PTA再活用論: 悩ましき現実を超えて (中公新書ラクレ 294)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121502940

作品紹介・あらすじ

「親」どうし、顔を見て、一緒に仕事をするというのは、すごく健全なことだ(著者)。大変化を迎えた公教育の一断面をリアルに見すえた力作。忘れられた「PTA」を蘇らせる処方箋とは。

感想・レビュー・書評

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  • 自分自身の子どもが小学生である僕にとって、PTAというのは近くて遠い存在である。
    何やらいろいろと活動しているようであるが、全貌はさっぱり見えてこない。
    でも、「学校を軸とした地域再生」を今年のテーマに据えた以上、PTAについてできるだけ多くのことを知りたい。そんな思いで選んだ一冊だ。


    読み終わった時は、何と言うか、消化不良を起こしたような妙な気持ちになった。
    いや、本書の内容がつまらなくて消化不良だったわけではなく、当事者としてPTAの実態を垣間見たことで、これからの自分自身の成り行きを想像してしまい、お腹がモヤモヤした気分になったのだ。
    思考停止の前例踏襲と、日本人にはお馴染の同調圧力にまみれた世界がそこにはあった。


    もちろん本書では、単にそのような状況を暴露して非難することで終わっているわけではない。
    最後に「カワバタ私案」ということで、よりよいPTAを構築するアイデアの一つを紹介している。
    その章で、ある保護者組織が規定している、四か条を紹介してある。

    ・会員世帯か否かを問わずすべての園児のための活動。「何かしてもらう」ではなく「何かをする」姿勢を大切にする。

    ・楽しくない活動は、長続きしない。楽しいと思うことをやり、楽しくないことは、さっさとやめる。ただ、楽しくする努力は必要。

    ・できる人ができる範囲での活動。会員は皆それぞれの都合の中で、活動に参加する。「できない」「やらない」ことを非難することなく、「やってくれた」ことに感謝の気持ちを持ちたい。

    ・誰も何も強制されない。参加したいところに、参加したい人が参加する。参加したい企画がないと思う人は、ぜひ自分で企画を!いつも来る人も、たまにしか来られない人も、同じように笑顔で迎え入れるような雰囲気を大切にする。


    素晴らしい。
    是非、一票を投じたい。


    著者の川端氏は、現在、日経ビジネスオンラインで「ゆるゆるで回す『明日の学校』体験記」というコラムを書いていて、ニュージーランドのPTAとも言うべき「学校理事会」という組織について紹介している。
    その中で、理事会メンバーに求められる資質として、

    ・チームワークができる人
    ・コモンセンス
    ・コミュニケーション
    ・学校や子どもたちに関心を持っていること
    ・情熱
    ・ビジョン、戦略的思考
    ・説得力
    ・建設的な批判力

    を挙げている。

    逆に、絶対に避けねばならない資質として、

    ・権力志向
    ・攻撃的
    ・不寛容

    の三つがあるそうだ。


    これらの資質を揃えているとなると、いくら素人とは言え、その辺のオジチャンやオバチャンには荷が重いような気もする。
    各方面でバリバリ働いている、専門職の人たちにこそメンバーに参加してもらいたいところだろう。実際、ニュージーランドの学校理事会にはそういう素材がゴロゴロしているらしい。

    とかく、「残業代カット」などと言う瑣末なテーマで語られるワークライフバランスであるが、こういう文脈で理解することこそが本筋だろうと、改めて感じた。

  • 学習かあ 要らなくね?

  • PTA執行部を引き受けることになり、全体像が知りたくて読んでみました。
    いろんな角度・立場からの意見、あり方、不満など、具体的に書かれていて、イメージトレーニングとして、とても参考になりました。
    時々読み返し、役割や目的を見失わず、乗り切りたいと思います。

  • 筆者が子育て小説を書き始めたころから、執筆量の減少が目立つように感じていましたが、PTA活動にこんなに専心していたのかと感心しました。戦後まもなく始まったPTA活動は、社会が貧しかった時代は、学校給食の普及や設備面などでの学校支援が主要な役割でしたが、社会が豊かになるにつれ、存在意義も変わっていきましたが、組織と体制は旧態然としたままで、いろいろな弊害を伴っていることがよくわかります。PTAの活動を有意義なものにするための筆者の改革案と筆者以外の人たちの改革案が提示されています。

