もう一つの戦略教科書 - 『戦争論』 (中公新書ラクレ)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121505880

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  •  モルトケ、レーニン、毛沢東と、名だたる歴史上の人物が影響を受けた本がクラウゼヴィッツ『戦争論』である。この本は『孫子の兵法』と並んで戦術本として名著であるが、その内容は膨大かつ難解であるので、全てを読み切るのに骨が折れる。そこで、著者が現代に生かせそうな箇所を一部抜粋して、それをもとに企業やビジネスに生かせないかと試みたのが本書である。これは『戦争論』を既読した読者にも何らかの知識、発想が得られるだろう。
     本書の優れた点として、誰もが知っている言葉の意味を改めて解説していることである。例をあげると、「競争」という漢字。「競」とは競い合う対象が外にある基準、つまり自分が誰よりも優秀な成績をとれば必ず勝てるということ。それに対して「争」とは敵を倒さない限り、勝ちが確定しないということである。(p21、22)別の例を挙げると、「戦略」と「戦術」の違いである。クラウゼヴィッツは、「戦略」とは戦闘力の配分を決めるものであり、「戦術」とは戦闘の仕方を決めるものと定義したが、著者はこの違いを現代人にわかるように会社でたとえた。著者によると、複数のジャンルをもつ大きい会社で、「どの事業にどの程度のお金と人を配分するのか」と、「それぞれの事業で、どのように利益を稼ぐのか」という二つの方法論があり、前者を「戦略」、後者を「戦術」と呼んだ(p173)、というようにわかりやすく解説する。このように、一見似た意味だと思われがちな言葉を明確に区別していくことで、『戦争論』の理解度を高めてくれる。
     また、本書のp194〜197では、今後の戦争のあり方に関して興味深い箇所がある。これまでの戦争は「陸」、「海」、その後「空」と次々に戦闘領域が広まったが、今後起こりうる戦争として「宇宙」や「サイバー」があげられる。そこで、戦争の定義が今後どう変わるのか、また、それに向けての防衛方法を考えなければならない。とくにAIを駆使した戦争においては、AIを起動するための「周波数帯」に注意しなくてはならないということが今回読んでわかった。

  • SDGs|目標16 平和と公正をすべての人に|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685232

  • 戦争とは相手に私たちの意志を強要する一種の力の行使である。
    「自分の意志を相手に押し付ける」


    競:競い合う対象が外にある(タイム、スコアなど)
    争:敵を倒さない限り勝ちが確定しないもの。相手への攻撃、妨害がルールで許されているもの

  • 名著『戦争論』のエッセンスを抽出。争いの本質とは?頭のよさが決断を迷わせる?戦わないのも策…。今すぐ使える古典の決定版!

  • 東2法経図・開架 B1/5A/588/K

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著者プロフィール

1965年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。現在は、作家として『孫子』『論語』『韓非子』『老子』『荘子』などの中国古典や、渋沢栄一など近代の実業家についての著作を刊行するかたわら、グロービス経営大学院アルムナイスクールにおいて教鞭をとる。2018年4~9月トロント大学倫理研究センター客員研究員。主な著訳書に『現代語訳 論語と算盤』(渋沢栄一著、ちくま新書)、『孫子・戦略・クラウゼヴィッツ』(日経ビジネス人文庫)、『最高の戦略教科書 孫子』『組織サバイバルの教科書 韓非子』(以上、日本経済新聞出版社)、『中国古典 名著の読みどころ、使いどころ』(PHP研究所)、『アミオ訳 孫子[漢文・和訳完全対照版]』(監訳・注解、ちくま学芸文庫) など。

「2020年 『『論語』がわかれば日本がわかる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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