言語の本質-ことばはどう生まれ、進化したか (中公新書 2756)
- 中央公論新社 (2023年5月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121027566
感想・レビュー・書評
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なんで人間だけが言葉を喋るの??っていう今までの人類史の中でも上位に入ってきそうなキングオブ謎解きに挑んだ本
謎解きの手がかりとなるのは「オノマトペ」と「アブダクション推論」??
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言語の本質とは何かというものすごく大きな問いについて、身近なオノマトペという言葉を発端に考えていく。
手に取ったきっかけは、言語の本質を知りたいというよりも、「オノマトペってそういえばあんまり考えたことがなかったかも」という小さな疑問からで、この小さな疑問が「言語の本質」を解き明かすスタートになってるとは思いもよらなかった。
ただ、テーマは難しいように思えるが、論理の流れが非常にわかりやすく、どの章もまとめがあるので、まとめで復習しながら読み進められる。
個人的には言語の本質への直接的な答えとしての、アブダクション推論の部分が本当に面白かった。 -
やっと。昨年の話題の新書、読みました。題名に気圧されていずれ…と思いつつ手にしていなかったのですが、あまり間を置くのも…と思い、いざ!しかし、さすがのベストセラー、するすると読めてしまいます。オノマトペという言葉にとって端っこに見える入り口から言語を話せるようになるってどういうことなんだろう?というまさに本質に遠回りしているようで一気にたどり着きます。このスピード感は新書という形式ならではのもの。識者が今年の新書大賞の有力候補に挙げるのも納得です。オノマトペと言語の本質を繋ぐのは「記号接地問題」と「アブダクション推論」という視点の導入です。そこから生まれる「ブートストラッピング・システム」も鮮やかでした。そして、この刺激的な論考が、言語学に身を置きオノマトペの研究に取り組んできた秋田善美と認知・発達学者として言語と身体の関わりを研究してきた今井むつみ、ふたりの5年に渡るキャッチボールから生まれたことにも大いに興味を引かれました。昨今の風潮の中で、指摘するのもどうかと思いますが、年齢の差20のふたりの女性科学者のバディな関係にこころ打たれました。新年に新シリーズがはじまったNHKの「アストリッドとラファエル4 文書係の事件録」と重ねて見たりして…。一人一人の研究ではたどり着かないところが見えてきている、ひとりの得意な領域がもうひとりの得意をスイングさせる相互作用。「ふたりでひとつ」の研究という面白さが溢れています。なにしろ章も分担ではなく、ふたりがかりの一人称です。この新書自体がアブダクション推論であり、「言語の本質」は「研究の本質」と思えた読書体験でした。
→ゲゲッ!今年の新書大賞受賞の記事に著者おふたりの写真が掲載されていて愕然。秋田喜美さん、男性だったんですね。(正確にはそれも未確認ですが…)「むつみと喜美」という女性バディのイメージ勝手に抱いてしまい申し訳ないです。自分の中のジェンダーバイアスにショックを受けています。すいません!って誰にあやまっているんだか… -
言語学のお話なので正直ちょっと難しいかな。
でもオノマトペの面白さに改めて気付くことができて読んでみてよかったです。 -
「多くの形容詞と同様、オノマトペは感覚のことばなのである」
「オノマトペは感覚イメージを『写し取ることばだという」など、オノマトペに関する記述はなかなか興味深かったです。
子どもの言語習得については、自分自身の体験に基づくこともあり、このような研究書を読むより、実際に子どもと接して気づくことのほうが多いと思いました。
外国語を学ぶとき、多義語に悩まされ、また日本語を教えているときも、学習者が苦労しているのをいつも見ています。
「オノマトペは単語が多義であることを子どもが理解するための足場をかけることができる」
とありましたが、やはり子どもならではかな、と。
「英語は『オノマトペ語彙が貧弱』というより、もともとオノマトペだった表現が、動詞として文構造の中核に取り込まれ表現されるようになった結果、オノマトペ性を失い、一般語化されてしまった、という仮説が真実味を帯びてくる」という記述には、なるほど、と思いました。
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SNSでユルい交流のある読書の先輩で、日ごろは主に海外文学を読まれているのが、めずらしく新書を読んでおられたのをお見かけし、興味がわく。
