自由の限界-世界の知性21人が問う国家と民主主義 (中公新書ラクレ 715)

制作 : 鶴原 徹也 
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121507150

作品紹介・あらすじ

エマニュエル・トッド、ジャック・アタリ、マルクス・ガブリエル、マハティール・モハマド、ユヴァル・ハラリ……。世界の知性21人は混迷を深める世界と人類の明日をどう見るのか。民主主義のあり方も、米中の覇権競争の行方も、グローバリズムの帰趨も、いずれも答えは一つではない。そして、一つではないからこそ、耳を傾ける価値があるのだ。




第1部 「予言者」であることは難しい――エマニュエル・トッド


第2部 それでも欧州に期待する


第3部 「アラブの冬」と「帝国」の再興


第4部 世界の軸はアジアに


第5部 コロナ以後

感想・レビュー・書評

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  • わたし程度でですら、ここ数年のウクライナと最近のイスラエル対ガザ(パレスチナ戦争)などで、どうしても世界中のことや世界中の人達が気になるようになってきました。

    はじめに
    第Ⅰ部「予言者」であることは難しい
    エマニュエル・トッド
    第Ⅱ部 それでも欧州に期待する
    ジャック・アタリ
    ブレンダン・シムズ
    リチャード・バーク
    スラヴォイ・ジジェク
    マルクス・ガブリエル
    第Ⅲ部「アラブの冬」と「帝国」の再興
    ジャンピエール・フィリユ

    タハール・ベンジェルーン
    チュニジアのイスラム原理主義の狂信者は今回の実行犯だけではない。その背後に数千人が控えている。事件は偶然起きたのではなく、起こるべくして起きた。テロはこれで終わらない。

    アミン・マアルーフ
    第Ⅳ部 世界の軸はアジアに
    マハティール・モハマド
    主に日本に学ぶ、「ルック・イースト」構想をまとめた。日本は敗戦国だが、国民は懸命に働き、規律を守り、生産する商品の品質に責任を持った。我々は日本人の職業倫理を真似ようと努めた。
    社会格差への配慮だ。貧富の差が非常に大きくなると、紛争につながるのは必至だ。
    今、世界で欧米が退潮し、中国が台頭している。
    欧米は製造業で競争力を失い、現実の経済とは言えない金融市場に依存し、巨万の富を稼ぐことへ転じて災いを招いた。欧米が復活するのは難しい。労働者の賃金は高く、就労時間は短く、社会保障が手厚いことが国際競争力を失った理由と言えるが、そうした水準を落とすことは困難だ。加えて、製造業で重要な技術を労働者は失っている。
    マレーシア近代化を実現できた。成功の要因は三つ。国民を公平に扱う、良い統治。国家の安定。そしてビジネス環境を整えたことだ。
    中国の台頭を拒むことはできない。日本はその現実を受け入れ、中国の発展から利益を引き出すことを考えるべきだ。
    フランシス・フクヤマ氏は「歴史の終わり」を宣言したが、妥当ではない。歴史は終わらない。万物は流転する。世界人口が70億を超えただけでも、地球環境に限らず、様々な変化をもたらしている。二一世紀に入り、世界の軸はアジアに移りつつある。
    中国は世界各地で活動している。孤立させることはできない。
    日本はアジアの一部であり、アジアは世界の一部だ。日本はアジアに属することを自覚し、中国、韓国と競争しつつ、協調し、協力する手本を示してほしい。

    プラープダー・ユン
    トンチャイ・ウィニッチャクン
    張倫
    パラグ・カンナ
    岩井克人
    第Ⅴ部コロナ以後
    ジャレド・ダイヤモンド
    しかし、地球の最大の脅威は人類です。他の脅威は全て人間の作為です。人類が本気になれば、解決できるはずです。

    ニーアル・ファーガソン
    ネットワークには同類を集め、異類を隔て、分裂を際立たせ、増幅させる働きがあります。
    全てがつながっている世界は理想郷に近い―確かに便利です。この主張は心地よく響きます。
    果たしてそうでしょうか。
    私見では、「理想郷」どころか、民主主義をむしろ損ねています。

