ミルクと日本人 - 近代社会の「元気の源」 (中公新書 2438)
- 中央公論新社 (2017年6月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121024381
作品紹介・あらすじ
「こんな強烈な匂いと味なのに、お茶に入れて飲むなんて!」牛乳を飲む英国人を見た日本人の言葉である。だが明治二年、築地で牛乳が売り出され、日本人はその味に慣れていった。芥川龍之介の実家も牧場を経営し、渋沢栄一はそこから牛乳を取っていた。大正期には牛乳を加工したキャラメルが大流行した。関東大震災で緊急配布が行われ、敗戦後に児童の栄養を案ずる人々により学校給食への導入が進む。飲み物が語る近代史。
感想・レビュー・書評
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この本は「近代産業史」なのか「食の文化史」なのかと思いながら読み進んだが、面白いのひと言だ。
後書きに「ミルクを通して近現代社会を探索するおもしろさ」と著者は書いているが、まさに楽しみながら明治以降の日本社会を知ることができる点は秀逸である。
ただ内容で「貧民」を繰り返し取り上げていることは気になったが、著者が都市社会学の専門家と知り納得の思いを持った。
都市の貧困の本はどうしても読後感は暗いが、本書のように多角的視点の探索を通して日本社会を知ることは社会学の可能性を拡げるものだと評価したい。
2017年8月読了。 -
日本における牛乳の、生産側や政治経済的な側面を主に歴史的観点で記された本。
私はタイトルから、「学校給食に牛乳が出るのは、戦後GHQから押し付けられたせい」「日本人には牛乳は合わない」といった噂を理解できる本かと思ったが、その予想は空振りに終わった印象。戦後GHQはちらっとだけ出てくるが、そんな陰謀論的な話ではない。
はじめて日本人がミルクと出会ったエピソードや、お相撲さん絡みの話は印象に残ったが、本全体としては厚生労働省の資料のような話が多かった印象。
とは言え、冷蔵庫も無い時代から日本人が牛乳を飲んでいたのは知らなかったので発見だった。 -
【目次】(「BOOK」データベースより)
序章 ミルクが届く朝/第1章 近代牧牛の揺籃期/第2章 渋沢栄一の牧場ビジネス/第3章 お相撲さんとミルクー栄養と衛生/第4章 ミルクのある暮らし/第5章 キャラメルの時代ー食品加工業の進展/第6章 関東大震災と牛乳配給/第7章 学校とミルクー昭和期の脱脂粉乳/終章 ミルク供給の経済モデルと福祉モデルー経営問題と栄養問題 -
牛乳と日本人の関係を社会学的視点からまとめた本で興味深かった。あまり和風とはいえない牛乳という食物が日本人の食卓に乗り給食に取り入れられるようになるにはいろいろなアクター(社会学用語か)が恊働しかついろんな人の思惑がまざりあって現在があるということがわかった。
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日本における牛乳の歴史を書いた本。日本での牛乳活用は奈良・平安時代に作られていた「蘇」が最初だが、これは途絶えてしまったので、実質的には開国後からとなる。日本における牛乳の歴史を見ると、文化や産業がどのように発達していくかを見ることができて面白い。
牛乳の特徴的なところは、その栄養価の高さから福祉としても活用されたとこにある。学校給食に必ずと言っていいほど出るのはそのためだ。とはいえ牛乳は元々高級品であったため、支給するには金がかかって難しい。それが支給に至る決め手となったのは兵力増強のためだというのだから、笑ってしまう。何か新しいものを取り入れるならば、軍に結びつけるのが手っ取り早い。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689603 -
配置場所:摂枚新書
請求記号:648.1||T
資料ID:95190673 -
東2法経図・開架 B1/5/2438/K
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「こんな強烈な匂いと味なのに、お茶に入れて飲むなんて!」牛乳を飲む英国人を見た日本人の言葉である。だが明治二年、築地で牛乳が売り出され、日本人はその味に慣れていった。芥川龍之介の実家も牧場を経営し、渋沢栄一はそこから牛乳を取っていた。大正期には牛乳を加工したキャラメルが大流行した。関東大震災で緊急配布が行われ、敗戦後に児童の栄養を案ずる人々により学校給食への導入が進む。飲み物が語る近代史。