東アジアの論理-日中韓の歴史から読み解く (中公新書 2586)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025869

作品紹介・あらすじ

同じ「漢字・儒教文化圏」に属すというイメージがあるためか、私たちは中国(人)や韓国(人)を理解しているものと考えやすい。だが、外国には外国の基準があり、「日本人の感覚」で相手を推し量るのでは誤解と対立を生むことになる。本書は、強権的な姿勢を強める習近平政権、慰安婦問題や徴用工判決で悪化する日韓関係など、近年の時事的な話題を切り口に、歴史的なアプローチから中韓を知るためのヒントを示す。

感想・レビュー・書評

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  • 1 歴史から見た中国政治/2 皇帝制度と指導者論/3 中国経済を見る眼/4 中華意識と儒教的世界観/5 韓国の論理/6 日本の対中観と対外観/7 東アジアと日本の運命/8 歴史学の役割

  • 日本の周辺諸国、中国・韓国・北朝鮮に台湾と、歴史も文化も異なるこれらの国々。特に最近(2023年)は北朝鮮が活発にミサイル発射を繰り返し、偵察衛星も打ち上げようとするなど、周辺諸国へ積極的に影響を及ぼそうとしている。当の北朝鮮は確信的に周辺国、特に日本とその背後にいるアメリカを意識しつつも、発射実験を繰り返すのは自国の技術の確立が第一である。中国は相変わらず自国の権威と強引な外交政策により、その経済力があるうちに、一帯一路構想に見られる他国の経済破綻に任せて縛り上げていこうとしている。甘い見通しと追いつかない技術力を過度に全面に押し出しては、鉄道敷設などで日本と競合させて利益を横取りしていく。結果、計画通りに進もうと進まざるとに関係なく、長期的な債務の罠に陥れて、強制的に属国化するという見事な手法である。そうした意味では日本の国益を大きく脅かしている。韓国はと言えば相変わらず徴用工問題やら慰安婦問題で国民の目を上手く日本へと向け、国民のナショナリズムを掻き立て、下手な政治の失敗を上手く隠しながら何とか政権維持をし続けるという昔ながらの戦法を相変わらず続ける。対処できない日本の政治・外交もどうかと思うが、相手にしない立場をいつまで取り続けられるだろうか。
    こうした各国の動き方には、国民性や伝統がついて回るのだが、歴史を振り返ると実に同じ事を延々と繰り返しているように感じる。
    本書はそうした各国と日本の関係を振り返り、東アジアの論理に纏めている。何も彼らの動き方は今に始まった事ではなく、連綿と続く伝統芸である事を歴史に照らし合わせて紐解いていく形だ。
    確かにここ半世紀の間にも、何だかニュースを見るたびにデジャヴのように「またか」の繰り返し。いったい私が生きている間に何回慰安婦問題が取り上げられて、何回首相の談話が出るか楽しみでしかない。慰安婦問題を扱う別の書籍を読んで感じたのは、根本的な歴史認識の違い以前に、各国が自国のために作った歴史とそれに扇動される国民、何より根本となっている事実の明確化、その原因自体の除去(謝罪かもしれないし、時間が解決するかもしれない)がない限り、ループ処理から抜け出すのは困難だという事。
    対中国なら南京事件、北朝鮮なら日本による占領など、言葉にすると数文字にしかならないこれらの歴史をどの様に共通認識として定義し、それに相応しい対応を双方が取るかではないだろうか。
    実際、その表面的な言葉が持つ威力が失われないうちは、さしたる努力もせずに相手の足を引っ張る手段に落ち着く。
    これらの解決は極めて困難な道のりである事は十分理解できる。各国にはもっと深い部分に、歴史の中で確立してきたそれぞれの理論が剥がせない骨と筋肉の様にピッタリとくっついて、それが各国の原動力そのものになっているからだ。
    本書は理論を理解する役に立つが、それを理解した所で答えを示しているわけではない。本書をヒントに考えるのは読者であり、さらにそれを伝わる様な正確な日本語表現をする事を強く推奨する。本書を読むと、新聞ですら誤った表記(常用表現となって伝わりやすさを重視した結果だと思うが)を使う時代だから、自分の考えや表現に責任を持てるよう、各自がしっかり勉強しなさい、と親に怒られた感覚になる。

  • 時事評論を歴史家が書くと、イマイチという例。今の事象と歴史からの類似例を比較するのだが、そうかなと思われるものが多い。

  • 大変同意する。が、日本を韓国から向こう側と違うというなら、なんでベトナムと違う位置づけにするかはわからなかった。私はそちらに入れていいと思ってたのだけれど。

  • 中韓の振る舞いを見て「理解できないことが多い」と感じることは多いのだが、本書は日本との考え方の違いを歴史の視点で解説した一冊である。

    「言行不一致は、中国のお家芸」「法理ではなく情理、法治よりも情治・人治」の背景がよく分かる。

    著者は相当な“本読み”のようで、文章も洗練されている。本読みの本で困るのは、引用・例示が多くて、さらに読みたい本、読むべき本が増えてしまう“芋づる現象”が起きてしまうことだ。もう本棚にアキがないんだが…。

  • 連載コラムを集めたものなので、一つの作品、論考と思わないで読んだ方が期待を裏切らないと思います。中国が一国二制度を嫌がる理由(かつて列強侵略の足掛かりとなったという認識)、中国の法治主義(rule by law)、韓国の党派抗争とイデオロギー至上主義。ここら辺はなるほど、と思いました。

  • 中国近代史を専門とする著者が、日中韓三カ国の問題について歴史的な視点から分析した小論集。

  • 2017年~2019年頃の時事的な話題を切り口に、歴史的アプローチから日本・中国・韓国の違いを知るためのヒントを提示。『週刊東洋経済』に「歴史の論理―東アジアと日本の運命」と題して連載されたコラムをまとめたもの。
    著者の歴史書は骨太でいつも楽しみにしているが、本書は正直期待外れだった。雑誌の連載コラムをまとめたものなので致し方ない部分はあるが、浅い内容の小文が連ねられているという印象を持った。また、歴史学の成果を安易に現代の時事問題に当てはめているようなきらいがなきにしもあらずと感じた。

  • 東2法経図・6F開架:B1/5/2586/K

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著者プロフィール

1965年、京都市に生まれる。現在、京都府立大学文学部教授。著書、『近代中国と海関』(名古屋大学出版会、1999年、大平正芳記念賞)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、2004年、サントリー学芸賞)、『中国経済史』(編著、名古屋大学出版会、2013年)、『出使日記の時代』(共著、名古屋大学出版会、2014年)、『宗主権の世界史』(編著、名古屋大学出版会、2014年)、『中国の誕生』(名古屋大学出版会、2017年、アジア・太平洋賞特別賞、樫山純三賞)ほか

「2021年 『交隣と東アジア 近世から近代へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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