何でもたいへんな売れ行きらしく、発売間もないのに手元にやってきたのは再版であった。
言語とは何か、子どもは、AIは、どうやって言語を習得しているのか。あるいはおなじことだが、言語はどう進化したのか。
ちょうどいま我が家には、言語を習得しつつある子どものひとがいて、日々新しいことばを、言えたり間違えたりしていて飽きない。いま読めばいっそう愉しめるはず、とさっそく手に取る。
言われてみれば一つひとつは当たり前のことばかりが書かれている。学問とは多かれ少なかれそういうものだけれど、そこから繋がれる物語は驚異に充ちみちている。
何しろ読んでる途中で、ちょっと泣いたのだ。新書なのに、である。
我が家の一歳を少し過ぎた、まさに言語を習得しようと奮闘する子どもの、漕ぎだそうとする言語体系という大海原は、あまりに巨大で、その航海は如何に困難を窮めることか。
それらを子どもは(おそらくだが)平然とやってのけようとしている。
スポーツを観て、人類の偉業に涙することがある。この本から享けるのは、その種の感動に近い。
人類だけが言語を獲得できた。その鍵は〈誤り〉にある。誤りを犯すことで子どもは、ひとは言語を習得できるのだ。
僕ら大人が、子の誤りを訂正する。他者との遣りとりが言語の役割であるならば、その修正の過程こそが、コミュニケーションの第一歩なのかもしれない。
うちの子どものひとにも、いっぱい間違えてほしいとおもう。 -
空気のように当たり前にあって使っているけれど、私たちがイメージしているよりずっと複雑で謎が多い「言葉」、オノマトペとアブダクション推論という2つの鍵を使ってその本質、人間の根源にせまっていく。構想五年、オノマトペ研究の第一人者と言語の習得や習熟を研究してきた認知科学者が思考のキャッチボールをしながら共同執筆。
オノマトペのおもしろさ(音とイメージの繋がり、文法性)は言語学徒だった頃から常に頭にあったが、そもそもソシュール以来言語記号は恣意的で身体性もないというのがずっと本流で、音とイメージが融合したオノマトペはただの例外的なものという扱いだった。この本では、これこそ言語獲得の始まりにあるものとみており、言語の本質にちかづく鍵ではないかという立論にはワクワクする。音象徴や記号接地問題といった最近のキーワードも具体的な例や実験結果などからよく理解できる。
そして、演繹のような論理を正しく推論する能力ではなく、知識を想像力によって拡張したり、ある現象から遡及して原因を考えたりするような「アブダクション推論」、つい因果を考えとらわれてしまうのが人間の性だとは言われているが、これこそが(今のところ)ヒトならではの認知特性で言語獲得の大事なエンジンだという仮説、過一般化などの試行錯誤をともなう子どもの言語獲得や仮説の検証で少しずつ心理を救命してきた科学の歩みなどを思い、なるほどと思った。
さて、次こそは積読になっているデンマークと英国の認知科学者クリスチャンセン&チェイターによる話題作「言語はこうして生まれる」を読もう。web考える人に載った高野秀行との対談によると、この本の言わんとしていることは今井先生の考えとかなり近く共感できるということなので、たぶんぐっと読みやすくなっているはず。 -
書評のサイトで紹介されていて興味を持って購入。なかなか手に入らず。アマゾンでも待ち状態になっていて少し諦め気味だったが近所の書店で購入できた。書店員さんの取り置きを譲ってもらった感謝。
中身は言語学で知っている内容もあったが、特に最後の章が著者の言いたいことを語っていて興味深い
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オノマトペから、言語の本質へ
ちょっとこれは、購入しなきゃ。
記号接地問題
アブダクション(仮説形成)推論
例えば、英単語を暗記するー日本語の意味と対応させてそれは一対一対応ではない。バラバラと覚えるより、法則を見つけて応用していく方が面白い。単語も芋づる方式で関連づけて覚えることを少なくした方がいい。
でそれは、本書では、ブーストラッピングサイクルとして、アブダクション推論を、用いる学習だと。
子どもが言語をどのように習得していくのか、チンパンジー(クロエを除く)は対称性推論(逆方向への一般化)はしない。人間の幼児だけだ。進化の過程で、徐々に形成されていったものかも。 -
ちょっとタイトル詐欺に近い。90%以上オノマトペについての考察。
最後に「論理を正しく推論する能力ではなく、知識を創造力によって拡張したりある現象から遡及して原因を考えたり、1番最もらしい説明を与えようとする人間の思考スタイルこそがその駆動力なのではないかと考えた。このような推論はアブダクションと言う推論様式に含まれる。」という箇所がタイトルにリンクしている。ここに至るまでの文章には興味が持てなかった。