- Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122012561
感想・レビュー・書評
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自殺が社会的環境によって促されるものであるとし、その社会的要因を分析した1冊。サブタイトルに「社会学研究」とある通り、社会学的分析を徹底的に追及した古典でした。
宗教、家族、政治などの社会的統合の強さに反比例して自殺は増減する、社会が無統制になった「アノミー」の状態が自殺の一因となる、など現代の日本においても十分に通用しうる結論が導き出されています。
日本に目を向ければ、他国より高い自殺率や、若年層の死因1位が自殺であるという事実、それにあまりにも高い中高年男性の自殺など、社会が抱える問題はたくさんあります。
社会的統合を強める、すなわち昔のような強い地縁によって結びついたムラ社会の復活ということもあるのでしょうか。功罪ありそうです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なかなかこういうのを読み通すのが難しくなってきた。
40年近く前の本なので現在ではアウトに近い表現もあるがその分直球で面白い。自殺抑止に働くのは社会であり、しかしもともとその社会が不在な子供と老人と未開人と老嬢は自殺しない。
少々の信仰的ルーティンと数匹の愛玩動物で難なく満たされている老嬢にギクッとした笑
P17 自殺という言葉は始終会話の中に登場するので、その意味は誰にとっても自明のもので、ことさら定義を下すには及ばないと思われるかもしれない。しかし、実は【中略】とても曖昧なものなのだ。
P19 普通自殺というと、多少とも筋力を振るう積極的な荒々しい行為と考えられがちであるが、実は徹頭徹尾消極的な態度や単なる行動回避も、同じ結果をもたらすことがある。【中略】そこで次のような最初の定式に達する。
当の受難者自身によってなされた積極的・消極的行為から直接、間接に生じる一切の死を、自殺と名付ける。
P30 自殺率は、死亡率よりもはるかに各社会集団に固有なものであり、社会集団を特徴づける一つの指標と考えることができる。
P190 社会の上層階級に自殺が法外に多いことは、もう疑いもない事実である。
P196 (なぜ一般に宗教が自殺に対して抑止作用をおよぼすのか)宗教思想の独特の性質に由来するのではない。宗教が人々を自己破壊への欲求から守ってくれるのは、宗教が一種独特の論理で人格尊重を説くからではなく、宗教が一つの社会だからなのである。
P257 自殺は子供には例外的であること、最高齢の老人の自殺が減少することは既に明らかにされているが【中略】子供はまだ社会によって型通りに形成されていないため、その中には社会が未だ不在である。また老人においては社会が後退し始める。あるいは同じことだが老人が社会から後退して行くともいえる。その結果、子供や老人は一層自己充足的存在となっている。彼らは、自分以外の何か別の存在によって満たされたいという欲求を持たないからそれだけ生きるために必要なものを欠く恐れもないわけである。【中略】未開人は自分のの結びつきうる対象をたやすく外部にみいだす。どこにいくにせよ、自分の神と家族をともなうことができれば、未開人は彼の社会的本性が要求するものを全て保持している。
最後に、女子が男子よりも容易に孤独に耐えて生きることのできる理由もこの点に求められる。【中略】女子は男子よりも共同生活の圏外にいることが多いので、彼女たちの中には共同生活がそれほど深く浸透していないわけで、この社会性の浸透度の低さゆえに、女子にとっては社会の必要性も少ないということである。社会の必要性という点については、女子はほとんど欲求を持たず、仮に欲求を持ったとしても難なくその欲求を満たしてしまう。老嬢の生活は、少々の信仰上の務めを果たし、数匹の動物を愛玩するだけで満ち足りるのだ。
P311 無規制(デレーグルマン)あるいはアノミーの状態は、情念(パッション)に対してより強い規律が必要であるにもかかわらず、それが弱まっていることによって、ますます度を強める。だが、その時には、情念の要求するものそれ自体が、初めから充足を不可能にしている。
P367 人を自殺へ追いやる原因と、当人にかくかくしかじかの自殺の方式を取らせる原因とは同じものではない。 -
社会学や公衆衛生を学ぶ人間にとってのバイブル。知識ではなく、その精神を学ぶためにこの本はある。自殺を個人やメンタルの問題で片付けず社会的な側面を検証することで対策に役立てようとするその精神こそが重要
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武器としての哲学の推薦本である。副題に社会学研究としているが、何が社会学なのかは書かれていなかったような気がする。多くは、国籍、宗教、結婚の有無で自殺の割合を計算している。日本の例では腹切りがあるなど古い。日本の沖縄出会ったような、強制的自殺や他者を巻き込んでの自殺、自殺する予定での殺人についてはあまり詳細な分析がない。
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社会学はやっぱり怪しいけど,面白い
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名前だけ知っていたので読んでみた。
文庫本なので注釈の活字が小さいのと、個々の論点について本文中で数字を列挙して例証または反証しているのと、何よりも文章が回りくどく読みづらかった...が、内容は社会学の祖にふさわしく、面白かった。
用語の定義、データの取捨選択、仮説と検証...一方で「温度が高いと自殺が増える」といった単純な説に対しては、「もし、そのとおりであればこれこれのケースについても同じ傾向が見いだせるはずであるが、そうなっていない」という反証をあげて打ち消し、他方で「社会は個人の総和にすぎない」という主張に対しては、「交通路」のような理解しやすい例をあげて、個人とは別に「社会」というものが実在であることを説明していくスタイルが心地よい。
結婚と自殺の関連について述べているくだりでは、離婚の効果(?)について、「離婚を容易にすると男性にデメリットが増え、離婚を困難にすると女性にデメリットが増える」という傾向を発見し、その原因が女性の社会参画が少ないことだと論じているが、その後の「女性が男性と同じようになればよいというものではない」「女性には女性に向いた役割があり、男性が(余計に)負担している役割を分担するのがよい(具体的には育児や家事ではなく『芸術面での活動』とあった)」という提言には19世紀の本とは思えないほど共感した。
「男性と女性は違う」という当たり前の事実を元にそれぞれが活躍できる社会を目指す、前々世紀の主張に比較して、現代のサヨク・フェミの喚き声がなんと幼稚なことか。
デュルケームは自殺を社会的な病理ととらえ、自殺の原因(のひとつ)を「社会と個人の分断」と分析し、解決策として、人間が活動時間の大半を割くことになる「労働」環境における組織化を提言している。
本書で提言されている労働組織は「投票のときだけ顔を合わせる」ような労働組合ではなく、中世的なギルドでもなく、ましてや赤化したテロの温床でもないが、宗教や国家では無理な役割を担う「社会」として納得性があった。
デュルケームの提言とは、構成員の範囲と個人に対する尊重の度合いが比較にならないことを承知で言えば、終身雇用が存在していた頃の日本企業にその片鱗があったのかもしれない。
もし学生をやり直すとしたら、本書のテーマを現代のデータで再検証して、数表をビジュアルなグラフにしてみたい。 -
自殺をはじめて学問的に扱った人。
字が小さくてびっしり、読みづらい。英訳本を見つけたから、そっちを読もう。 -
とても難しかったのでもう一度読み直します
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今月の1冊目。今年の8冊目。
大分前に買った本をやっとこのGWで読み終わった。自殺のカテゴライズを統計資料を用いて力強く論証したもの。しかし、長い。そしてところどころ分からない箇所もありました。正直もう1度読む気力はないですね。まあ、大体の内容が分かっただけでもいいと思いました。社会学の古典。