京都の食文化-歴史と風土がはぐくんだ「美味しい街」 (中公新書 2721)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121027214

作品紹介・あらすじ

三方を山に囲まれ、水に恵まれた盆地・京都。米や酒は上等で、野菜や川魚などの食材にも恵まれた。それだけではない。都であった京都には、瀬戸内のハモ、日本海のニシンなど、各地から食材が運び込まれ、ちりめん山椒やにしんそば等、奇跡の組み合わせが生まれた。近代以降も、個性溢れる珈琲文化、日本一のパン食、さらにはイタリアンやラーメンまで、新たな食が生まれている。風土と人が織りなす食文化を探訪する。

感想・レビュー・書評

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  • まんべんなく取り上げた感じ。

    盆地だったり、地下水だったり
    夏暑くて冬寒かったりと
    気候風土が育てた「地」の食べものが
    公家文化や寺社の制約(精進)にもまれて
    いまあるような京料理になったのかな。

    お漬物、お惣菜、パンにお菓子も
    美味しいものがたくさんあって
    食べられる幸せがここに♪

  • 題名を見て、何となく思った以上に興味深い内容であったと思う。紐解き始めると、頁を繰る手が停められなくなってしまい、素早く読了に至ってしまった。
    率直に申し上げて「〇〇地域の食文化」というようなことを言ってみても、「何を如何論じるのか?」ということになってしまうと思う。が、本書は「京都の食文化」と称して、それを広く深く語っていると思った。そういう辺りに引き込まれてしまったのだ。
    「食」ということになれば「食材」が不可欠だが、古くはそれが地形の制約、物流の制約というような事柄の影響も受け、そうした食材の利活用に関しても調理技術等の制約も在った訳だ。
    そういう物理的な事柄に加えて、京都の場合は“都”として他地域の文物や流行が流れ込むという要素も在った。加えて、人々の営みという中で「利用される食事」、「食事の選択肢として人気が高まるモノ」というようなモノが自ずと在る。
    こうした要素が色々に絡み合って、地域の変遷、社会の変遷の中で「食文化」とでも呼ぶべきモノが構成されて行き、立ち止まって眺めた時に見えたり感じたりするモノが在る。更に「これからは?」と考えるべき何かにも気付く場合さえ在るかもしれない。
    本書は正しく上述のような具合なのだ。「京都に伝わる」ということで或る程度知られる何かや、「京都ではこんなモノも人気が高い」ということで、記憶に止めたいような何かを列記するようなことに留まらないのだ。
    本書は「食」という切り口で、「京都」という都市が現在の様子になって行くまでを俯瞰し、加えて「何処へ如何向かう?」を考える材料を提供しているというような趣が在ると思う。
    結局、京都は他の大都市よりも狭い感じな場所に一定以上の人口が集積し、来訪者も多いので、「食材を生産、製造する人達」、「技術的なことや歴史的なことを研究するような人達」、「料理として人々に食材を供する飲食業等に携わる人達」が寄り合って、色々と創って来た、そして今後もそういうように歩んで行くという側面が在るということなのかもしれない。或いはこれも「モノを造る」、「造られたモノを売る」、「造る、売るを考えて紹介する」というような三者が一体になって地域を創造するというような、より広い事柄を示唆するような内容が在るかもしれない。
    そういうような他方、比較的近年の所謂「オーバーツーリズム」という様相の中、食文化に関連する事柄で「少し荒廃?」という一面も否定し悪いことが本書では指摘されていた。自身もまた、「京都」というようなことになれば「一来訪者」であるが、京都に限定せず、「訪ねる先」に関しては「当地の“普通”の片隅」に「少しばかり御邪魔」という具合で、「散らかさない…」ということを多少意識すべきなのかもしれないというようなことも思った。
    本書は「存外な労作」という感じがしたが、他方で「変に力が入り過ぎていない」という感じで読み易い。広く御薦めしたい。

  • 京都で「だし文化」が発展した背景に発見がありました。
    京都に行くのが楽しみになる本。

  • 【請求記号:383 サ】

  • これからも日本食と地域の特性について理解を深めていきたいと思った。

  • 読了 20230513

  • 食をテーマにした京都の文化案内。食における「水」の重要性を説き、水の都、京都の豊かな水資源を語る。京都の歴史、風土、観光史跡案内としても水準の高い良書。
    京料理とは?(かつおと昆布の交ぜ出汁の妙)公家と武家の料理、精進料理、京菓子、京料理店、鯖街道、京野菜等を紹介し、締めに京の食文化行方を語る。

  • たまに京都に行く大阪人の私が、へえーと初見のことばかりでした。京都観光をより楽しくさせてもらえる食の文化史。
    地理的要因や歴史的背景をふれながら、京都地産の食材から伝統的な懐石・会席まで幅広く紹介してくれる。伝統的な美味い店の紹介も。
    歴史好きで京都の食に興味がある人は絶対に買うべき一冊。京都の食を一層深堀するための参考図書を紹介してくれるのも心憎い。著者のさりげないこころ配り、好きです。

    本作に記載されていない京都の美味い食品や料理があればコメントやレビューをお待ちしています。

  • 京都は観光で行くのは良い場所であるけど、住みたいか?と質問されるなら住みたくない と答える感覚、解る。1000年以上日本の首都だけあって他所者を拒むオーラ発しているというか(笑)
    流行と伝統を(別名魔改造)混ぜつつ、互いを打ち消すことなくしかし新しい味も生み出す日本の料理の型、京都が生み出したのかと

  • 京という一字がすでにブランドであり、ゆえに本書の様なテーマも成立する。風土と歴史がもたらしたこの地域ならではの食文化、すなわち季節の食材、調理法、お店のスタイルから、食卓を囲む大切さや料理の評価(フィードバック)による食のレベル維持まで、包括的に話題を取り上げている。ゆく川の流れは絶えない世の中にあって、独自性を保つことの難しさを、京都ほど知っている街は無く、急激な外国人観光客の増加に困惑したり、コロナ騒ぎによる閑古鳥で苦境に立ったりの変転も、長い歴史の中で経てきたイベントの1つに過ぎないはず。ブランド力を維持し、さらに高めるには、この10年間はむしろ良い試練だったと、後から振り返る事ができればと思う。

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著者プロフィール

1952年生まれ
京都大学大学院農学研究科修士課程修了
総合地球環境学研究所副所長・教授 農学博士
序章執筆
主 著 塩の文明誌(共著,NHKブックス,2009),イネの歴史(学術選書,2008),よみがえる緑のシルクロード(岩波ジュニア新書,2006),稲の日本史(角川選書,2002)など


「2010年 『麦の自然史 人と自然が育んだムギ農耕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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