街場の親子論-父と娘の困難なものがたり (中公新書ラクレ (690))

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121506900

作品紹介・あらすじ

思想家・内田樹氏による「親子論」の書き下ろし論考、内田樹氏とその娘である内田るん氏との往復書簡を収めた1冊。

感想・レビュー・書評

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  • 街場の親子論ー父と娘の困難なものがたり|特設ページ|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/special/machiba/

    『街場の親子論』のためのまえがき - 内田樹の研究室
    http://blog.tatsuru.com/2020/06/03_1113.html

    街場の親子論|ラクレ|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/laclef/2020/06/150690.html

  • 樹ファンとしては、最高の本です。きっと大変なんだろうけど、こんな人がお父さんだったらな〜って思いました。微妙にかみあってないと思うだろうって書かれてたけど、確かにそうだった。でも、親子の許容範囲内、他人同士だからそういうもんだよねぇ。

  • 親子関係の話から共感と排他性の裏表や、成熟における親子の絆とのトレードオフ、往復書簡という形は対談などの細かな話を積み上げていくように読んでいくのとはまた違った味わいがあって楽しい、森鴎外親子の対談本とかは確かに面白そう。

  • もはや自分の師匠と勝手に思っているウチダ先生と、娘さんとの往復書簡。
    回を重ねるごとに自分の主義主張の色を少し強めていく娘さんに対して、「自分語りとは、何を言わないか」と諭す?ウチダ先生が対比的で(それこそ大きな母のようで)興味深かった。

  • 親子関係は血が繋がっているだけに、逆に難しい。「親ガチャ」とか言うイヤな言葉もあるぐらいだし。親子関係から資本主義の問題まで、楽しく読めた。

  • 待望の内田家物語。樹先生の愛娘るんちゃんとの往復書簡集。内田親子のここでしか知れないエピソードが満載。自分語りをスパイの用意する「第二層の告白」や「自分の個展」に例えるウチダ節には唸らせられるが、いつかるんちゃんのお母さんの話も聞いてみたいものです。

  • 高橋源一郎さんが紹介されてたので興味を持って読んだ。内田樹さんはお名前は知ってるけど、著作などは未読。
    あまり親子論的なもので感心することはなかった、というか個人的に幸運なことに家族関係に困難を感じたりということがないからかも。
    自分と父とほぼ同じ年の関係か。これだけリスペクトされる父もすごいが、子の内田るんさんが直球に思想信条を投げかけていて、新鮮に感じた。今屈託なくリベラルって言えることって、一周回って大事かも、と。

  • 内田樹親子の往復書簡。親子の関係ってまあいろいろある、あれこれ脈々と繋がってここにある家族の形。それもひとつの歴史。でもそこは個と個だからがんじがらめにならなくていい。キープディスタンス。娘さん含めこれからの時代を生きる人たちへのメッセージでもあったな。

  • るんちゃんとの関係をこれまでは父親サイドからのみ眺めてた。るんちゃんからはどう見えているのかいつも非常に興味があったのだ。えへへ。

    プロローグ(内田樹)

    のっけから「家族の間に秘密があるなんて当たり前だろう」と至極当たり前の言挙げがされ、「骨肉相食む泥仕合」に陥っているのは例外なく「遠慮のない間柄」だと喝破されています。この人の機嫌の良さと幸福は「親しき仲にも礼儀あり」というよそよそしさから導かれている。
    自分の父親との関係、娘との関係を他人事のように語る内田先生にすでに涙腺のゆるむにしもりです。

    8 「パブリックドメイン」はおすすめ(内田樹)

    「ことさら同意や共感をしてしてみせる必要のない友人関係」について語られます。まったく賛同します。「共感できないけど一緒にいて楽しい」ってわたしにはよくあるのだけど、高い確率で相手は楽しくない思いをしてるんじゃないかという疑念がにしもりにはあります。その辺が悩みといえば悩みですかね。たまに学生時代の知人と話すと、こういう疑念なしに好きなことを話せるのでとても気が楽です。

    9. 自分の姿を照らす「敵」(内田るん)

    自分の愛する人がすべてこの世からいなくなってからが、私の本当の人生ではないか」とのるんちゃんの述懐は、わたしが感じている通りのものです。その人が安心していられる道、その人がイヤがらない生き方をどうしても選んでしまうのが、人間の弱さであり、良き資質なのではないでしょうか。

    18. 「人間は壊れ易い」のを知っていた戦争世代(内田樹)