    ジョセフ・スティグリッツ
    ティモシー・スナイダー
    パオロ・ジョルダーノ
    ユヴァル・ノア・ハラリ
    真の敵はウイルスではなく、人間の心に宿る悪、つまり憎しみ・無知・強欲だと私は考えます。
    私たちは心に宿る善、つまり共感・英知・利他で対処すべきです。弱者をいたわり、科学を信じ、情報を共有し、世界で協力する。
    新しい職は創出されるでしょう。ただその職を得るには新技術の習得が必須で、大量の労働者の再訓練が必要になる。経済活動に無用とされる階層が出現しかねないのです。
    人類が地球を支配できたのは、唯一ヒトが多数でも協力できる動物だからです。一対一ではチンパンジーにも負ける。千対千なら楽勝です。ピラミッド建造から月面着陸に到るまで人類の偉業は無数の人間の協力のたまものです。
    人類は物事を決定する力を手放してはならない。歴史の流れを定めるのは私たち人間です。

    あとがきのようなもの
    第二次大戦時に零戦操縦士だった原田要さんのお話

  • 表題と内容が一致していない印象。
    インタビュイーの中には好きな著名人が複数名入っていたので読んでみたのだけど、『有名人にインタビューしてみたよ』感が強く、著作としての一貫性ようなものは感じられず。

  • 1冊に世界情勢のエッセンスが詰まった本。

    ヨーロッパ政治、トランプ政権の罪、中東の紛争事情、東南アジア政治の背景と考察が勉強になる。

    21人の専門家が色んな観点で問題をどう解決したらいいかヒントを示している。

  • 世界の知性21人分の主張を掲載すると、一人一人の内容が浅く、主論を抜粋はできても論拠まで深掘りしていけないから、読み応えがない。残念な本だなと思っていたら、他の方の書評にザッピングという表現。言い得て妙。昔、音楽冒頭1分程度を寄せ集めたサンプルCDを頂いた事があるが、それにも近い。

    自由の限界。禅の公案のようだが、自由を守るために自由を抑える必要がある、と著者。自身の自由は他人の自由に侵害されるから、相互にルールが必要であり、これは当然の原則。極論すれはま殺人の自由が無いという事で分かるが、そうした事例は世に溢れる。

    そこにきて民主主義。意見の多様性を許容しながら、それは常に癌細胞のように分断が生まれる原理を内包している。分断が片方を取り込むために、数や金や権威などの力を背景に現状変化へ。二国間以上なら戦争、国内ならデモ、対国家ならテロなど。反論を否定と捉えず、他方が損をせずに対立軸を形成しない事。外科手術も抗がん剤も要らず、生存権を認め合う事が重要なのだろう。

  • インタビュー記事の寄せ集めなので、新聞への掲載向きであっても書籍向けではないかもしれないが、決して読むに値しないものではないので冷静に判断しよう。 取材者の選り好みのためか、似た意見を持つ人が集まった印象はある。 まず日本の少子高齢化に警鐘を鳴らす声が多く、中国についても一人っ子政策や男児偏重の歪みが今後大きくのしかかってくる人口構造を指摘されることが多い。 また、フクヤマ=歴史の終わりとハッチントン=文明の衝突がやたら引き合いに出される。
    それぞれの国が思ってることや近代史や歴史の解釈についてザッピングするには悪くない内容。 

  • いわゆる世界の知性と言われる方々が、現代社会、国際情勢、各国のリーダー、国民などをどうみているのかをまとめたもの。新聞記者による取材がベースになっているが、一人称で語っているように編集してあり、読みやすい。アメリカや中国の姿勢、中東情勢など、日本の新聞、日本の記者が書いたような切り口や評価とは異なり、さまざまな視点が得られる。興味深いのは、彼らの日本人に対する印象で、「勤勉・規律・利他」という点が共通している。これは強みなんだろうと思うが、一方で「同質・保守」といった弱点の指摘されている。「世界の姿」というものをいろいろな角度で見せてくれる一冊。

  • 民主主義への限界が自由の限界と書かれている。
    21人のホットな人々が欧米、中国、他のアジアの国を語っている。日本はアメリカなのかアジアなのか今一度考えさせるときになった。

  • 世界情勢を思想家、歴史家へのインタビューから述べたもの。
    グローバル経済の後のポピュリズムの台頭、中国など非民主国家の台頭など、民主主義の行く末を語る。
    多くの知識人が共通して、日本の少子化に警鐘を鳴らしていたのが印象的。
    大変面白い内容だった。

  • 各国が内向き志向のポピュリズムになりつつあった時に、コロナ禍によってその傾向が加速された印象。ただアメリカではバイデンが勝ち、イギリスではボリスジョンソンが「社会はあった」と言ったように、2010年代まで続いたネオリベと訣別できる転換点になるのではないかと期待している。

  • 世界の知性へのインタビューから現代社会の課題を多面的に学ぶことができた。

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