戦前日本のポピュリズム - 日米戦争への道 (中公新書 2471)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024718

作品紹介・あらすじ

現代の政治状況を表現する際に使われる「ポピュリズム」。だが、それが劇場型大衆動員政治を意味するのであれば、日本はすでに戦前期に不幸な経験があった。日露戦争後の日比谷焼き打ち事件に始まり、天皇機関説問題、満洲事変、五・一五事件、ポピュリスト近衛文麿の登場、そして日米開戦へ。普通選挙制と二大政党制はなぜ政党政治の崩壊と戦争という結末に至ったのか。現代への教訓を歴史に学ぶ。

感想・レビュー・書評

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  • 日比谷焼き打ち事件に淵源を持ち、選挙による政権の成立と普通平等選挙制実現により本格化し、最後は日米戦争に行き着いた近代日本のポピュリズム。なぜ政党政治の崩壊と戦争という破滅に至ったか、現代への教訓を歴史に学ぶ。【「TRC MARC」の商品解説】

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    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40254246

  • 本書は対米戦争以前のマスメディアによる大衆扇動がいかになされたのかについて、当時の新聞記事を中心に検討し、現代政治へと繋がる課題を提起する本である。
    新聞記事を細かく読んだわけではないが、当時のマスメディアがいかにして政党政治を崩壊させ、日本を対米戦争へと向かわせたのかが少しは理解できた。今でも主要な新聞社である朝日や毎日(左よりといわれる)は当時右よりなことをしていたことは驚いた。しかもこのような過ちを犯しながら今も存続しているなんて。

  • 「議会・世論を考えたからこそ(トラウトマン)和平工作は潰れ、強硬な声明が出され、戦争は拡大していったのだった」
    良書

  • 日本のファシズムは、ドイツやイタリアと比べると、あまり全体主義的ではなく(いろいろな意見・利害対立があって、バラバラで、「全体」になってない)、下からの運動というより、天皇の権威を利用した上からの統制という具合に理解しているのだが、それでもやはりファシズム的であるのは、大衆からの支持があったから。

    そして大衆の支持は、マスコミによる影響が大きいのだろうという予測のもとに、この本を読んでみた。

    大きくは、こうした事前の予測とは異なるわけではなかったのだが、それでも具体的にメディアがどういう論調の記事を書いたのか、そして、それに大衆がどういうふうに反応したのかを読むと、あらためて戦前の日本がどういう国だったのかが伝わってきて、驚きがある。

    ここには、現在の常識では考えられない愚かさがあるとともに、現在でも相変わらずな構造も多く見受けられる。

    やはり、日本型のファシズムは、それを支える世論があり、指導者は、最初は大衆の意見とは異なっても、それが国益であるのならば、嫌われてもやるべきことをやる人がいたわけだが、だんだん、(選挙権をもった)大衆の好みにうまく乗っかるのが上手な人が中心になるわけだ。

    そういう意味では、日本のファシズムの源泉は、やはり大衆の好みというところにあって、その好みが第2次世界大戦に向かって、日本が突き進んでいく原動力になったのだ。

    戦後において、日本型のファシズムは、陸軍のせいにされることが多く、国民は騙されていたというふうな理解がある気がするのだが、こうして歴史の流れをポピュリズムという観点でみるとその理解は陸軍をスケープゴートにして、自らを正当化する心理であったのだろうと思われる。

    2.26に関する記述があまりなかったり、日米開戦に先行する中国における戦争とそれに対するメディアや大衆の反応などもも少なめで、もうちょっと知りたいところもあったが、新書という分量のなかでは、十分な内容かな?

  • めっちゃ分かりやすいし笑えるし不気味だしでサイコー,けど分かりやすすぎて怪しさも感じる

  • 選挙権の範囲は広がって、政治指導者は選挙民の顔を伺うようになり、小村寿太郎のような政治家は出にくくなった。政治家だけにその責任を負わせるのは非対称だ。では有権者はどうだったのかまで触れないと完全な分析、研究とは言えない。

  • 日露戦争後の日比谷焼き打ち事件に端を発した劇場型大衆動員政治は、その後日本を戦争へと導く大きな要因になった。当時の新聞やラジオなどのマスメディアが世論に与えた影響が非常に大きいことが分かる。

  • マスコミが煽ったというのはわかるのだが、なぜ煽ったか、もう少し背景事情が知りたかった。

  • 日本の大衆は、日比谷焼き討ち事件から始まった。日露戦争の講和条約ポーツマス条約に反対する国民大会。
    徳富蘇峰の国民新聞だけが、講和条約に賛成した。

    日比谷焼き討ち事件は、討幕派から226事件までの中間的な思想事件。

    排日移民法排撃運動ではアメリカ大使館の前で切腹。

    初の普通選挙では2大政党時代が訪れた。政策より大衆人気が勝利する。

    ロンドン海軍軍縮条約では国際協調主義の世論が、わずか3年後の国際連盟脱退では、松岡全権を大歓迎した。新聞の誘導が原因。

    515事件は、国民の減刑運動によって海軍による刑は軽いものとなった。

    満州国はフランスでは、不戦条約などに違反していないという論もあった。アメリカの一部にもあった。
    リットン報告は、日本にも配慮した者であった。
    国際連盟には制裁がないのだから、無視してそのままいつづければよかった=頬かぶり論。

    ポーツマス条約では、国民の意向に逆らっても断固たる決断があったが、国際連盟脱退では、日本国中が大衆世論に埋め尽くされていた。

    1937年近衛内閣が成立。空前の人気。進歩的な青年公家。
    第二次近衛内閣のときに、ドイツの一時的な成功に幻惑され、枢軸の道へ走った。
    バスに乗り遅れるな=政党は解党し、大政翼賛会へ合流。

  • 通説だと議会・政党の力が弱いがタメに軍部の暴走を抑えることが出来ず、無謀な戦争に突入したという。
    しかし、本書では政党の力が強いがために内部で、スキャンダル暴露合戦(いわゆるポピュリズム対立)となって、それを後押しするマスメディアの報道(政党を見限り、新たな勢力の台頭を望む議論)によって、政党はみずから瓦解したという。

    つまり、内部から政党政治は崩壊したのである。

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著者プロフィール

1948年生まれ。帝京大学文学部長・大学院文学研究科長。東京財団政策研究所主席研究員。専門は日本近現代史、歴史社会学。著書『昭和戦前期の政党政治』『天皇・コロナ・ポピュリズム』(以上、ちくま新書)、『昭和史講義』『昭和史講義2』『昭和史講義3』『昭和史講義【軍人篇】』『昭和史講義【戦前文化人篇】』『昭和史講義【戦後篇】上・下』『明治史講義【人物篇】』『大正史講義』『大正史講義【文化篇】』(以上編著、ちくま新書)、『戦前日本のポピュリズム』(中公新書)、『近衛文麿』(岩波現代文庫)、『満州事変はなぜ起きたのか』(中公選書)、『帝都復興の時代』(中公文庫)、『石橋湛山』(中公叢書)、『二・二六事件と青年将校』(吉川弘文館)など。

「2022年 『昭和史講義【戦後文化篇】(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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