ハーバードの日本人論 (中公新書ラクレ 658)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121506580

作品紹介・あらすじ

★ハーバードが解き明かす「いかにも日本人らしい」の真相


判官びいきは日本人の特徴か。日本人はなぜロボットを友達だと思うのか。なぜ細部にこだわるのか。本当に世襲が好きなのか。なぜものづくりと清掃を尊ぶのか。なぜ義理を重んじ、周りの目を気にするのか。なぜ長寿なのか。そもそも、日本人はどこから来たのか……。

いまだに日本は世界の不思議だ。世界最高の学び舎、ハーバード大学の10人の教授のインタビューを通して、日本人も気づかなかった日本の魅力を再発見できる一冊。




第一講義 【メディア論】日本人はなぜロボットを友達だと思うのか

――宮崎駿と押井守が描く「テクノロジーと人間」

第二講義 【美術史】日本人はなぜ細部にこだわるのか

――天才絵師、伊藤若冲の絵画に宿る生命

第三講義 【遺伝学】日本人はどこから来たのか

――古代DNA解析で迫る日本人の起源

第四講義 【分子細胞生物学】日本人はなぜ長寿なのか

――平均寿命の明暗を分ける日米の食生活

第五講義 【比較政治学】日本人は本当に世襲が好きなのか

――世襲政治家だらけの民主主義国・日本

第六講義 【社会学】日本人はなぜ「場」を重んじるのか

――タテ社会の人間関係と働き方改革

第七講義 【マネジメント】日本人のオペレーションはなぜ簡単に真似できないのか

  ――テスラ、GMがトヨタから学ぶべき現場文化

第八講義 【宗教史】日本人はなぜものづくりと清掃を尊ぶのか

――世にも宗教的な日本人

第九講義 【日本文学】日本人はなぜ周りの目を気にするのか

――サムライから学ぶ人生論

第十講義 【比較文学】日本人はなぜ物語の結末を曖昧に描くのか

――村上春樹と東野圭吾が世界で愛される理由

感想・レビュー・書評

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  • よくある「ニッポンすごい」系の本かなと高をくくっていたが、意外と示唆深い話が読めて収穫があった。

    「主人公が最後に海で死ぬシーンが日本映画にだけ多い、それも特に90年代に集中している」とか「日本人はキャリアにおいてウィークタイズ、ストロングタイズよりも所属先などの場のつながりを重んじる」とか、あとは日本の選挙における世襲の特殊性など、考えたことがなかった視点が得られた。

  • 第六講義で書かれていた「日本が副業や兼業を推進していることに驚く」という記述にハッとさせられた。働き方改革をしようとしているなかで、どうしてまだ更に働こうとするのか。女性が家事や育児の大半を担っているの現状で、第三の仕事を増やそうなどと考えるのは男性中心的な考えである。

  • 映画、遺伝、政治、文学など、様々な分野のハーバード大学の教授からみた日本人についての話。
    「はじめに」によると、日本ほど自国の分析について関心が高い国はないらしい。アメリカ人も、お隣の中国人や韓国人も、自国の国民性を熱心に分析しなければ、国外から自国のニュースについてどう取り上げられてるかという感心も低いのだとか。自分は海外のニュース番組は見たことが無いのだけど、そういうもんなのかとちょっと驚いた。まあ、確かに安倍首相が辞任を発表して海外がどんな反応をしているかなんてどうでもいいといえばどうでもいいか。
    美術史についての話では、伊藤若冲という人を主に取り上げられていて、ユキオ・リピットという専門が美術史の教授は展示会で来場者に「日本で最も有名な画家で、もしかしたら葛飾北斎より人気があるかもしれませんよ」と説明したらしい。自分は全然知らなかったのだけど、そんなに有名な人なのか(北斎は知ってる)。このへんはもう少し教養として知っておいた方がいいかもしれない。
    なお、日本人はアルコールに弱くなるように適応進化してきたらしい。自分がアルコール苦手なのは進化の結果だったのか(むしろ、退化だと思ってた)。
    後、政治について、「世界中の民主主義国家を見渡しても、「政策が最も支持されていない政党が選挙で勝ち続けて、長期政権を維持している」という事例はほかにありません。」と書いてあるところでちょっと笑った。そんなに日本の政治は特殊なのか。
    理由の一つが野党が多すぎるかららしい。政党を少なくすればいいのだけど、それについて、「主力野党の立憲民主党と国民民主党が政策の違いを妥協してまで、統合するとは考えられません」とのこと。自分もこないだまでそう思ってた。むしろ政策が違うから別れたのだろうと思うのだけど、自民党一強の政治を終わらせるには、合併したほうがいいということなのだろうな。

  • 60冊目(5-6)

