後藤新平の台湾-人類もまた生物の一つなり (中公選書 113)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121101136

作品紹介・あらすじ

初代満鉄総裁、二度の内務大臣、外務大臣、東京市長……。首相にこそ手が届かなかったが、後藤新平は誰もがその名を知る大政治家の一人だ。しかし、後藤の素質と思想が最大限に活かされ、力量が発揮されたのは四十代の台湾総督府民政長官時代であった。「アヘンの島」と呼ばれ、ゲリラの絶えなかった彼の地が植民地経営の一つの成功例と言われるまでになったのはなぜか。政治指導者のリーダーシップの原型を開発経済学の泰斗が描く。

感想・レビュー・書評

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  • 初代満鉄総裁、東京市長、内務大臣を歴任した後藤新平は40代のうち8年半に亘って台湾総督府民政長官を務めた。日清戦争で割譲されたものの、当時の台湾はインフラが未整備でアヘンや風土病が蔓延していたうえに、現地住民からの抵抗を強く統治が困難を極めた。後藤新平はそうした中で衛生技官としての知見を活かして台湾の統治を行った。
    歴史の教科書では台湾割譲と一言で済まされてしまうが、現地での対応、本国との折衝など実務的には大変な難業だったことが分かった。
    ただ、本書は全体的に後藤新平を揚げる感が強く、中立客観的な視座ではなかった。

  • ふむ

  • 後藤新平が「アヘンの島」台湾を変えた――。開発経済学の泰斗が後藤の総督府民政長官時代に発揮した政治的リーダーシップを描く。

  • 東2法経図・6F開架:222.4A/W46g//K

  •  体系立った研究書というより、いくつかの側面に絞ったドラマ仕立てという感じた。それだけに読みやすい。本書の後藤は30代の終わりから40代であり、現在の感覚では職責に比べかなり若い。著者は「台湾時代が後藤の青春だった」と述べている。
     台湾時代の前史である日露戦争帰還兵の検疫では、短期間に検疫所、宿舎、汚物焼却場に火葬場までの施設を建設しており、そのスピード感に驚く。児玉と後藤の初動の手腕以上に、当時の政府や社会にそれを許す環境があったのだろうか。
     後藤の台湾統治では、現地の状況に即した「生物学の原理」という語が何度も出てくる。阿片漸禁策や公衆衛生だけでなく、土匪の帰順についてもだ。軍人総督の時代であっても、法や秩序、武力が先に立つ統治法とは異なるようだ。乃木総督時代の「三段警備」による土匪制圧の失敗との対比は明らかだ。保甲制度など旧慣も活かしたという。
     また、児玉はもちろん西郷従道からの信任も得て、加えて招聘した部下の実務者にも恵まれたのも有効に働いたようだ。
     児玉総督時代の終盤、義和団事件と台湾の関係は新しい気付きだった。厦門出兵を図る「対外硬」の山県・桂と同調する児玉・後藤ライン、列強の干渉を嫌って干渉を抑える伊藤の対比は、文民統制の観点にも通じる。
     ただ、本書のあとがきで「韓国の反日」と「台湾の親日」を単純に対比させているのはいただけなかった。

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著者プロフィール

拓殖大学元総長

「2022年 『世界の中の日本が見える 私たちの歴史総合』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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