  • 著者さんが繰り返し主張されている「PTAは本来任意加入で、もっと自由に活動できる形が望ましい」とのこと、全くその通り。
    保育園の保護者会も同じ。
    今年度役員をやってきたけど、半強制的に加入させられて会費徴収とか、「あのひとは仕事やらなくてずるい」とか本当はおかしいと思うよ。
    私の場合楽しいのと比較的時間に余裕があるので納得してやってるのでいいとして、色々と事情のあるひともいるし私みたくボランティアでやりたいひとがやればいいと思う。
    それでやり手が確保できなければ、必要ない活動ってことよ。

  • もやもや

  • 確かに、一番変わらないといけない組織ですよね…

  • 横浜市立すみれが丘小学校PTA
    10年前、生徒数、家庭数が減って委員のなり手が少なくなった時期に、思い切って広報、成人、保健、環境委員会を廃止し、学年委員会と校外委員会だけにしてしまった。広報誌は委員会があるから出すでなく、伝えたいことがあるから出すに変わった

    カワバタ私案 方針
     会員世帯か否かを問わずすべての園児のための活動。なしかしてもらうでなくなにかする姿勢を大切にする
     楽しくない活動は、長続きしない。楽しいと思うことをやり、楽しくないことは、さっさとやめる。ただ、楽しくする努力は必要。
     出来る人が出来る範囲での活動。会員は皆それぞれの都合の中で、活動に参加する。できない、やらないことを非難することなく、やってくれたことに感謝の気持ちをもちたい

    逃げ道を用意 入退会の自由
     PTAが自主的、自発的な組織であると自覚できる
     PTAのために会員ではなく、会員のためのPTAだと意識でき、負担が過大にならないように抑止力が働く
     PTA活動に極度のストレスを感じる人に逃げ道を与えられる

    仕事は業務ボランティアとしてしまう
     委員会と何が違うかというと、だれもやるひとがいなければ、活動はなしと腹を括る

  • 何事に付け,組織が生きるも死ぬも上役の心意気次第だが,自主性を重んじ,やれることを確実にやっていく姿勢を打ち出せるか否かで天国と地獄が別れる.流石の良書.

  • 任意のボランティア団体であるはずのPTA。まずは、入退会自由を周知することから始める!という提案。全く同意。

  • [ 内容 ]
    「親」どうし、顔を見て、一緒に仕事をするというのは、すごく健全なことだ(著者)。
    大変化を迎えた公教育の一断面をリアルに見すえた力作。
    忘れられた「PTA」を蘇らせる処方箋とは。

    [ 目次 ]
    序章 PTAことはじめ
    第1章 PTA-この素晴らしきもの(PTAってどんな組織なのだろう 基本は学級PTA ほか)
    第2章 PTA-この悩ましきもの(166日・403時間の現実 役員選びはどんどんきつくなる ほか)
    第3章 どんなPTAをめざすのか(PTA史をひもとこう 自分の意志で入会する、これが当たり前だ! ほか)
    終章 和田中PTA「事件」から見えてきたこと

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

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    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 「安全・安心まちづくり」の担い手の一つとなろうPTA。でもその実態が分からなかったが、それを垣間見ることができた。そんな私も2年後はPTA。

  • 自分のPTA活動のためのベース基地といった感じですかね。
    ここに書かれていることが全てということではなく、自分が活動していく際のインデックスというかなんというか。

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著者プロフィール

1964年兵庫県明石市生まれ、千葉県千葉市育ち。文筆家。東京大学教養学部卒業。日本テレビ勤務中、1995年『クジラを捕って、考えた』でノンフィクション作家としてデビュー。退社後、1998年『夏のロケット』で小説家デビュー。小説に『せちやん 星を聴く人』『銀河のワールドカップ』『算数宇宙の冒険』『ギャングエイジ』『雲の王』『12月の夏休み』など。ノンフィクションに『PTA再活用論』『動物園にできること』『ペンギン、日本人と出会う』『イルカと泳ぎ、イルカを食べる』など、著書多数。現在、ナショナル ジオグラフィック日本版および日経ビジネスオンラインのウェブサイトで「・研究室・に行ってみた。」を連載中。

「2020年 『「色のふしぎ」と不思議な社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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