桶屋の挑戦 (中公新書ラクレ 270)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121502704

作品紹介・あらすじ

「産湯の湯桶から棺桶まで」の大活躍だった木桶も、「古い」「不便」などと敬遠され、いまや絶滅寸前。桶の良さを伝えていきたいと、各地で桶屋や桶をつかう食べ物屋たちが立ち上がった。

感想・レビュー・書評

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  • この本に出る「桶(おけ)」とは、おもに大桶と呼ばれる、日本酒や味噌、醤油を仕込んだり、あるいは貯蔵しておくための、木でつくられた文字通り大きな桶を指します。だけどほとんどの人は、そんな木桶を実際に見たことがないはず。私もそう。酒造の現場では、木桶はほぼ100%ホーロータンクに取って代わられています。

    ホーロータンクは微生物の制御がしやすく、洗いやすく、そして中身が漏れることがほとんどありません。この点だけで見ると、圧倒的に木桶は不利です。しかし、少しずつですが、木の桶でお酒をつくってみよう、という動きが復活し始めました。

    セーラさんはアメリカ生まれの女性で、長野県小布施の小さな酒蔵をとても気に入りました。小布施は四季の風景が美しく、人々の生活にも風習として美しいものがたくさんあります。彼女は酒造に関してはいわば素人でしたが、すぐに気づきました。自然と歴史と見事に調和し、どんな町よりも魅力的な小布施で、その魅力の象徴ともいえるこの酒蔵に“木桶”があれば最高なのに、と。

    製造過程を厳重に管理した結果、おいしいお酒を少ないリスクでの製造が可能になりました。しかし木桶には、職人などが代々培ってきた技術と、いかにうまく貯蔵するかという戦いの成果が一杯詰まっていたのです。つまり、現在では桶づくりや桶での酒づくりは切れかけの糸のようであっても、人間が長い時間をかけて築いてきた“文化”であり、自然と闘い、調和を勝ち取った人類の叡智がエッセンスとして詰まっているのです。
    -そうすれば、桶屋は文化の伝達者ともいえる…簡単にその灯を消していいのか?…
    この本では、セーラさんのほかいろんな酒蔵の人たち、そして桶屋さん自身でそれに気づきはじめた人たちが、まるで木桶の側板のように互いにくっつき、まるい輪となっていくのが書かれています。

    便利さより大事なもの…たしかに今の時代、木桶にこだわるのは大変です。でも、経済や効率優先のなかで、木桶がもつ「よさ」がわかる感性を、私も持ちたいです。そのため、桶屋さんが“挑戦”し続けてくれることに感謝します。
    (2009/2/15)

  • 一般人には最早なじみのない桶について、その衰退と新たなる成長を描いている。真面目に取材して真面目に書かれており、拙い点はあるが個人的には良書扱いにしたい。
    絶滅に等しい産業を担う方々と、日本酒における桶を使った製造の復古に関わった方々の話がメイン。そして日本の山林における木材の話など、桶に関連する話が続く。
    桶とステンレスタンクの仕込みの違いで日本酒を表現することは出来ないなれど、伝統とかテロワールとか、日本の地方にはもっと地元のよさを表現する手段がたくさんあると思う。それにあらためて気付かせてくれた本。

  • 桶屋と言うと「風が吹けば桶屋がもうかる」という諺を思い出す。桶って最近はあまり目にしなくなったけれど、今の時代にも桶屋はちゃんといる。本書は、数少なくなってきた桶職人に弟子入りした職人見習いの話から始まる。目指したきっかけは、道具がカッコよく見えたから・・・。しかし、桶屋になりたいと目指したとたん、次々と不思議な縁がつながっていく。その様子は、まさに諺どうり。桶の良さを広めようとする人々の活動記録ともいえる一冊。

  • 桶業界にもがんばってる企業あり。
    アイディアと情熱、これはこれからのビジネスに不可欠。

  • 日常生活では、滅多に目にする事のなくなった「桶」。廃れていく一方に目えるこうした伝統文化だが、密かにゆっくりとムーブメントを起こしている人達がいる。そうした挑戦をドキュメンタリー番組ののように綴った本。桶の話から日本酒醸造の話にそれ過ぎた感もあるが、それはそれで面白い内容になっている。

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著者プロフィール

中南米・カリブ圏・ラティーノ美術史研究者。
1949年神奈川県鎌倉市生まれ。現在は静岡県御殿場市在住。
国際基督教大学卒。Bゼミ・スクール修了。ウニベルシダ・デ・ラス・アメリカス(メキシコ)大学大学院修了。
メキシコ国立美術研究所研究員などを経て現職は神奈川大学教授。
日本ラテンアメリカ学会会員、美術史学会会員、LASA会員、NALAC会員、スペイン・ラテンアメリカ美術史研究会会員、など。
主な著書
『メキシコ美術紀行』(新潮社)、『ラテンアメリカ美術史』(現代企画室)、『メキシコ壁画運動』(平凡社)、『ニューメキシコ 第四世界の多元文化』(新評論社)、『キューバ★現代美術の流れ』(スカイドア)、和英対峙『現代美術演習』vols.I〜V(現代企画室)など。ほか共著、共訳書、論文など多数。

「2007年 『21世紀のアメリカ美術 チカーノ・アート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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