- Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122030282
感想・レビュー・書評
-
なるほどボヴァリー夫人というタイトルは彼女にとっては桎梏でもあったわけだ。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いがらしゆみこの描くボヴァリー夫人。
里中満智子の『花影』といい、少女マンガ界の重鎮の絵を続けて読んでいます。
原作は知っていますが、コミック版を読むのは初めて。
ヒロインのエマは、本を読んで空想を膨らまして少女時代を送った世間知らずの夢想的な性格で、読書好きの陥る罠が書かれているため、読むたびに我が身に置き換えて、心が痛くなります。
現実との折り合いができない、かわいそうな夢見るヒロイン。
尊敬できない夫を持った不幸が、じわじわと彼女に襲い掛かります。
エマは、好き嫌いがはっきりしていますが、当時の女性の運命は夫次第。
エマも夢見るだけで、全く自立ができていません。
うまく現実との折り合いをつけていければ幸せな一生を送れたはずなのに、現実に歩み寄って満足することを拒み、夢想世界にこだわり続けます。
レオンへの失恋が浪費のきっかけ。
つまりは憂さ晴らしから始まった凋落の兆し。
それでも、いつだって一人の男性しか愛せない純粋さを持ち続けている彼女。
それから、遊び人ロベルトと出会い、不倫に溺れていきます。
ロベルトの方が飽きて、アデューと手紙をしたため、彼女の元を去っていきました。
永遠の愛は、彼女の手に入りません。
レオンとの再会で、愛が燃え上がりますが、もはや贅沢と愛を切り離せなくなっているエマ。
夢のような幸せを夢見ながら、結局俗世の幸せを求め、金を湯水のように使って破滅していきます。
盲目的で短絡的なヒロイン像は、読んでいて痛々しいものがあります。
作者フローベールが「ボヴァリー夫人とは私だ」と発言したり、ボヴァリズムという言葉もあるくらいですから、私だけでなく、だれもがはっと自問しなくてはならない話。
お金が好きだったわけでも特別に贅沢がしたかったわけでもなく、ただ無心に愛に生きたかったはずなのに、悲劇の道を進んでいってしまったとは。
原作だと、彼女の愚かさばかりが見えてしまって、かなり読んだ後味が悪いのですが、コミック版だと、醜悪シーンが抑えられ、美しく描かれているため、ヒロインの哀れが浮き立ち、いとおしさも感じられました。
原作に忠実に描かれた作品です。 -
ポルトガル、ポルトなどを舞台とした作品です。