近代日本外交史-幕末の開国から太平洋戦争まで (中公新書 2719)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121027191

作品紹介・あらすじ

1853年にペリーが来航し、日本は開国へと向かう。明治維新後、条約改正や日清・日露戦争、第一次世界大戦を経て、世界の大国となった。だが1930年代以降、満州事変、日中戦争、太平洋戦争へと突入し、悲惨な敗戦に終わる。日本は世界とどう関わってきたのか。破局の道を回避する術はなかったのか。国際秩序との関係を軸に、開国から太平洋戦争まで、日本外交の歩みを通観する。近年の研究をふまえた最新の近代日本外交論。

感想・レビュー・書評

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  • 世の中の様々な事柄に関しては、「〇〇の分野」という程度に分類することが出来る。逆にそういう「〇〇の分野」という程度の分類を適宜行いながら、広範な事項を理解しようとするものということになるのかもしれない。
    「外交の分野」というようなモノも間違いなく在るのだと思う。本書はその「外交の分野」の辿った経過、「外交史」という主題に光を当てた一冊だ。
    現在「国家と国家の交渉関係」とい意味合いで一般に用いる「外交」という語は、幕末期に「外国交際」という言い方が現れ、それが縮まった表現であると言われているらしい。そういう意味で「幕末の開国から」と謳う本書のスタートラインは善いように思う。本書は「“国際社会”に改めて参入」というような具合に、各国との“外交関係”が開かれて行ったような時期から説き起こされている。
    「外交」とでも言う場合、広く対外政策全体を指示する感が強く在るかもしれない。「外交」には、少なくとも対外「政策」を決定して行こうとすることと、決定された政策を相手国との「交渉」によって実現しようとすることという二面が備わっているように見受けられる。これらは厳格に区別されるのでもなく、入り混じりながら進んでいるように思う。
    「近代」という程度に長い歴史の一部を区分するのは存外に難しいかもしれない。が、本書では「近代」として「太平洋戦争まで」を設定している。太平洋戦争の開始と敗戦が本書の最後の章になっている。更に、全般を纏めた終章も在るのだが。
    国家間の争点を武力によって解決しようとすることを「戦争」と言う。対して「外交」は「交渉」による解決を目指す。両者は違う。が「表裏」という一面も在るのかもしれない。「幕末の開国から太平洋戦争まで」というような時期に日本が辿った経過を観ると、こういう思いが少し強まる。
    「“国際社会”に改めて参入」という感で「外交」という活動を始め、諸外国との懸案事項を「交渉」によって解決することを旨としては来た。が、目指そうとした「政策」が実現し悪くなる場面では「交渉」の「具」であるかのように「戦争」という手段も登場、または回避し悪くなってしまっている。
    本書では時系列に沿って、「国際社会への参入」、「東アジアと近代日本」、「大国の一角へ」、「動乱の1910年代」、「第一次大戦後」、「国際社会との対決」というように「幕末の開国から太平洋戦争まで」という時期を章に分けて説いているが、判り易い。
    更に、外交官としての活動を経験した人達が外務大臣に抜擢されて来たという経過等、本書の中で扱っている時代の「外交」の「担い手」という話題も在って興味深かった。
    「外交」というモノが辿った経過のような事柄は、少し時間を割いて学ぶべきこと、とりあえず知っておくべき経過なのだと思う。本書はそういう目的には好適な一冊となっていると思う。
    この種の本は、新しい研究成果も織り込まれる等しながら、或る程度新しくなって行くような内容だと思う。この「“外交”が一寸難しい…」という「今」であるからこそ、考える材料として手にしたい感だ。

  • 【請求記号:319 サ】

  •  近代日本の国際社会への参入から日本の敗戦までを範囲として、指導者層や外交担当者が多様な外交課題をどのように理解し、対処してきたかを通史的に記している。充実した文献案内を付すかわりに本文中で個別研究を参照することは省かれており、記述は論考自体に集中している。
     外交担当者という一種のプロ集団における国際外交感覚と、一般国民におけるそれとの乖離という問題が一貫して重視されており、そこから日本の外交の成熟過程と崩壊過程がともに検討されることになる。国際情勢という外的要因からの照射よりもむしろ、国内状況や指導者層の性向といった内的要因の分析に重きを置いた内容となっている。
     

  • これまで多くの類書が世に出てきた「近代日本外交史」。また、新書というコンパクトなフォーマットで幕末から太平洋戦争までを叙述するという困難。このふたつの難題に30代の気鋭が挑むんだから、その気概がすごい。

    叙述の柱は「国際社会と日本」「東アジアの変容」「日本の対外膨張」「国家意思決定システム」の4つで、最新の知見も取り入れられつつ近代日本外交史が手際よく叙述されている。

    太平洋戦争を最後まで止められなかった要因のひとつに、「システム」との関連で指導者不足を挙げているのが印象的である。

    また終章で、日本外交に戦争ではない別の道があったのかとあえて問うのも、挑戦的である。そしてそのチャンスを、1920年代、原敬などが軍縮など開明的な方向性をより明確に打ち出していれば・・・という時点に求めている。ここも新しいというか、興味深い提起だと思った。

  •  幕末からポツダム宣言までの簡潔な通史。軸は国際秩序や規範との関係だ。明治期から日本のプロの外交担当者たちは既存の国際秩序とその範囲内での外交、発展を意識していた。三国干渉でも力の重視に変化したわけではない。ただしここでの国際秩序や規範とはあくまで西洋の帝国主義外交のものだったが。
     しかしWWI後から、中小国の発言権、帝国主義批判など、限界はあれど国際規範は変化していく。かたや日本国内では、満洲・満蒙へのこだわりという蓄積により外交選択の幅が狭まっていったことに加え、外務省内の分岐、世論や軍の影響力増大によりプロの外交で完結しなくなる様相が1930年代に表面化、という流れだ。

  • 京都府立大学附属図書館OPAC↓
    https://opacs.pref.kyoto.lg.jp/opac/volume/1251941?locate=ja&target=l

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000059947

  • 日本の外交の近代史を分かりやすく解説していた

  • 日清・日露戦争などを経て世界の大国となった日本。なぜその後の国際秩序に対応できず敗戦に至ったのか。日本外交の歩みを通観する。

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著者プロフィール

明治学院大学法学部准教授

「2023年 『帝国日本の外交 1894-1922 増補新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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