戦国日本の軍事革命-鉄炮が一変させた戦場と統治 (中公新書 2688)
- 中央公論新社 (2022年3月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121026880
作品紹介・あらすじ
鉄炮は一六世紀中頃にいくつかのルートから日本に伝来した。鉄炮鍛冶により瞬く間に国内で大量生産されるようになると、長槍や騎馬隊が中心だった戦場を一変させた。さらに織田信長は検地により兵站システムを整え、鉄炮の大量使用を実現して、天下統一への歩みを加速させた。攻城戦・海戦では大砲も活用されてゆく。火器がもたらした革命的な変化が秀吉、家康と引き継がれ、近世を到来させるまでの激変を活写する。
感想・レビュー・書評
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火器と検地による中世システムからの脱却が主題。信長が戦争でアドバンテージを取れたのは、鉄炮の大量運用だけでなく、良質の火薬と弾丸の調達ルートを握っていたからで、キリスト教保護も交易を担うポルトガルとのバーターだったとする説明は腑に落ちた。もっとも明や東南アジア交易などもいずれは日本の商人が担い、それに伴って宣教師のプレゼンスも低下しただろう事は、秀吉以後の経緯が示す通り。太閤検地の前段階、すでに織田検地による石高制が進んでおり、兵農分離で可能になった収穫期に縛られない大量動員も天下統一と不可分だった。タイトルで軍事革命と銘打つが、それを可能にしたのは流通の掌握や統治システムの根本変化あってこそで、それが戦国を終焉に導いた根本要素と思えた。
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鉄炮の普及を起点とする軍事革命が近世社会到来を加速させたとする視点から、鉄炮の導入・普及の展開、それによる戦術・戦略の変質、さらには統治体制の転換にいたる過程をたどる内容。軍事的要請から社会変革にいたる道程が興味深い。
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【請求記号:210.4 フ】
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鉄砲の普及から石高制、海外貿易まで、戦国時代の技術制度の革新について触れられている。
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もっと鉄砲にフォーカスしてるかと思ったらそうでもなかった。長篠以降、鉄砲や新しい技術がどう利用されてきたのか、実はよく分からなかった。ちょっと残念。
当然だけど鉄砲を利用するためには弾丸と火薬の用意が欠かせない。つまり兵站が勝負になるわけで、物量がモノを言う時代がやってきたってことらしい。信長が生きていれば、日本ももっと「兵站を大事にする軍事思想になった筈」ってのは言い過ぎだなぁ。 -
第1章 ヨーロッパから日本へ
鉄炮伝来
鉄炮を支えた「科学者たち」
世界貿易システム
鉄砲導入と天下人の役割
第2章 戦場の変貌
傭兵たちの自治
付城戦の時代
陸戦と連携する安宅船
大会戦の実像
第3章 統一戦争を実現した「織田検地」
陣立書・軍法・軍役
石高制検地
巨大兵站システム
仕置令の系譜
第4章 軍事革命が日本にもたらしたもの
近世軍隊の誕生
「公儀の軍隊」の現実
大規模一揆と幕府軍
武装国家の創出
近代国家とはなにか -
女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000056489
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東2法経図・6F開架:B1/5/2688/K
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<目次>
はじめに 鉄炮がもたらしたもの
第1章 ヨーロッパから日本へ
第2章 戦場の変貌
第3章 統一戦争を実現した「織田検地」
第4章 軍事革命が日本にもたらしたもの
むすび 近世国家とはなにか
<内容>
最近読んだ本郷和人氏の『「合戦」の日本史』の冒頭で、日本は戦争の研究がされていない、と述べていたが、この本はそれに対する答えが一部載っているような気がする。第3章以降は、著者の本職の「近世国家」の成立の謎へとつながるのだが、その根本が「鉄炮」にあると見ているため、この部分をかなり細かく分析しているからだ。鉄炮は技術の必要な武器で火薬が高価⇒農民の教育、つまり歩兵(足軽)の誕生⇒大規模に鉄炮を使いこなすには、収入を増やす必要がある⇒「検地」により、米を基準にする必要がある⇒それを成し遂げた信長、それを後継した秀吉がこれを実行した、という論理だ。一方で、貨幣を用いなかったのは、貨幣が日本に不足していて、鐚銭(私鋳銭)が多く出回り、その管理や分類が大変だったから、ということも納得した。