エルサレムの歴史と文化-3つの宗教の聖地をめぐる (中公新書 2753)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121027535

作品紹介・あらすじ

ユダヤ教誕生の地であり、キリスト教やイスラム教における聖地が数多く存在することでも知られる古都エルサレム。今も世界中から巡礼客が訪れる「聖都」である。古代イスラエル王国が興った紀元前一〇〇〇年ごろから現在まで、激しい領土紛争をも耐え抜いた史跡には、唯一無二の魅力が宿る。本書は、同地に息づく歴史と文化を余すところなく紹介。「聖跡」成立の知られざる背景も交えつつ、街全体を美術館のように捉え、その巡り方を指南する。

感想・レビュー・書評

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  • 浅野 和生 教授[西洋美術史、ビザンティン美術]愛知教育大学 | 教授の授業
    http://www.enjoyment.jp/prf/aichi-edu/asano_kazuo/index.html

    エルサレムの歴史と文化 浅野和生(著/文) - 中央公論新社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784121027535

  • エルサレムの歴史と文化というタイトルだけど、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の各宗教ごとにエルサレムの聖跡(教会や聖典の場面の遺構など)を紹介しているだけで、ちょっとしたマップのない中途半端なガイドブックみたいになっている。キリスト教に関することが半分以上を占めており、その他は少なめ。内容的にも、〜だろう、とか想像で書いてるふうで、歴史と文化の参考になるのかわからない。

  • スポット毎に歴史をまとめていくので読みにくく、冗長に感じた。聖墳墓教会の使用権をギリシア正教会とフランシスコ会に抑えられて不満のあるプロテスタント諸派がゴルゴタの丘探し始めたというのは面白かった。

  • 宗教というストーリーにまつわるスポットが密集するエルサレムを、各名所の史的価値や考証交えて描写していく。史跡が山の様に出てきて、それぞれの研究成果についても詳しいので、歴史を知りたい旅行者にとってはガイド本としても役立ちそう。構成的にはキリスト教関連の配分が多くややバランスを欠いた印象。

  • 「専門的研究に裏打ちされたような情報を一般向けに判り易く説く」というのが“新書”なのだと思うが、本書は正しくその「新書らしい」という感じの一冊に纏まっていると思う。
    今年は「2023年」だ。これは「イエス・キリストの生誕の年」ということになっている年を「紀元」とした数え方の「西暦」だ。この「西暦」というようなモノが始まった頃、更にそれ以前からの歴史が積上げられている都市というようなモノの存在は、「何やら凄い」と思う。極個人的には、幼少の頃に「住んで居た家の近隣の建物が竣工していない様子で、それらの工事現場を毎日眺めていた」という経験を有している、言葉を換えると「眼に留まる近所の建物の悉くが、未だ幼かった自身より“若い”」という状況下に在って、更に国内でも「古い街」の歩みが「相対的に少し短い」という地方に育っていて、100年を超えているような経過を有する建造物等を然程視ないままに長じたという面が在る。故に、本書が取上げる「エルサレム」というような場所は「詳しく知るでもないが、何やら凄い…」という程度に思ってしまう面が在る。
    本書はそのエルサレムの長い長い経過、現在に伝わる史跡等を紹介する内容の一冊である。「西暦」というようなモノが始まった頃、更にそれ以前からの歴史が積上げられている都市の経過と、知られている史跡がよく判る内容だ。殊に、「西暦」の「紀元」とされる「イエス・キリストの生誕の年」ということが在るが、そのイエス・キリストが実際に活動したとされるのがエルサレムの辺りで会ったと伝わっている訳で、関連の事項が本書では非常に詳しい。
    イエス・キリストの物語は(新約)聖書に綴られているが、時代が下るに連れて美術作品で色々と表現もされている。そして「行間に想像し得る動き」というモノも考えられる。エルサレムの聖墳墓教会の周辺には、そういう史跡が殆ど悉く設定されていて、祈りをささげる場となっていて、各々の場が色々な経過を持っているのだという。それらが本書に詳しく紹介されているのだが、何やら凄い。驚きながら読み進めた。
    本書は、このキリスト教関係のことや、それ以前のユダヤ教関係のこと、それ以降のイスラム教関係のこと、更に少し分類し悪い史跡と、遥かな時の流れを伝える都市が擁している様々なモノを、極力漏らさずに判り易く伝えようとしている労作だと思う。或いは、色々な立場の人の非常に強い思い入れが滲む場所であるだけに、エルサレムは何時も“争点”のようになってしまうということに、何か変に納得してしまった。
    興味深い一冊で、広く御薦めしたい。

  • 227-A
    閲覧新書

  • キリスト教にかなりの頁数を割かれているが、ユダヤ教、イスラム教とともに、エルサレムがたどってきた歴史を解説。旧約時代のユダヤの族長、アブラハムの話から始まり、ダビデとソロモンの黄金時代、バビロン捕囚、そしてローマ軍に占領されて、本格的なディアスポラが始まる。ペルシア、ビザンティン、オスマン帝国とさまざまな国や政治体制の下に置かれたエルサレム。
    個人的に全く知らなくて面白かった話は、聖アンナ教会のエピソード。フランス国王はオスマン帝国から聖墳墓教会などの聖地管理権を認められていたが、王政が倒れて管理権を失い、その後ナポレオンが戦って、聖アンナ教会の管理権がナポレオン三世に渡されたという。2020年、マクロンがエルサレム訪問した際、聖アンナ教会の警備にあたっていたイスラエル兵の退去を求めたのだそうだ。(フランスの管理権下だから)。複数の宗教、多くの人びとが様々な方法で”聖地”を大切にしていて、聖地の奪い合いをしているわけだが、聖地巡礼こそしても、奪い合いとは距離を置いていると思っていた現代のフランスにも、こんな側面があったのだと思うと軽い衝撃を受けた。
    十字軍は侵略のための軍隊ではなく、武装した巡礼だという”彼ら”側の解釈も興味深い。
    全体として個々の聖地を巡る説明が厚い。本のタイトルと若干ずれているような気もする反面、エルサレムの歴史と文化を語ろうとすると、聖地を3宗教から語らざるを得ないということなのだろうとも思う。呼び方は異なれど、唯一神を信じ、同じ預言者の言葉を解釈する「聖典の民」が、終わらない争いを繰り広げている。エルサレムという場所自体が、ユダヤの民、バビロン捕囚、ローマ、ペルシャ、ビザンティン、オスマン、イギリス、そして現代のユダヤ・イスラエルとさまざまな人々によって支配され、十字軍や巡礼者のためのホスピス、騎士団など多くの訪問や”侵害”を受けてきていて、”解決“というよりも妥協や譲り合いでしか共存はできない土地なのだと改めて思った。

  • あまりに長く複雑な歴史を理解するのはとても難しいと思った。

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著者プロフィール

浅野和生
1956(昭和31)年生まれ. 大阪大学大学院博士課程中退. ギリシア国立アテネ工科大学建築学部美術史学科留学(ギリシア政府給費留学生). 愛知教育大学助教授, 同教授を経て, 現職. 専門:西洋美術史(特にビザンティン美術). 著書『イスタンブールの大聖堂』(中公新書, 2003)『サンタクロースの島』(東信堂, 2006)『ヨーロッパの中世美術』(中公新書, 2009)『図説 中世ヨーロッパの美術』(河出書房新社, 2018)ほか

「2023年 『エルサレムの歴史と文化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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