「美味しい」とは何か-食からひもとく美学入門 (中公新書 2713)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121027139

作品紹介・あらすじ

あるものを美しい、醜い、などと評価するとき、私たちは何を考えているのか。評価を下すのに用いる「センス」とは。こうしたことを考える学問が美学だ。本書は、絵画や音楽ではなく、身近な食事から美学の扉を開く。「美味しい」「まずい」という評価は人それぞれ? レビューサイトの情報があると純粋に食事を楽しめない? 美食の感動は言葉にすべきじゃない? そもそも料理は芸術か? やさしくも奥深い美学入門。

感想・レビュー・書評

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  • ●食事は、栄養の大小、体に良い悪いだけでなく、美味い不味いが評価されるものである。
    ●本書で取り上げる「美学」は、私たちが評価を下す際に用いる「センス」を考察対象とする哲学である。何かを美しいと評価する時、私たちは何をしているのか。
    ●今まで、絵画や音楽を鑑賞するために使われる視覚や聴覚は、知性や思考が関わる「高級感覚」であるが、食事にかかわりそうな感覚、味覚や嗅覚、触覚は、動物的で本能的な「低級感覚」だとみなされてきたが本当にそうだろうか。
    ●私たちが普段「味」と呼んでいるものが、味覚だけで知覚されるものでは無い事は明らかだ。
    ●聴覚で感じられた音によって、触覚で感じられる食感に錯覚が起きる。見た目で味が変わる。
    ●おいしい不味いは評価的判断。甘い辛い酸っぱいは記述的判断。
    ●センスや評価は、主観的な好みの問題だ「主観主義」この考え方では、評価に正解不正解は無い。個人の態度表明に過ぎない。
    ●もし評価が主観的なものならレビューを参考にする必要ない。客観主義は、自分が何を食べるかを決める際に、他人の評価を参考にしていると言う行動から支持される。
    ●食に対する知識が増えた方がより多くの楽しみを得られる。
    ●味の体験は言葉で完全に再現できるものではないが、ある程度伝われば充分なのだ。
    ●芸術と現に認められている者が持つ特徴のいくつかは、料理にも備わっている。だから「料理は芸術ではない」と主張するのは簡単ではない。

  • 味には五感すべてが働く

    対象が持つ価値と 経験が持つ価値

    味を文字通り表す言葉は少ない

  • 美味しい、まずい、という評価はただの好き嫌い? 余計な情報があると純粋に食事を楽しめない? 食をテーマにした斬新な美学入門。

  • 2023読んだ本

  • 何かの本で引用されており、気になって図書館から借りてきた本

    タイトルに興味を惹かれて読んだところ、本当に誠実に、「美味しい」とは何か、料理は芸術なのか、について一つ一つ丁寧に検証し、考察していく。
    舌だけで味はわからない、五感すべてを使うことで美味しいかどうかを判断している、というのは言われてたしかに、なるほどなと納得した。
    たとえば、見た目で味が変わることについて、イギリスのお菓子メーカーが、チョコレートの味は変えていないのに、形を四角から丸い形にしただけで「甘すぎる」「前の方が良かった」とクレームが寄せられた、というのが面白い。
    形だけでなく色も味に影響を与える。ピンクに着色した液体と、緑色に着色した液体では、緑の方が糖分が10パーセント多かったとしても、ぴんくの方が甘く感じられる。

    また純粋主義について検証していくところも面白かった。本当に味覚だけの情報で料理を評価することは可能なのか?ということについて、たとえばラーメンが出されたときに「これは食べても大丈夫なのか?」といちいち考えない。安全性に関する知識は純粋主義の主張する知覚的情報に含まれていない。
    などなど、一つ一つ、紐解いて丁寧に考察する流れは「そっから考えるのか」という気持ちにさせられる。

  • 【請求記号:701 ゲ】

  • これは個人的に素晴らしく勉強になった。

  • [鹿大図書館・冊子体所蔵はコチラ]
    https://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC16395019

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC16395019

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著者プロフィール

1985年生まれ。九州大学大学院比較社会文化研究科講師。著書に『悲しい曲の何が悲しいのか:音楽美学と心の哲学』(慶應義塾大学出版会 2019)、『知覚と判断の境界線:「知覚の哲学」基本と応用』(慶應義塾大学出版会 2017)他

「2022年 『談 no.125』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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