「スパコン富岳」後の日本-科学技術立国は復活できるか (中公新書ラクレ, 723)
- 中央公論新社 (2021年3月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121507235
作品紹介・あらすじ
国産スーパーコンピュータ「京」が「2位じゃダメなんでしょうか」と槍玉に挙げられてから十数年、世界一に輝いた国産スーパーコンピューター「富岳」。新型コロナ対応で注目の的だが、真の実力は如何に? 「電子立国・日本」は復活するのか? 新技術はどんな未来社会をもたらすのか? 莫大な国費投入に見合う成果を出せるのか? 開発責任者や、最前線の研究者(創薬、がんゲノム医療、宇宙など)、注目AI企業などに取材を重ね、米中ハイテク覇権競争下における日本の戦略や、スパコンをしのぐ量子コンピュータ開発のゆくえを展望する。
感想・レビュー・書評
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日本の衰退が叫ばれて久しいが、スパコン分野では世界と戦える位置にいるらしいことがわかって、なんだか嬉しい。
汎用性や消費電力など使いやすさを意識した開発が進められているようなので、AIやゲノム解析など日本の科学技術を支えるものになってほしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
●日本の理化学研究所と富士通が共同開発した「富岳」は2020年、世界ランキングで行連続の王座に就いた。
●重要なのは1時の順位ではなくて日本が今でもスパコンに代表される世界的なハイテク開発競争の最前線にあると実証された点にある。
●製薬外車では、病気の原因となる異常タンパク質に結合して、その働きを抑える化学物質の振る舞いを知るためにシミュレーションを用いる。自動車メーカーでは衝突実験の代わりにシミュレーション対応する。
●理研と富士通が共同開発した超高速プロセッサ(A64FX)を搭載している。ARMアーキテクチャに従う汎用CPUであると同時に、かつてのベクトル演算もできるカスタムプロセッサでもある。そこには約87億個のトランジスタが集積されている。国際的な評価は極めて高い。
●量子コンピュータはその特性上、いろいろな限界があります。原理的に1番の限界は、結果が1個しか出さないこと。途中で多数の並列計算をしているはずですが、最終結果を読み出した瞬間に一個の答えに収束してしまうのです。「量子コンピューターが得意な問題を探し当て、それをやらせよ」と言う方向にもっていく。
●アマゾンはクラウドサーバーのチップを、インテルからクラビットなど独自開発したものへ切り替えていく方針。
● ARMを買収したエヌビディア。2010年以降のAIや仮想通貨のブームから。この10年間で約60倍に高騰した。時価総額はインテルを上回った。 -
富岳のようなスパコンの中核をなす「半導体」、そしてその活用対象として今、最も期待されている「AI」という2つの分野に焦点を当て、日本が再び科学技術立国として歩み出すための道を探る本になっています。
多くの第一線の研究者への取材や豊富な文献に裏付けられた確かな情報から、世界の覇権争いの狭間における日本の立ち位置が浮かび上がらせてる点に好感が持てました。 -
スパコン世界一・富岳の真の実力とは? AI、量子など米中ハイテク覇権競争下で日本の次の一手は? 開発者・研究者に訊く。
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モバイル機器を中心に広く使用されているARMベースで汎用性、使いやすさ、省電力を担保した上で、ベクトル演算を復活させた構造に特色がある。これはかつての日本製スパコンのレガシーを活かす形になって興味深い。また、次世代エクサスケールのスパコンの開発が、米中対立の余波を受け遅れを生じているものと見られ、しばらく富岳がトップの座を維持しそうな見込みであるとし、凋落気味だった日本の技術力の復活に希望を持てた。
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東2法経図・6F開架:B1/5A/723/K