2049年「お金」消滅-貨幣なき世界の歩き方 (中公新書ラクレ (672))

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121506726

作品紹介・あらすじ

国が推進する電子マネー。企業が覇権争いを繰り広げるキャッシュレスサービス。近年世間を騒がせた仮想通貨。浸透し始めたブロックチェーン。
2019年、フィンテックという言葉のもとに、あらゆる場面の根幹にある「お金」のあり方が変わり始めた。インターネットと社会の関係を長年研究してきた著者は、この先「貨幣経済が衰退する可能性は高く、その未来にニューエコノミーが立ち上がる」と主張する。そこでは従来の貨幣文化のみならず、人類が構築してきた専門性や労働、さらに国家までも解体される対象になりうるという。
お金が消えるのと同時に消滅する職業や学問とは? 「お金」が消滅した先でも変わらず価値を持つものとは? その先で私たちは何を歓びに生きるのか? この本を手に、混沌たる世界を進め!

感想・レビュー・書評

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  • 良書。平易な書き振りだけど難解に感じるところもなくはない。著者の一貫してポジティブな態度が救い。

  • 単純なキャッシュレスや、デジタル通貨という話ではない。
    「お金そのものが消える」という話。
    これは、2014年発行の「エクサスケールの衝撃」(齊藤元章:著)や2016年発行の「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」(著:井上智洋)で予言されていたことだ。
    基本的には当時から主旨は変わっていない。
    変っていないということは、確実にそちらの未来に近づいているということとも理解できる。
    本当に未来はお金が消滅するのだろうか?
    今現在の問題点は、エネルギーを生み出すのに、どうしてもお金が必要ということ。
    この本での理屈は、エネルギーコストが限りなくゼロになると、お金の必要性がなくなってしまう、ということだ。
    ここまで生活に浸透したお金が、おいそれと消えるとは、感覚的にどうしても思えない。
    しかし、未来が今の社会とは相当に異なる状態になるだろうことは想像できる。
    まずキャッシュレス化は進む。
    これは言い換えれば「デジタル化」だ。
    「01」というビットになった瞬間に、元がお金なのか何なのかは、最早関係がないと言える。
    すると「日本円」であることの意味が完全に薄れるだろう。
    これらによって「お金の統制は国家の税収のため」という基本概念が崩れていく。
    国家が成り立たなくなり、デジタル上の仮想国家で、地球人全員が一つの通貨と一つの国家で成り立つのだろうか?
    地球国民の生活を豊かにするためのインフラは誰が計画して作るのだろう。
    「誰が?」は不明としても、「どうやって?」はエネルギーコストがゼロになれば大きな問題にはならない。
    そもそもエネルギーがコストゼロで生み出せれば、理屈上は食料が無料となるのだ。
    もちろん加工費も流通費も、すべてはエネルギーがゼロになれば、かからなくなってしまうだろう。
    食べることに困らないのだから、賃金を得るための労働という意味はなくなってしまう。
    人はヒマになり、学術や芸術を探求するようになるだろう。
    人によっては、他人のためにボランティアなどを行う人も出るだろう。
    そもそも、富の格差という考えは薄れる訳だから、社会的な格差を埋めるための人助けになるだろう。
    そういう意味で、好んで人のためにインフラ構築も行う人もいるだろう。
    しかしそこに「責任」を伴わせることはどうするのか?
    「水道」など、生命に直結するくらい重要なインフラを、「人の善意」だけに頼って運営するのはどう考えても無理がある。
    そんな事を色々と考えてしまう。
    まだまだ想像できないことが多いが、今記載した未来生活の出来事のいくつかは、既に検討の俎上に上がっていることは確かだ。
    少なくとも2016年に発行された話から、大きな流れはズレていない。未来は「お金の無い世界」に確実に向かっている。
    (2019/12/15)

  • キャッシュレスで物理的なお金が不可視化され、フリーの拡大でお金を使わずできることが増えてきた。30年後の2049年、再生可能エネルギー利用で電力無料化、機械が自動的に作れるものが増えてお金の経済的価値が失われ、労働や、その対価としてのお金もなくなる。仕事の専門分化もなくなる。人間がするのは探求すること、社会は相互の贈与で回る。

    フロー部分のお金はなくなりつつあるのはわかりましたが、ストック部分はどうなるのでしょうか。テトラッド分析でさらっと検証されていましたが、知らない方法なのでよく理解できませんでした。

  • 本当にお金の概念がなくなるか、AIが仕事を無くすかは本質ではなくて、
    そんな感じになっていきそうな世界で人はどんな心構えで生きてくべきか
    って話の本だと思う。その点で良かった。

