に至るまで天皇としての職務を行ったことが浮き彫りとなった。</blockquote>

  • 昭和天皇は、協調外交・不戦・不拡大を望んでいたのにも関わらず、そのようにならなかった。張作霖爆殺事件に対する関係者の処罰を怠った事で、満州事変、五・一五事件、二・二六事件、日中戦争、そして太平洋戦争へと突き進んでしまった。「君臨せずとも統治せず」が果たせなかった。

    本書を読み終えて、昭和天皇に戦争責任があるのか?と問われれば、「ある」と思う。退位いただき、別の皇族の方を象徴天皇としていただくべきだったのではないだろうか?
    結局のところ、昭和天皇の戦争責任をあいまいにしたことが、今日の靖国問題に見られる戦争責任問題が依然解決しない原因ではないだろうか?

    <目次>
    はじめに
    第一章 思想形成
     一 東宮御学問所
     二 訪欧旅行
     三 摂政就任
    第二章 天皇となる
     一 田中内閣への不信
     二 首相叱責事件
     三 ロンドン海軍軍縮条約問題
    第三章 理想の挫折
     一 満州事変
     二 五・一五事件
     三 天皇機関説事件と二・二六事件
    第四章 苦悩の「聖断」
     一 日中戦争
     二 防共協定強化問題
     三 太平洋戦争開戦
     四 終戦の「聖断」
    第五章 戦後
     一 退位問題
     二 講和問題と内奏
     三 「拝聴録」への道
    おわりに


    2014.01.09 川口さんより薦められる。
    2014.02.01 読書開始。
    2014.02.06 読了

  • 古川隆久 「 昭和天皇 」戦前から戦後の昭和史を 昭和天皇の聖断(天皇の決断)とともに見渡せる本。凄い本だと思う。

    昭和天皇の聖断
    *張作霖事件の不手際に対する田中義一内閣の退陣→天皇の政治責任
    *ポツダム宣言の受諾→国体論的な国家体制から訣別

    昭和天皇の思想は 昭和の意味に込められている
    昭和の意味=百姓昭明、協和万邦=世界平和、君民一致

    天皇を絶対化する国体論という政治思想

  • 原武史『昭和天皇』と併読

    烏兎の庭 第五部 書評 8.31.15
    http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto05/bunsho/Hara_Ten.html

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著者プロフィール

古川隆久

1962(昭和37)年東京生まれ。1985(昭和61)年東京大学文学部国史学専修課程卒業、1992(平成4)年東京大学大学院人文科学研究科国史学専攻博士課程修了(博士(文学))。広島大学専任講師、横浜市立大学助教授などをへて、日本大学文理学部教授。専攻は日本近現代史。著書に『昭和戦中期の総合国策機関』(吉川弘文館 1992年)、『皇紀・万博・オリンピック』(中公新書 1998年)、『戦時議会』(吉川弘文館 2001年)、『戦時下の日本映画』(同上 2003年)、『政治家の生き方』(文春新書 2004年)、『昭和戦中期の議会と行政』(吉川弘文館2005年)、『昭和戦後史』上・中・下(講談社 2006年)、『あるエリート官僚の昭和秘史』(芙蓉書房出版 2006年)、『大正天皇』(吉川弘文館 近刊)などがある。

「2020年 『建国神話の社会史 虚偽と史実の境界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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