現代民主主義-指導者論から熟議、ポピュリズムまで (中公新書 2631)
- 中央公論新社 (2021年2月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121026316
作品紹介・あらすじ
二〇世紀から現在にいたるまで、多様化していくデモクラシーの潮流を捉える。指導者、競争、市民参加、熟議・闘技、現代思想、ケアなど多様な論点を通して、民主主義の現在地とこれからを展望する。
感想・レビュー・書評
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割と内容が難しかった。民主主義や政治理論・思想の基礎的な知識がないとところどころ厳しい。
ただ興味深い点もいくつかあった。普段何気なく使っているような用語も、細かくみてみると自分が考えていた定義や意味合いも結構違っていたりする。 -
山本圭『現代民主主義』中公新書 読了。20世紀以降の民主主義論を代表的な論者の議論から概観する。指導者を競争(選挙)によって選ぶ方法論的なシュンペーターの議論は魅力的なものだが、これは一つの思想に過ぎないと相対化してくれる。また現代思想の視座からの考察が斬新。スリリングな感じがする。
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20世紀以降の著名な論者による民主主義論について広く取り扱っている。本書の特徴は政治学とは異なる現代思想といわれる哲学的な学問を扱っており、それを用いて民主主義の本質を問い直そうと試みていることである(第5章)。また、他の書籍との違いは、それに加え、現代の多元主義の基礎となった経済学者ヨーゼフ・シュンペーターの民主主義論や20世紀後半から活発になった熟議民主主義と闘技民主主義に関する議論が詳細に記述されていることが挙げられる。
シュンペーターの多元主義的な民主主義論はエリート主義的と批判されながらも、現代まで実務上受け継がれてきたものだといえる。彼の論理は非常に現実主義的で現代社会に適した形態である。しかし、エリート主義であることが災いして、ポピュリズムの台頭を招いてしまったことも事実である。多元的な民主主義を存続させるために私たちに何ができるか、それを考える上で本書は重要な知見を提供してくれる。個人的に現代思想(5章)は抽象的な記述が多くて難解であった。 -
ウェーバーから近時のポピュリズム、ケアまで幅広く取り扱います.各思想家の紹介の際は当時の政治を取り巻く状況から解説.また、理論同士の関係も丁寧.シュンペーターの理論に対する参加民主主義論の批判の流れは勉強になりました.さらに、デリダら現代思想も扱ってくれるので助かります.
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シティズンシップ、とかステークホルダーとか、熟議とか言う名目で、ネイション(国民国家)を否定するような民主主義論がその筋にあふれていることを知って背筋がゾッとした。このようなネイション(国民国家)の否定と戦うためには、ポピュリズム的なモノは有効な武器になるなと再認識。
ああ、「熟議」とか「討論が足せ論調さ」は変更した専門家が偏った情報を与える形で民主党政権が悪用してたな。 -
20世紀以降の民主主義論について、指導者民主主義、競走型エリート主義、多元主義、参加民主主義、熟議と闘技、現代思想に至るまで、その理論と言説をコンパクトに解説
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最近読んだ本数冊に民主主義がキーワードとして出てきたので読んでみた。
民主主義という言葉の曖昧さ、民主主義という枠の中での目標や良いとするものの移り変わりを知れてためになった。
デモなど選挙以外の政治参加についての見方が変わる。
理解はしきれてないので後でもう一回読みたい。 -
政治学の視点から、20世紀以降の民主主義観の移り変わりがまとめられています。教育学が専攻である私にとっては、少々難解でした。政治学に関する背景知識があると、読みやすいと思います。
また、この本から、民主主義の捉え方が多様であると気づけました。この多様な捉え方は、政治学だけではなく教育学(特に社会科教育学・シティズンシップ教育学)を専攻する人も知っていて損はないと思います。なぜなら、多様な捉え方を活用し、教育実践の内容・方法を分析することで、実践が目指すまたはもたらす社会の在り方まで考察可能になるからです。
例えば、シティズンシップ教育にて行われる、選挙への投票率上昇を目的とした実践について。この実践の結果、投票率が上がることは一見良いように思えます。ですがシュンペーターの民主主義観から捉えた時に、子ども達が「民主主義=選挙」と学んでしまったら、結果的に「競争型エリート主義」の社会に近づく可能性が高いと分かります。
シュンペーター以外にも、多くの20世紀以降の政治学者の民主主義観がまとまっています。彼ら彼女らの多様な民主主義観を習得・活用したい人にとって、この本はおすすめです。