1983年(底本1963年)刊。著者は立命館大学名誉教授。
過日、性風俗という観点での「中国の宦官」の書を読破したことから、中国の政治史との関係では宦官はどのような光が当てられるか。
かかる視点が気になって、積読していた本書を紐解く。
時代や政治体制も広範な領域をコンパクトに纏めあげている本書が最近復刻されたのも頷ける。
当然であるが、宦官自身では権力の源泉たり得ず、①皇帝・皇后、②女官、③宰相や軍閥との共闘を要する。そして、彼ら彼女らとの関係・対抗・合従連衡の如何と展開を軸に解説していく。
そもそも宦官と同種の官人はトルコにもあって、中国特有ではない。
著者の分析では
① 祭政一致体制を前提。
その上で
② 被征服民族の出現を画期とするよう。宮刑によるある種の奴隷を創出した結果と見る。
もっとも、中国の特異さは、後代、貧困層の、苛烈過ぎる科挙回避の便法として「自営」が利用された点にあるかもしれない。
本書についてみれば、漢・唐・明・清と各王朝間の差異に関し、具体的事件に即しつつ叙述されるのも買いたい点。