  • 分からないことも多かった。
    コロナ前の本なのに。情けない。
    でも、面白かった。
    少しずつイメージできている感じがある。

    「スマホを手放すことがほとんどなくなった時代にそれをあえて持たない状態で、しかもスマホを持っていれば解決するような問題を解けるかどうかで、人の能力を評価することにどれほどの意味があるのでしょうか」

    ゾクっとしました。

  • 将来、お金という物が無くなる社会になると予測した本(後書きに「本書は預言書ではありません」とあったけど)。
    ただたんに貨幣や紙幣といった物理的なお金というものが無くなるというだけでなく、お金という概念そのものがなくなると言いたいらしい。
    さすがにお金という概念そのものがなくなるというのは現実感がなさすぎていまいちイメージがつきにくかった。今、年金保険毎月払ってるけど、お金という概念がなくなったら年金はどうなるんだと。払っても払わなくても同じということか?
    まあでも、その足掛かりとしてキャッシュレスがすすむというのは分からなくない。いまだに現金しか使えない場所って多いけど(特に、診療所)、キャッシュレス化はすすんでいく分にはいいと思う(ただし、選択肢として現金を使えるようにしたほうがいいとも思う)。
    全世界のエネルギーを再生可能エネルギーで賄うことは可能という話はちょっと興味深かった。日本の場合、環境もんだやら原発問題やらあるので、こういう研究や取り組みはもっと進めていってほしいところ。
    後、「自由貨幣」という概念を初めて知ったけど、なかなか面白そうだなと思った。ようは、紙幣の価値が実質的に減少していくというものらしい。そうすると、みんな早く手に入れた紙幣を使おうとするので、景気がよくなるらしい。時間があったら調べてみようと思った。

  • お金は信用の代替物。信用が証明されれば、お金である必要は無く、より進んだITによって物物交換の自動化が完了すれば、仕事の対価は直接自分が求めるもので返される世界がくる。

    メルカリの青柳さんが目指す世界はきっとこういう世界で、小泉環境大臣がファストファッションに苦言を呈してたことにも繋がるけど、お互いの欲しいものを融通することができれば、捨てる量が圧倒的に減るので、当然環境にもメリットある。

    これからどんどん仕事が自動化されていく中で、ほんとにベーシックインカム的なことが起こり、人間は楽しいことに没頭して良い稼ぎ方、生活の仕方ができるんじゃないかと思えてきた。

  • キャッシュレス決済が普及して現金を持たなくなる、といった次元の話では無く、お金そのものが消滅するという話です。読み進めていくうちに、以前に元ZOZOの前澤氏が「この世の中からお金を無くしたい」と言っていたのを思い出しました。前澤氏の話を聞いたときは半ば半信半疑でしたが、本書を読んでお金に縛られない世界は個人的には実現可能だと思いました。人としてのあり方、人生の目的についても考えさせられる一冊でした。

  • 全てとは言わないまでも、2049年を待つまでもなく、本書で挙げられていることは実現されると思う。現実の進行はもっと早い。近い将来を考察するうえでは参考になる良書。

  • - 技術革新によるエネルギー無料化の流れ。
    - 高度な分業化から自給自足・地産地消へという流れ。
    - 足りていない人と余っている人をつなぐサービスの進化。

    これらによって「お金」の存在が人々の意識から少しずつ消えていく。その先にどのような社会が待っているのか。

    誰が何をしているのか監視しあう社会に進むのか、「見返りを求めずに与えること」を基本にした愛に溢れた社会を目指すのか。

    キャッシュレス化や評価経済の台頭といった表面的な話ではなく、数十年単位でこれからを見通す指針となる本。

    2049年の世界、想像するだけでワクワクします。

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著者プロフィール

1964年生まれ。「インターネットと社会」の研究者。
日立ソフト(現 日立ソリューションズ)などにエンジニアとして勤めたのち、2000年より慶應義塾大学SFCへ。2003年、地域通貨「WATシステム」をP2Pデジタル通貨として電子化し、2006年、博士論文「i-WAT:インターネット・ワットシステム─信用を維持し、ピア間のバータ取引を容易にするアーキテクチャ」を発表。
現在は「人間不在とならないデジタル通貨」の開発と実用化がおもな研究テーマ。
慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。一般社団法人アカデミーキャンプ代表理事。
一般向けの著書に『不思議の国のNEO──未来を変えたお金の話』(太郎次郎社エディタス)がある。

「2014年 『これでわかったビットコイン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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