「徴用工」問題とは何か-朝鮮人労務動員の実態と日韓対立 (中公新書 2624)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 77
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121026248

作品紹介・あらすじ

2018年秋、韓国最高裁は「徴用工」訴訟で韓国人被害者への賠償を日本企業に命じた。同種の裁判は20世紀末に日本の最高裁で、2000年代半ばに韓国でも原告敗訴だった。なぜそれが一転したのか――。本書は、日本統治下の朝鮮人労務者の実態から、今なぜ問題化したかまでを描く。この問題は、事実関係から離れ、個人請求権、歴史認識、国際法理解、司法の性格など多岐にわたる。本書ではそれらを腑分けし解説、日韓和解への解決の糸口を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 「徴用工」について、かなり客観的に交渉経緯や法的根拠などを著述する。

    ほぼほぼ世間に出ている論と変わりない。が、その同意に至る交渉を、薄い本ながらコンパクトに説明していただいている。

    そうは言っても、歴史的、国民感情的な問題があって、経済力もついてきたんだが、そこも含めて新しい解決を図らないといけないんじゃないかも、的な提言は、不要と思う。

    日本側の、歴史的国民感情的な問題が軽視されてきたこと、軽視すべきという姿勢が問題と思う。
    だから、法的解決があるんでしょ。

    したんでしょ。

  • 3.63/59
    内容(「BOOK」データベースより)
    『2018年秋、韓国最高裁は「徴用工」訴訟で韓国人被害者への賠賞を日本企業に命じた。日本の最高裁でも、韓国の高裁でも原告敗訴だったが、なぜそれが一転したか―。本書は、日本統治下の朝鮮人労務者の実態から、今なぜ問題が浮上したかまでを描く。この問題は、歴史的事実、総動員体制、戦後処理、植民地主義、歴史認識、国際法理解、司法の性格など多岐にわたる。それらを腑分けして解説、日韓和解の糸口を探る。』


    『「徴用工」問題とは何か―朝鮮人労務動員の実態と日韓対立』
    著者:波多野 澄雄
    出版社 ‏: ‎中央公論新社
    新書 ‏: ‎246ページ
    発売日 ‏: ‎2020/12/21

  • 日韓対立の焦点になる中、「徴用工」の実情から歴史認識、国際法、司法の性格など、多岐にわたる問題を整理し解説。解決の糸口を探る

  • 要点がよく整理されており分かりやすい。また日本、韓国どちらかに寄りすぎることもなく理性的に解説してくれている。この問題の入門書としては最適。

  •  日本統治期の近代史、労働者の募集や動員、請求権協定の交渉過程、2018年大法院の立論、日本の最高裁と政府の見解と関連する事柄を幅広くカバーしている。国際法や韓国研究など他分野の専門家の見解も聞いてみたいが、問題の所在は本書でよく分かる。
     日本統治期の朝鮮の近代化を述べる一方で、武断政治、土地喪失による膨大な貧農の発生(土地調査事業の影響かどうかは議論があるようだが)、朝鮮人の間の「民族武断」、総力戦の重圧下での資源や人の総動員なども指摘している。
     労働者については、自由渡航のほか、動員としては1939.9からの自由募集、42.2から官斡旋、44.9以降の徴用の3種類。動員には法的裏付けがあり、「奴隷制度」ではなかったと著者はいう。また徴用による労務者は法的には他の動員よりむしろ保護されていたという。一方で労働環境や処遇の厳しさ、朝鮮人の不安定な法的地位なども指摘している。
     2018年大法院判決の多数意見は、原告の請求権を「不法な植民地支配」に起因するとする。05年の民官共同委員会の見解、11年の憲法裁の見解からの流れの上にあるものだ。人道性、犠牲者の尊厳や価値、植民地支配の不法性。いずれも国交正常化交渉時に注目されなかったか棚上げされていたものだ。尤も、当時これらを詰めていても合意など不可能だっただろうが。
     両国間で問題を顕在化させないという「暗黙の合意」に基づいていた請求権協定。著者が述べるとおり、これらの価値の重視は今世紀の新たな潮流だとしても、その潮流の中で合意が崩れているのだろう。

  • 東2法経図・6F開架:345A/Sh67t//K

  • 366.8||Ha

  • 日韓の国交正常化への議論の流れを丁寧に追う叙述は大変勉強になった。双方のギリギリの妥協と言わばごまかしの産物だと思うと、両国の当時の交渉担当者に頭の下がる思いである。

    本書はしきりに、日本の植民地支配は韓国の近代化を助けた側面がある、徴用工の労務環境はさして劣悪だったとは言えない、強制的なものも少なかった、植民地化自体は当時合法であり、世界中でそのような補償を行なった例はない。などという記述が目立つ。
    客観的に捉えて、全て事実の要素は含み、著者の言う通り、この問題は白黒で塗り潰せるようなものではないとは思う。
    しかし。仮にただ一人でも強制的に劣悪な環境で働かされた人がいたならば、制度自体を美化することはできない。これは、技能実習生問題でも同じことが言える。
    さらに、「歴史認識とは何か」で指摘されているように、諸外国もやってたからーなどという主張は、「恥ずべき」行為だと僕は思う。
    その点で、これらの主張は少なくとも日本側がすべきものでなく、韓国側の歴史研究の果てにこのような意見が出てくるのであればそれを受け止める、というのが筋であろうと思う。

    特に初めの二章の記述に気になるところが多く、喉に骨がつかえたような形になってしまったが、改めて問題の複雑さを認識できた点で、本書は優れていると思う。特に、韓国側の司法判断の意味をこれほどわかりやすく示されたのは初めてで、それだけで本書を読んで良かったとは思う

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著者プロフィール

現職:筑波大学名誉教授
専門分野:日本政治外交史
代表著書:『「徴用工」問題とは何か――朝鮮人労務動員の実態と日韓対立』中公新書、中央公論新社、2020年
『幕僚たちの真珠湾』朝日新聞出版、一九九一年/吉川弘文館、2013年
『宰相鈴木貫太郎の決断――「聖断」と戦後日本』岩波書店、2015年
『国家と歴史――戦後日本の歴史問題』中公新書、中央公論新社、2011年
『太平洋戦争とアジア外交』東京大学出版会、1996年

「2022年 『国家間和解の揺らぎと深化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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