  • 海外の人が日本の文化をどうとらえてるかをつづった一冊。

    日本人とは何かというよりも、予想以上に日本の文化が海外に浸透してることを誇らしく思った。

  • ●黒澤明では、画面の中の俳優や舞台装置の配置について学ぶ。
    ●大津安二郎の表現方法は、決して日本的ではありません。かなり独自のものです。
    ●北野武は「時間」を書くことに主眼を置く。
    ●スタジオジブリは「もののけ姫」まではデジタル化される前の作品。
    ●欧米人はロボットに対して、人間の役に立つが信じすぎるのは危険だと言うような思いがどこかにあります。日本人はロボットを友人として扱うものが多い。
    ●若冲は23歳で家業の青物問屋を継ぎ、40歳の時に家督を譲り隠遁生活を送り、絵画と仏教に没入した。妻子を持たず、人生の後半をすべて芸術に捧げた。江戸時代、40歳は「初老」と言われ、若者のために引退する年齢とみなされていました。
    ●ハーバード大学のカリキュラムの中で美術史は人文科学系の教養科目の1つですが、教養を得る事は、未来のリーダーだけでなく、すべての人間にとって大切なことだと思います。日本の美術史を学ぶということはすなわち、他国の歴史と文化を学ぶことです。
    ●「上から塗りつぶして描き直せる」西洋画と、「壱発勝負でアウトラインを引き、色を重ねていく」日本画とでは全く違う精神が必要。そのため画家の育成方法も違っていました。
    ●実は若冲の作品のうち、着色画は10%程度しかありません。彼は日常的には墨画を書きながら時折着色画の大作を書いていた。
    ●これまでは主にミトコンドリアDNA、Y染色体を解析する手法が使われていました。しかしこの方法では母親のみもしくは父親からといった、1つの系統の情報しか得られません。
    ●かつてモンゴル帝国が支配していた地域、男性の8%から同じ配列。その男性はチンギスハンではないか?と推定しています。さらに前の時代には東アジアヨーロッパの人たちのY染色体の5〜6千年前たどっていくと、ほぼ全員がある1人の男性のDNAを共有していることがわかっています。それが誰かわかってはいない。
    ●日本人のDNAの20%は狩猟民族の縄文人、80%は大陸系農耕民族の弥生人に由来することがわかっている。1600年前くらいから交配し始めたのではないか?
    ●今から180万年前アフリカ大陸から人類が拡散し、世界各地でネアンデルタール人、デニソワ人、他の旧人類へと進化していく。そして30万年前にまた一度アフリカに戻る。そしてそこでホモサピエンスに進化し、そしてこの現世人類が再び6万年前にアフリカの外に拡散する。

  • 日本人とは何か、客観視するきっかけになる。
    世界の多様性の中で、日本人がどのように位置づけられているのか、ヒントを得る目的で読んだ。
    ○○人の特徴を定義することに意味は感じないけど、外資系企業に就職する前に、海外の人の頭の中を知りたい。

    ・日本人の生活は宗教観に密接に関わっている。気付かないほど、自然に生活の一部に浸透している。

  • 本書は、日本人論・日本文化論について、ハーバードの教授陣にインタビューした内容をまとめたもの。以下の10章から構成されている。それぞれの教授(及び准教授)の見解が短くあっさりと紹介されている。深く掘り下げられていないので、物足りなさが残る。

    ホンダジェットの開発物語を読んだ直後に「ホンダジェットは、破壊的イノベーションの素晴らしい事例でしょう。」という記載を目にし(第7講義)、「1Q84」の余韻が残る中で村上春樹の作品論が読めた(第10講義)のはちょっと嬉しかった(シンクロしてる}。ソーンバー教授の「村上は物語を通じて、人間や社会が抱える普遍的な問題を問いかけます」という指摘には不同意だけれど(村上作品にメッセージ性を求めちゃいけないような気がする)。

    第1講義 : 日本人はなぜロボットを友達だと思うのか(宮崎駿と押井守が描く「テクノロジーと人間」)、

    第2講義 : 日本人はなぜ細部にこだわるのか(天才絵師、伊藤若冲の絵画に宿る生命)

    第3講義 : 日本人はどこから来たのか(古代DNA解析で迫る日本人の起源)

    第4講義 : 日本人はなぜ長寿なのか(平均寿命の明暗を分ける日米の食生活)

    第5講義 : 日本人は本当に世襲が好きなのか(世襲政治家が異常に多い国・日本)

    第6講義 : 日本人はなぜ「場」を重んじるのか(タテ社会の人間関係と働き方改革)

    第7講義 : 日本人のオペレーションはなぜ簡単に真似できないのか(テスラ、GMが学ぶべき現場文化)

    第8講義 : 日本人はなぜものづくりと清掃を尊ぶのか(世にも宗教的な日本人)

    第9講義 : 日本人はなぜ周りの目を気にするのか(サムライから学ぶ人生論)

    第10講義 : 日本人はなぜ物語の結末を曖昧に描くのか(村上春樹と東野圭吾が世界で愛される理由)

  • 著者がハーバード大学の10人の教授・准教授へのインタビュー記録がとてつもなく面白い。日本映画(黒澤・小津・北野・そしてジブリ・押井守…)の映画の特徴が実は日本的ではなく普遍的なところにあることが米国で評価されている点、DNAの最先端の知から解き明かす日本人の起源、伊藤若冲が米国人に人気がある秘密、世襲議員と自民党長期支配の構図の分析、場を重んじる日本人、日本式オペレーションが真似できない理由、モノづくりと清掃を尊ぶ日本人の宗教性、曖昧な結末になる日本小説など興味深いテーマの数々で、いちいち納得!それにしても米国の日本研究のレベルの高いことも驚きである。

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著者プロフィール

1998年3月 一橋大学法学部卒業
1999年8月 マールブルク大学(ドイツ)法学部公法・国際法専攻(LL. M)修了
2000年3月 一橋大学大学院法学研究科公法・国際関係専攻修士課程修了
2003年8月 マールブルク大学法学部公法・国際法専攻博士課程修了(Dr. jur)
外務省勤務,明治大学法学部専任講師・准教授等を経て,
2021年10月 明治大学法学部教授(現在に至る)

「2021年 『EU海洋環境法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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