    この中で、5歳の内田樹さんが、保育園で何人かがいたずらをした場に居合わせて、先生から叱られ残されて反省を強要される話があります。「反省したら帰っていいです」と言われて他の子たちは「反省します」と言ったのに、内田樹さんだけ「反省することがありません」と答えて、みんなが「お前がさっさと謝ってしまえばはやく済んだのに、お前のせいで長引いた」と恨めしげな目をした、という話です。これを内田さんは「ぼくの病的傾向」だと書いてらっしゃいますが、わたしにもこの「病的傾向」があって、目先の利益(さっさと謝ってはやく帰る)ことより筋を通すほうを優先しないと気持ちが落ち着きません。内田さんは、このこと(自分が「周りとは考え方も、生き方も全然違う」子どもであること)はそんなにつらくなかったと語っていて、その理由を「変であることに対して許容度がゆるい時代だったから」だと書かれています。これはわたしもよくわかります。昔は変な人がいっぱいいましたし、今みたいにみんなが真面目で素直なわけではありませんでした。わたし自身がこの「病的傾向」をしんどいなと思い始めたのはこの10年くらいのもので、それ以前はなんとも思っていませんでした。たぶんこの10年くらいは世の中がみんな真面目で素直な人ばかりになったからだと思います。

    もう一つ、アメリカのことが書かれています。
    あの国には「予防」という発想があまりない。ことが起こる前に起こらないよう配慮をすることに高い価値を賦与しない。なぜならそれでは「何も起こらない」から。以心伝心に頼れない分、なんでも言葉にしてみる、まず言ってみてそれに対する反応を見て対処する。
    ははは、にしもりはアメリカ人だわ、きっと。
    続けて、アメリカの人は基本「孤立」、自分のことは自分で決める。内田さんがここで、「アメリカの人も結構きついなぁと思っているんじゃないかと想像します」と書かれているけど、実際30年ほど前にはじめてラダックに行った時、そこで長期滞在していたアメリカ人がそういうことを言ってたのを覚えています。

    22. スパイが語る「嘘の告白」、冬の北京、仕上がりのいい「物語」

    あははは。やっぱりそうやったんや。→ぼくの冷淡さというのは「にこやかで、礼儀正しく、でも人の話をぜんぜん聞いていない」という形態をとります。←対談なんかでそんな感じになってること頻繁にあるよね、この人。

    続いてスパイが拷問にかけられた時に自白する「第二層の告白」(真実のみから構成されている物語であるにもかかわらず、いくつか重大な言い落としがあるせいで、必ずしも「ほんとうのこと」ではない。)について、僕たちが自分について語ることというのは、そういうものではないか、と。内田さんは、それでいいんじゃないか、それってなんだかやりがいのあることだよね?と問いかけてきます。いやホントそうだと思う。
    内田さんは賢い人だから、そのことを「実害がなくていい」と言います。ほんとうのことを言うと相手が傷ついたり自分が傷ついたりするから。
    ははぁ、そうなんだ〜。
    「それについてうまく語ることができない」ということはある。「思い出す」ということは、「それについて語る言葉が見つかる」ことであり、「それについて語る言葉を見つけた」ことであると内田さんは語る。なるほど。

    エピローグーー思い出のおばあちゃん(内田るん)

    亡くなった日の思い出は心を打つ。るんちゃん大人だね。
    そして、るんちゃんも書いているように、内田樹さんがほとんど語らなかったこの昌子さんのこと、語らなかったということは語れなかった、語りたくなかったのでしょうから、ちょっと知りたくなりますね。

    我が家とはだいぶ違った形の親子関係だな。ちょっとうやらましかったりするよ笑笑。

  • とっても良かった。
    内田樹さんと、その娘のるんさんのお手紙のやりとり。
    わたしも親を持つ娘として読んだ。

    娘が親に思うことに共感し、親が娘に思うことに意外に思ったりした。

    20代の頃までは、親はスーパーマンであり、絶対的な存在だと考えてた。
    その強さに反発したり苛立ったりしたけれど、自分も親の年齢になってみて、親の不安さがようわかる。
    とにかく必死に子育てしてるのに、かっこつけることがフォーマット化されていることがよくわかる。
    親はこうゆうものだとか、子どもはこう振る舞うものだとか。

    娘のるんさんは、内田樹さんに育てられたためか、豊かな量の語彙を持っていて、それを柔らかく指摘する。

    るんさんの政治や社会に対する熱い思いと、内田樹さんの(熱い思いはきっとありながらも)討論しない。サラリとかわす温度差にクスリとする。

    私がこの年齢だから納得して読めるのかはよくわからないけど、今読めてよかったね。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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